今やポイント制度と無縁な人はごくごく少数だろう。GMOメディアが6月に実施した調査によると、「意識してポイントを貯めている」人は89.0%にも上る。
日本人の日常生活にポイント制度はすっかり定着した。MMD研究所が7月に実施した調査によると、最も活用されているポイントは「楽天ポイント」が32.7%と最も多かった。次いで「dポイント」が14.3%、「PayPayポイント」が13.7%、「Pontaポイント」8.5%、「Vポイント」6.0%の順だった。かつて隆盛を誇ったVポイント(旧Tポイント)はレンタルビデオ店の縮小とともに、かなりパワーダウンしているようだ。今、最も幅を利かせているのが楽天スーパーポイント。「楽天経済圏」という言葉を生むほど、日本で最もメジャーなポイント制度になった。

 ポイント制度の発祥は飛行機のマイレージサービス。アメリカン航空が販売促進のために1981年に始めた。その成功を受けて89年に始まったのが、ヨドバシカメラの「ヨドバシゴールドポイントサービス」。現在のポイント制度の元祖ともいえるものだ。コンピューターを活用し、POSシステムの応用でカードに印刷されたバーコードを読み取り、ポイントが自動的に貯まっていく仕組みは画期的だった。「ヨドバシゴールドポイントサービス」が始まった当初は、ヨドバシカメラの各店舗で、さかんに「ゴールドポイントカード」を配布していた。
私もサービス開始後、間もなくカードを手に入れてずいぶん利用した。しまいには、バーコードの印刷がかすれて読み取れなくなり、新カードに交換。現在ではスマートフォン・アプリのカードに変わった。ヨドバシカメラのポイントサービスが人気を呼び、次々にポイントサービスが誕生。ありとあらゆるものにポイント制度が導入されていった。
 なぜこうもポイント制度は人気を集めているのか。結果的に割引で購入できるのが一番。その上、ポイントが貯まっていくという面白さもある。ある種のゲーム感覚でポイントを集め、貯まったポイントを眺めては悦に入るわけだ。中には、貯めることがうれしくてポイントは一度も使ったことがない、という人もいるほど。ポイントサービスによっては、これまでに獲得した全ポイントを確認できるものもある。楽天スーパーポイントの「通算獲得ポイント」もその一つ。
全獲得ポイントが数字として具体的に確認できる。自分の分を確認すると58万ポイントもあった。だから何だ、という話ではあるが、ものすごく得をしたような気分になるから不思議だ。単なる割引販売ではこうした効果は得られない。
 販売店から見たポイント制度のメリットは枚挙に暇がない。しかし「お得感」の演出は、ポイントサービスの最も巧妙な点。消費者が「お得だ」と感じるタイミングが倍増するからだ。例えば、1万円の商品を10%のポイントバックで購入すると、購入時に1割引で買えたような「気分」になり「得をした」と感じる。さらに、そこで獲得した1000円分のポイントで、何か別の商品を購入すると「タダで買えた」気分になり、また「得をした」と感じる。つまり「2度得をした」ような気になるわけだ。商品が割引されたことには変わりはないが、落ち着いて考えてみれば、得をしたのは1回だけだ。
 最初の購入時には満額を支払っているので、別に得をしているわけではない。
後日ポイントで商品を購入する時に権利を行使して、初めて「お得」が現実のものになる。複数回の買い物で獲得したポイントを貯めて大きな買い物をするような場合は、「お得感」がさらに強まる。元の買い物で支払った金額などすっかり忘れてしまっている。大きな買い物が「タダでできた」ような錯覚に陥るわけだ。使用期限の問題もある。万一ポイントを失効させようものなら、得をしたと喜んだ買い物が、全くのぬか喜びに終わるという結果も招く。ポイントがらみで買い物をする際には、お得感に振り回されないよう気を付けておいたほうがいいだろう。(BCN・道越一郎)
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