●IVRとAIコールの違い
AIコールを説明する前に、まずは既存の電話システムである「IVR(Interactive Voice Response)」を理解してもらう必要がある。IVRとは入電に対し、あらかじめ用意された音声による案内と、番号入力による選択で分岐をして振り分けを行うシステムだ。電話をかけた際に、「●●の方は1番、〇〇の方は2番を押してください。」と自動音声で案内されるもので、メーカーやクレジットカードなどの問い合わせ窓口ではよく使われている。問い合わせ内容に応じて接続先を変えることができ、目的をあらかじめ把握することで、対応をスムーズにすることが可能となる。
コールセンター業界では1990年代以降、電話内線をデジタル制御する「CTI(Computer Telephony Integration)」が導入されはじめ、同時にIVRも活用されるようになっていき、今では当たり前のように使われている機能となる。
一方、AIコールとは人間のオペレーターの代わりに人工知能(AI)が電話応対を行うシステムとなる。音声認識や自然言語処理、音声合成などの技術を組み合わせることで、顧客からの問い合わせや予約などを全てAIが処理し、適切な応答を実現するものとなる。以前は名前が間違って登録される等、音声認識の精度に課題があったのだが、近年はその課題もクリアされており実用に耐えられるものとなっている。そして近年、外食業界では深刻な人手不足によってDX化が推し進められているが、AIコールはその代表機能の一つとなる。
●外食業界における電話のDX化に求められること
飲食店には、さまざまな電話がかかってくる。
また既存予約の修正においては、どの予約を変更すればいいのか、本当に本人なのかを特定するための情報も必要となってくる。つまり電話をシステムで対応する場合はAIコールとIVR、どちらの場合でも在庫データと連携がされていないと、単に電話を受話するだけで予約に関する業務が確定されず、スタッフの方が確認して折り返し連絡をするという後続タスクが発生してしまうため、根本的な解決には至らないのである。
AIコールでは、コース予約に非対応となっていることが多い。コース名を間違えると致命的なクレームにつながりやすいし、店舗で使用されているコース名が似ているものが多く、オプションも含めて正しく認識するには、まだまだ精度に課題があり、リスクも残るのが実情である。そのため、コース予約の場合は人(店舗のスタッフやコールセンター)が対応するように分岐させたり、お客様にコースを登録できるフォームのURLを送付して自身の手で設定してもらったりする形が、今なお主流となっている。
AIコールやIVRの導入にあたってはシナリオが非常に重要だ。これらのサービスでは分岐やアクションを柔軟に設定できるようになっており、即時性が求められる当日予約は店舗に転送してスタッフが対応し、翌日以降の予約や既存予約の修正はシステムで受ける、というように店舗の方針に応じた設計が実現できる。
業務負荷軽減のためにAIコールを導入するのであれば、どの業務をAIが対応し、人が対応するものは何になるのか、それによってどれだけの業務を削減できるのかをきちんと見極めなくてはならない。さらに、スタッフの負荷は軽減できたものの予約の成約率が一気に落ち込み、売り上げが下がってしまうというケースも意外に多いので注意が必要だ。
●外食業界で迫られる選択
AIコールについてはかかってきた電話を受けるだけでなく、AIが店舗に電話をかけて自動的に予約を取るというサービスも出てきている。ユーザーは電話をかけなくてもAIが勝手に予約を取ってくれるという利便性があるものの、飲食店側からは忙しく業務をしている中でAIと電話をしなくてはいけないという不満もよく挙がってくる。そして、電話をかけるのも電話を取るのもAIとなり、AI同士の会話が増えてくるのも時間の問題である。
そうなってくると、「直接AIで処理すれば、一瞬でやりとりが終わるのでは?」と思うのだが、公式に連携するのはビジネス上、実現するのがしばらくは難しいかもしれない。(イデア・レコード・左川裕規)
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