●10月1日から全国一斉で開始
救急搬送時、従来は本人や家族の聞き取りに頼ってきたが、「患者が意識を失っている」「家族が動揺して正確に答えられない」「服用している薬の名前を思い出せない」といった状況では確認自体が困難だった。
これがマイナ救急の導入によって、救急隊員は専用端末で本人確認を行い、暗証番号入力なしで必要な医療情報を閲覧できるようになる。救急隊員が正確な情報(受診歴や薬剤情報など)を把握することで搬送先の医療機関を円滑に決定でき、救急車内での処置も適切に行える。さらに搬送先に事前に情報を伝えることで、病院側が受け入れ態勢を整えられる。導入に先立ち、2022年度から実証事業が始まり、24年度には67消防本部で有用性が確認され、25年10月からは全国の全消防本部で一斉に運用が始まる予定。
一方で課題も存在する。すべての医療機関が対応しているわけではなく、システムや機器の不具合が発生すれば利用できない。また、マイナンバーカードの紛失や盗難による個人情報漏えいのリスクも懸念される。加えて、閲覧できる情報は限定されており、患者の同意が必要な場合もあるため、情報共有体制はまだ完全とは言えない。制度を実効性ある制度とするには、利用環境を広げ、セキュリティー対策を徹底することが不可欠である。
私は心臓の持病を抱えているが、多くの場合、循環器の病は癌などと異なり時間的猶予がない。発症すれば数分の遅れが命を奪うため、マイナ救急のように迅速に医療情報を把握できる仕組みには、個人的にも強い関心を持っている。
ただし現実には、機器が作動しない事態も想定しなければならない。そのため、自治体が配布している「ヘルプマーク(&カード)」に病歴や服薬内容を手書きで記入し、常に携帯することを考えている。救急のお世話になる可能性が高い当事者としては、デジタルの利便性とアナログの確実性を組み合わせて備えることが、いざというときに命を守る最も現実的な方法だと考えている。
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