【外食業界のリアル・23】外食業界では、Webサイトの位置づけが変わってきている。GBP(Googleビジネスプロフィール)の普及により地図から予約するケースが増え、SNSでの情報発信が当たり前のような施策となり、AIエージェントによる直接は検索をしない情報収集など、変化が続いている。
今回は、外食業におけるWebサイトの今とこれからについて語りたい。

●大きく変わった外食業界における集客
 以前、外食業界ではグルメ媒体が圧倒的に強く、”飲食店を探す≒グルメ媒体で探す”となっており、媒体での集客に成功が店の繁盛と直結していた。その後、店の探し方はGoogleで食べたいものや目的を検索する、スマホで位置情報を元に探すなど、多様化が進んでいった。同時に飲食店は何でも食べられる「総合居酒屋」から特定のジャンルをおいしく食べられる「専門業態」へとシフトしていく。
 また、飲食店側は検索をしている人へアプローチするためにWebサイトを用意し、狙ったキーワードで集客できるようにSEOにも力を入れるようになった。とはいえ、SEOを上げていくためには時間と労力がかかることもあり、有料広告を併用していくことが集客として確立していったのである。スマホで地図から店を探すのは一般化しているが、大量に登録された店舗から自分の店を上位に表示させることも重要となり、MEO(Map Engine Optimization)も重要な施策の一つとなっている。
 そして近年、SNSやインフルエンサー、インバウンド対策も重要な集客となっている。InstagramやX、TikTokでいかに多くのユーザーに情報発信をしていくのか、エンゲージメントを高めていくのかは集客の費用対効果が高く、この人材採用難の中で採用にも一定の成果を上げることもあり、力を入れる飲食店は多い。
 フォロワーが100万以上いるようなメガインフルエンサーの影響力は多大であるが、外食業界では店のエリアや立地などによってはフォロワーが1万人未満のナノインフルエンサーを駆使することも必要だ。
 また、高級店を中心にインバウンドは欠かせない顧客となっているケースも少なくなく、海外メディア/SNSでの集客や多言語対応など、施策の対応範囲は拡大をし続けている。とはいえ、グルメ媒体での予約がなくなったわけでもなく、依然として集客力の高い存在ではあり続けている。
技術の進化とユーザーの行動が多様化していくことに伴って、飲食店へ来店するまでの経路が高度化していったわけである。
●Webサイトの位置づけも多様化
 Webサイトの位置づけも以前とは変わってきている。従来はネット予約や電話をいかに増やすのかに注力するケースが多かったが、店の公式情報を幅広く掲載をしたり、主要な駅からの店へのアクセス方法を記載したり、地域の観光情報、食材や安心安全に関する情報、忘年会などの宴会告知、インバウンドのコーディネーター向けに特化した情報(ベジタリアンとハラル向けの情報など)と、さまざまなターゲットに対して多岐に渡る情報を掲載するようになっており、必ずしも直接的な予約に必要な情報だけではなくなっている。
 Googleアナリティクスの数値も変化をしている。経路としては「Organic Search」(自然検索)、「Direct」(直接流入、今はブラウザでサジェストが出るのでそのパターンが多い)、「Referral」(他サイト)、「Social」(SNS関連)、「Paid Search」(有料広告)が主となる。ある客単価2500円ほどの焼鳥業態のサイトでは5年ほど前、1位「自然検索」、2位「有料広告」、3位「リファラル」、4位「直接流入」、そこから数字が一気に開いて5位「SNS関連」となっていた。
 今では1位「自然検索」で5年前より流入数が5倍強となり、2位「直接流入」、3位「SNS関連」、4位「他サイト」となっている。時流にのってSEO/MEO対策をしっかりとやり、SNSも対応している結果としてみると妥当な数字ではある。
 外食業界における「良いサイト」の定義は奥が深い。まず、ネット予約がきちんと取れていることが挙げられる。ただ業態によっては席のみで少人数だけの予約ばかりとなってしまっている場合は、ターゲットと訴求方法などの見直しも必要だ。電話は予約以外の問い合わせが多いので、電話件数だけで評価をするとミスリードとなる。

 あとは自然検索からの流入が強く、有料広告に頼らなくて成果を上げられるのが理想的である。特に「居酒屋」「宴会」「個室」などの居酒屋ビッグワードで集客できているほか、「和食」「焼肉」「接待」「食べ放題」など、店の特徴にあったキーワードが強いと「良いサイト」といえるであろう。
●今後は「AI」とどのように生かしていくのかが重要
 大前提、Googleのポリシーに反するような不正をしてはならない。違反をみやぶる技術はどんどん高まっているし、違反によってWebサイトやGBPにペナルティが課せられてしまうとその影響は甚大なものとなる。構造化データなどGoogleが推奨するものを対応することや質の良いコンテンツをコツコツと積み上げていくことが結果として近道になるであろう。
 そこにどのようにAIを活用していくのかは、まだ発展途上にあるといっていいだろう。コンテンツの原稿作成においてAIを活用することは一般的になっているが、生成までを自動化していく場合はcanonical設定などをきちんと対応するなど、コンテンツを不正生成しているような認識をされない工夫も重要だ。AIエージェントへの対策はまだ確立されているわけではないが、情報を正しく認識してもらうためにWebサイトへ網羅的に情報を掲載し、構造化データにするなども一定の成果を上げていくと思われる。
 また、広告においてP-MAXのようなGoogle AIによる自動化機能を取り入れた広告が目覚ましい成果を出すこともよく聞くようになった。AIなのか人なのか、という二者択一の話ではなく、いかにAIを活用できるのかを追求していくことができるのか、それによって命運が分かれるに違いない。(イデア・レコード・左川裕規)

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