●増加する小世帯はシンプルで上質な暮らしを志向
近年、少子高齢化によって日本の世帯数は大きく変化している。国立社会保障・人口問題研究所が5年ごとに公表している『日本の世帯数の将来推計(全国推計)-令和6年推計-』によると、2020年の全世帯数に占める単身世帯の割合は38.0%で最も多く、夫婦のみの世帯は夫婦と子からなる世帯に次いで20.1%だった。つまり、世帯構成人数が1~2人の小世帯は5年前の時点で全世帯の過半数を占めているのだ。
今後、世帯数は2030年にピークを迎えてその後は減少に転じるとみられ、単身世帯も世帯数は2036年にピークを迎えるが、全世帯に占める割合は上昇を続け、2050年には全世帯の44.3%が単身世帯になると予想されている。
世帯の変化とともに消費者のライフスタイルも変わり、自分の時間を大切にしたいという価値観からタイパに対するニーズが高まっている。また、単に時間だけでなく、住宅面積の縮小で省スペースにより空間を最適化したいというスペパのニーズも拡大している。
これらのニーズの変化は家電商品に求める価値にも反映されている。パナソニックが25年5月30日~6月6日に実施したインターネット調査によると、『家電を選ぶ際に最も重視するポイント』では「安心して長く使えるメーカー」が全体の64.8%を占め、「シンプルな必要最低限の機能」が57.9%、「デザインやサイズが自分に合っている」が43.0%と続いた。
さらに同社が1人もしくは2人暮らしの18歳以上の男女に対して25年6月25日~7月2日に実施したインターネット調査では、『小世帯の暮らしに合う家電で、シンプルで上質な小さい暮らしを送りたいと思いますか』との問いに、約85.3%が「興味がある」と回答した。
同調査で『日々の暮らしの中で大切にしている(気を配っている)こと』を聞くと、「食材を無駄なく使い切る」が77.7%で最も多く、「心・身体をリラックスさせる・休める・癒す』が71.0%。以下、「バランスのとれたおいしい食事」50.0%、「身の回りの整理・模様替え。断捨離」が40.8%となった。
これらの結果を踏まえてパナソニックでは、小世帯に対して同社の家電商品が提供できる暮らしの価値提案を「最後までおいしく食べきれる」「時間と空間にゆとりを作る」「自分のからだと向き合う」と決め、それぞれの価値に合った小世帯向け家電商品の提案に注力していく。
●フラッグシップの機能を小世帯向け商品にも搭載
単身世帯を含む小世帯向けの家電商品というと、コンパクトや小容量などのモデルが連想される。機能面では決して高機能ではなく、上位モデルより劣る機能が搭載されているというイメージだろう。
しかし、パナソニックが提案する小世帯向けの家電商品は、このイメージとは異なる。従来の小世帯向けモデルと最も違う点は、フラッグシップモデルに搭載されており、ユーザー調査でも評価の高い機能を小世帯向けモデルにも搭載したことである。
メーカーのフラッグシップモデルとは、最先端の機能や長年にわたってユーザーの評価が高い機能を搭載しているのが通例だ。もちろん小世帯でもフラッグシップモデルを購入して使うことに何ら問題はないが、サイズや容量などが使用人数に対してオーバースペックとなってしまうきらいがある。
パナソニックはあくまで小世帯の住環境やライフスタイル、使用人数などに合致したサイズや容量帯で、しかもフラッグシップと同じ機能を搭載した商品を7商品ピックアップして提案していく。
新しく提案していく商品はすでに販売されているものもあれば、これから発売になる新商品もある。また、新提案の7商品については特に新しく統一ブランド化やシリーズ化は行わず、家電量販店の売り場などでも統一POPのようなものは付けないという。以下でピックアップされた7商品を紹介しよう。●調理家電の価値提案は最後までおいしく食べきれる
前述のとおり、商品の価値提案では「最後までおいしく食べきれる」「時間と空間にゆとりを作る」「自分のからだと向き合う」のそれぞれに合致する商品がピックアップされている。
「最後までおいしく食べきれる」として提案されるのは冷蔵庫と単機能レンジ、ホームベーカリーの3商品である。食材を余すことなく使い切るとともに時短やおいしさの面からもちょうどよく保存や調理ができる調理系の商品が選定されている。
冷蔵庫のNR-C33JS2は25年10月中旬発売予定で、市場想定価格は17万円前後。3ドアで容量は330L、奥行きは301~400Lの容量帯で業界トップクラスの60cmという薄さだ。フラッグシップモデルにも搭載している約マイナス3度の微凍結で保存する「サクッと切れる微凍結」や野菜室が100%全開できる「奥まで見えるフルオーブン」を搭載している。
