●コロナ禍明けで急成長する市場
「大きなプリンターを片付けたら写真が印刷できなくて困った」「こんな小さなプリンターがあるなんて知らなかった」――。こうした声がキヤノンマーケティングジャパンに数多く寄せられている。スマホとSNSの普及によって、写真が画面内だけで完結する時代になったが、「思い出を形に残したい」という需要はむしろ高まっている。実際、A4以下の小型プリンター市場はコロナ禍明けに急成長を遂げ、SELPHYブランドも今年1~8月で前年同期比120%以上を記録している。
この市場拡大を後押ししているのが、利用シーンの多様化だ。従来の記念写真に加えて、ライブやイベントの写真をプリントしてスマホケースに入れたり、手帳に貼ってデコレーションしたりと、「推し活」や「手帳デコ」に活用するユーザーが急増している。
SNSでもこうした投稿が数多く見られ、需要の変化は用紙サイズの売れ行きにも如実に反映されている。L判だけでなく、カードサイズやシール用紙の販売が急増し、特にカードサイズシールの伸びが目立っている。
SELPHY CP1500を支持するのはカメラ愛好家だけではない。推し活を楽しむ若者から、大型プリンターを使っていたシニア層まで、幅広い世代に広がっている。「コンビニまで行かなくても気軽にプリントできるのが便利」という声が多いほか、ある大手家電量販店では購入者の半数以上が海外旅行者というケースもある。
●【実機レビュー】直感操作で高品質な仕上がり
幅広い世代から人気があるということで、実際にSELPHY CP1500を試してみた。まずは特徴。昇華型熱転写方式を採用し、インク漏れがなく、ヘッド破損もしにくいため、携帯時も安心だ。別売りのバッテリーを使用すれば、屋外での印刷も可能になっている。本体サイズは約133.0mm×182.2mm× 57.6mm、重量約850g(インクカセット・ペーパーカセット・用紙を除く)とコンパクトで、片手でも楽に持ち運べる。
編集部で実際に使用してみたところ、セットアップは数分で完了した。専用アプリ「SELPHY Photo Layout」をスマホにインストールしてWi-Fi接続するだけで、すぐに印刷を開始できる。3.5型液晶モニターは見やすく、直感的なタッチ操作も快適だ。
印刷速度はL判1枚約40秒。仕上がりは店舗で現像したようなクオリティを実現している。人物の肌色や風景のグラデーションも自然で、色再現性の高さが印象的だ。表面にオーバーコートが施されており、水濡れや色あせに強いのも大きな魅力になっている。
シール用紙では最大8枚を1枚にコラージュでき、プリクラのような仕上がりが楽しめる。切り分けて手帳や日記に貼れば、オリジナルのライフログ作りにも最適だ。
印刷コストは用紙とリボンが一体になったカートリッジ方式で、L判108枚セットが約4200~4600円。1枚当たり約39~43円とコンビニプリント並みの価格だ。また、手軽にカートリッジが交換できる安心感や、運用のしやすさも魅力だ。推し活・手帳デコや家族写真、旅行の思い出を祖父母に送るといった使い方にもおすすめできる。総合的に、操作性と画質を高いレベルで両立したバランスの良い製品といえる。
●ビジネスや開発現場での活用も拡大
SELPHY CP1500は個人利用にとどまらず、医療現場やエンターテインメント業界での導入も進んでいる。アイドル運営会社では、イベントでのアイドルフォト印刷やオリジナルグッズ制作に活用されている。さらに、Android対応の公式SDKが無料提供(提供には使用許諾契約が必要)されており、独自アプリの開発も可能だ。店舗やイベントでの新しいプロモーションや「ランダムグッズ販売」など、応用範囲が広がっている。
●スマホ時代の新しいアナログ体験
SELPHY CP1500は「写真はスマホで見るもの」という常識を、「手に取って楽しむもの」へと再び広げてくれるプリンターだ。