【家電コンサルのお得な話・261】今夏、東京都や山梨県富士吉田市をはじめ、全国の自治体で水道料金の基本料金を期間を定めて無償化する動きが広がっている。背景には、猛暑と物価高という二重の生活不安がある。
無償化することで光熱水費の負担を減らすとともに適度な水分補給とエアコンの使用を促し、熱中症などを防止することなどが狙いとなっている。

●「民営化」すると難しくなる公的支援
 たとえば東京都では、口径13~25ミリの家庭向け水道契約者を対象に、4カ月間にわたって水道基本料金を無償化する。世帯によっては最大6000円を超える支援だ。一方、富士吉田市では上下水道の基本料金を8カ月間無償化し、合計1万3500円の負担軽減効果が見込まれている。これらの措置はいずれも申請不要で、自治体の一般会計から補填される仕組みとなっている。
 このような柔軟で即効性のある支援策が実現できるのは、水道事業が公営であるからにほかならない。水道局や上下水道部門が自治体の直轄で運営されているからこそ、首長の判断で一時的な無償化が実行できる。もし、これが民間企業に運営を委ねる民営水道だったらどうだろうか。契約主体が異なり、料金決定権も民間側にある中で、行政判断による迅速な料金免除はおそらく極めて困難であろう。
 そもそも水道というのは、水そのものだけでなく、生活・健康・災害対応を支える社会インフラである。水、電気、ガス、通信、農業などは、平時のみならず有事にも機能しなければならない。いずれも国家の安全保障に直結する領域であり、コスト削減や効率化を理由に安易に民営化しようとする動きには、厳しくノーを突きつけねばならない。

 もし、水道が完全民営化された場合、短期的な利益を優先する経営判断が優先されかねない。実際、海外では水道民営化により料金の高騰や災害対応の遅れが社会問題化した事例もある。公営であるからこそ、市民に直接目を向けた柔軟な政策判断が可能となり、今回のような水道料金無償化という措置が迅速に実現されたのである。
 公共インフラは単なる経済活動の手段ではなく、暮らしを守る「土台」である。今回の水道無償化をきっかけに、水から農業(お米)まで、公共とは何か、そして誰がそれを守るべきなのかを、私たち一人ひとりが改めて考えるべきときが来ている。(堀田経営コンサルタント事務所・堀田泰希)
■Profile
堀田泰希
1962年生まれ。大手家電量販企業に幹部職として勤務。2007年11月、堀田経営コンサルティング事務所 堀田泰希を個人創業。大手家電メーカー、専門メーカー、家電量販企業で実施している社内研修はその実践的内容から評価が高い。
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