単機能レンジのNE-FB2Dは冷凍と冷蔵の2品同時あたためができる単機能レンジ。9月1日発売予定で市場想定価格は4万5000円前後だ。単機能レンジながらフラッグシップで採用している同社独自の高精細・64眼スピードセンサーを搭載しており、庫内の食品の温度や分量をセンサーが見分けて自動であたためや解凍を行う。
コンパクトベーカリーのSD-CB1は24年9月に発売された既発商品だ。設置スペースはA4用紙よりも小さいコンパクトサイズで、1回でつくれるパンは約0.6斤。市販の食パンで例えると5枚切りの食パン3枚分ほどになり、1回の朝食で食べきれる量のため、毎日の朝食で焼きたてのパンを楽しむことができる。
●時短で時間にゆとり、レイアウトフリーテレビで
「時間と空間にゆとりを作る」の提案でピックアップされたのは、ドラム式洗濯乾燥機と食器洗い乾燥機、そしてテレビだ。
ドラム式洗濯乾燥機と食器洗い乾燥機は、いずれも家事の手間や時間を短縮できる家電商品で、時短によってゆとりのある自分の時間をつくれる。テレビはちょっと異質に感じるかもしれないが、対象商品はレイアウトフリーテレビ。置き場所を自由に変えられるので、居住空間を有効活用できるのだ。
ドラム式洗濯乾燥機のNA-SD10UBLとSD10HBLは、いずれもななめドラムを採用した洗濯・脱水容量10kgのドラム式洗濯乾燥機。両商品とも25年1月に発売したコンパクトタイプのSDシリーズの追加モデルで、新たにダウンジャケットコースを搭載している。
SD10UBLはスマートフォンと連携して操作ができ、液体洗剤・柔軟剤の自動投入機能を搭載。一方のSD10HBLはスマートフォンとの連携は非対応で、自動投入機能は液体洗剤のみだが大容量タンクを採用し、さらに温水洗浄にも対応している。いずれも25年11月上旬の発売予定で、市場想定価格は20万円前後である。
NP-TSK2は奥行き約29cmのスリム設計ながら新設計の上かごを採用することで、2人分の食器とフライパンなどの調理器具が一緒に洗える卓上型食器洗い乾燥機。25年10月の発売予定で、市場想定価格は8万円前後である。
TH-43LF2と43LF2Lは25年5月に発売されたレイアウトフリーテレビ。チューナー部とモニターがセパレートになっており、映像はチューナー部からワイヤレス送信でモニターに送られ、4K映像やチューナー部のHDMIに接続した機器の映像もモニターで再生可能だ。
AIで画質を自動調整し、色域や色の処理、コントラストなど高画質技術も搭載。さらにゲームプレイ時は自動で低遅延モードに切り替えるALLM対応で、プレイ時にフレームレートなどの情報を表示する機能も搭載している。43LF2は2TBの内蔵HDDを搭載しているが、43LF2Lは非搭載。HDMIやUSBの端子数も43LF2は43LF2Lより多い
●スリムでソファのようなデザインのマッサージチェア
3つめの価値提案「自分のからだと向き合う」で選ばれたのは、マッサージチェアのリアルプロカーサライン EP-MA110。発売は25年12月初旬予定で、市場想定価格は50万円前後だ。
従来のマッサージチェアはサイズが大きく、小世帯で導入しようとしても搬入や設置スペースの問題があった。そこでMA110はひじ掛け幅を68cmに抑え、リクライニング時の奥行きも最大約180cmの省スペース設計。ソファライクなデザインとカラーで、インテリアとの親和性も高い。
機能面ではフラッグシップモデルにも搭載されている最小10mm幅のモミ玉によって、コリをピンポイントでとらえるヒューマンハンドモミメカや広範囲をカバーする独自フレームを採用している。
近年、生活家電に参入する外資系メーカーや新興メーカーが増えている。冷蔵庫にしろ、洗濯機にしろ、基本の技術は昔からあるが、従来はブランドを重視する消費者が多く、そこが一番の参入障壁といえるものだった。
だが、異業種による家電市場への参入やECに代表される販売チャネルの拡大、家電商品の値上がりや消費スタイルの変化、価値観の多様化などで消費者のブランドに対する意識は変わり、その意味で参入障壁は以前より低くなっている。
パナソニックは障壁を超えて参入するメーカーに対して同質競争で対応するのではなく、同社の商品で時間やスペースを有効活用し、くつろぎやリフレッシュも交えた暮らしの質で対応すると捉えることができる。現時点では未発売の商品が多いため、小世帯でそろそろ買い替えを検討しているのであれば、発売時期をチェックした後、家電量販店の店頭などで実機を確認してみよう。
【注目の記事】
パナソニック、高級炊飯器「おどり炊き」のごはんを試食できるイベント「食べ比べ亭」を開催
パナソニックのビストロは市販の「冷凍コロッケ」を外はサクサク、中はジューシーに調理!
首にかけるだけで「ながらコリ治療」 パナソニックの高周波治療器