スマートフォン(スマホ)やワイヤレスイヤホン、ノートPCなど、私たちの生活に欠かせないモバイルバッテリー。需要拡大とともに、発火や発煙などの事故が年々増加しています。
NITE(製品評価技術基盤機構)によると、リチウムイオン電池搭載製品の事故は2024年に入って増加傾向にあり、特に夏場の高温環境や、長期使用による劣化によって発生するトラブルが目立っています。

●もしものときは「安全確保が最優先」
 リチウムイオン電池が突然発熱・発煙・発火した場合、まずは自分と周囲の安全を確保し、バッテリー本体からすぐに離れましょう。可燃物から遠ざけて安全な場所に置いた後、すぐに119番通報してください。
 消火方法について、東京消防庁によると、(1)火花や煙が激しく噴出している場合は近寄らない、(2)火花や煙の勢いが収まったら大量の水や消火器で消火する、(3)消火後は安全に配慮し可能であれば水没させる――とのこと。落ち着いて対応し、身近なものを使って適切な消火活動を行いましょう。その際、常に自分の安全を最優先に考えてください。
●寿命は2~3年が目安 買い替えサインを見逃すな
 モバイルバッテリーの寿命は、使用状況によっても変わりますが、一般的なリチウムイオンバッテリーで約500回の充放電サイクルが目安です。通常の使い方なら2~3年程度となります。以下のような症状が現れたら、買い替えを検討しましょう。
・以前より充電の減りが早くなった
・満充電してもスマホを数回しか充電できない
・本体が異常に熱くなる、膨らんでいる
・外装が破損している、異臭がする
 これらは寿命を迎えたサインであり、使用を続けると事故リスクが高まります。安全のため、2~3年を目安とした定期的な買い替えがおすすめです。モバイルバッテリーを持ち歩く際は、万が一の被害に備えて不燃性のケースなどに収納するといいでしょう。

●廃棄は「専用回収」が鉄則
 使用済みのモバイルバッテリーは、通常の可燃ごみや不燃ごみで絶対に出してはいけません。端子部分をテープで絶縁処理し、自治体指定の回収日や家電量販店・リサイクル協力店の専用回収ボックスに持ち込むのがルールです。自己判断での廃棄は、ごみ収集車内での火災事故につながる危険があるため避けましょう。
●リチウムイオン電池は身近な製品に広く使用
 バッテリー事故はモバイルバッテリーだけの問題ではありません。スマホ、ワイヤレスイヤホン、ゲーム機、コードレス掃除機、電動自転車など、多くの身近な製品にリチウムイオン電池が搭載されています。異常発熱や膨張、異臭など「いつもと違う」と感じたら、直ちに使用を中止し、適切に廃棄・交換することが大切です。
●次世代電池技術で安全性が大幅向上
 エレコムが25年3月に発売した「DE-C55L-9000シリーズ」は、世界初のナトリウムイオン電池を採用したモバイルバッテリーとして注目を集めています。容量9000mAh、45W USB Power Delivery対応で、従来のリチウムイオン電池と比べて安全性と耐久性が大幅に向上しました。
 ナトリウムイオン電池の最大の特徴は、極寒や猛暑といった厳しい環境でも安定動作することです。リチウムイオン電池が苦手とする低温環境でも性能が落ちにくく、高温での熱暴走リスクも軽減されています。また、ナトリウムは海水から抽出できるため、希少金属に依存しない持続可能な技術として期待されています。
●準固体電池で長寿命と高安全性を実現
 HAMAKEN WORKS(ハマケンワークス)が展開する「SSPB(Solid State Power Bank)シリーズ」は、準固体電解質を採用した革新的なモバイルバッテリーです。
5000mAhと10000mAhの2モデルを展開し、通常のリチウムイオン電池に比べて約4倍の2000回の充放電サイクルを実現しています。
 準固体電池のメリットは、液体電解質を使用しないため、発火リスクが著しく低い点です。近年、公共交通機関などでバッテリーの発煙・発火事故が報告される中、安全性への関心が高まりつつあります。
 また、マグネット式ワイヤレス充電にも対応した商品も販売され、利便性と安全性の両立を目指しています。
●安全な製品選びのポイント
 新しいモバイルバッテリーを選ぶ際は、PSEマーク付きの正規品を選択し、安全機能(温度管理や過充電防止など)が充実した製品を選びましょう。さらに安全性を重視するなら、上記で紹介した準固体電池やナトリウムイオン電池を採用した次世代モデルも選択肢となります。
 ただし、どんなに安全性が向上した製品でも、使用環境や個体差によって寿命は前後するため、定期的な状態チェックが欠かせません。異常を感じたら迷わず使用を中止し、適切な方法で廃棄・交換することが、事故を未然に防ぐために最も重要なポイントです。(マイカ・秋葉けんた)
■Profile
秋葉けんた
編集プロダクションのマイカに所属するITライター。雑誌、書籍、新聞、Web記事など、多岐にわたるメディアで執筆活動を行っている。特に家電やガジェット、IT関連の記事に豊富な実績があり、生成AIに関する書籍も多数手がけている。
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