●意外と知られていない!? マイナンバーカードの2025年問題
「マイナンバーカードの2025年問題」をご存知でしょうか。医療現場のデジタル化を推進するため、2024年12月2日で従来の健康保険証の新規発行が終了。今後は、原則、健康保険証としての利用を登録したマイナンバーカード(マイナ保険証)を利用する仕組みに移行しました。病院や薬局での受付では、健康保険証としての利用を登録したマイナンバーカードをかざすだけで資格確認ができる仕組みになっています。
ただし、最長2025年12月1日までは「経過措置」として、従来の保険証も使用可能。つまり現状は移行への途中段階なのです。
ニュースなどで大きく取り上げられる一方、実際の生活者の多くは「まだ普通に保険証が使えているから大丈夫」と受け止めている方が多いのではないでしょうか。私もそのひとりでした。けれど第一子を出産してから、想像以上にこの新しい制度に直面する機会が増え、意外とすぐに「自分ごと」になったのです。
●この春、娘が生まれました! 新生児のマイナンバーカード申請ってどうするの?
娘が生まれてはじめに向き合ったのが「マイナンバーカードの新規発行」です。
さらに2024年12月からは「特急発行・交付制度」が導入され、新生児などの対象者に限り、通常よりも早く、最短1週間でカードを受け取れるようになりました。
申請方法は2種類。住民票のある役所の窓口でも受け付けていますが、私のように里帰り出産をしていた場合はオンライン申請が便利。出生届を提出したあと、交付通知書が届いたらスマートフォン(スマホ)やPCから必要事項を入力するだけというのもうれしいポイントです。
実際にネットから申請したところ、思ったより手続きはシンプルで、赤ちゃんの情報を入力するだけ。1歳未満の子どもが申請する場合は顔写真も不要なので、スムーズに申請できました。
●役所での洗礼 窓口で言われた「受け取りは本人同伴です」に驚き
ところが安心したのも束の間、カードの受け取りで思わぬ壁にぶつかりました。マイナンバーカードは、原則として「本人が交付窓口に出向いて受け取る」仕組みです。大人の場合は本人確認のために当然ですが、これが新生児にも適用されているのです。
私は生後1カ月の赤ちゃんを連れていく必要はない、代理ではあるものの申請者である保護者が行けばいいと思い、カード発行の受け取りに一人で役所に向かいました。ですが、窓口では「ご本人を連れて役所に来てください」と案内が! 申請時に「顔写真は不要」となっていただけに、「受け取りに本人必要!?」と、かなり驚きました。
制度としては「本人確認が必要」という大原則があるため、職員の方も規定通りの対応をしているのですが、現実的には赤ちゃん連れで役所に行くのはかなり大変。窓口で泣いてしまう赤ちゃんを抱っこしながら手続きをする親御さんも多いのではないかと想像し、モヤッとしました。
別の日に改めて生後1カ月の娘を連れて役所に。受け取りは数秒。この数秒間のためにまだ首も座っていない娘を車に乗せて窓口まで来たのに、と、ますますモヤっと感が残り後味の悪い受け取りとなりました。
●保育園でも感じた、マイナンバーカードの“制度と現場”のズレ
娘を保育園に預ける際にも、制度の過渡期らしい混乱を経験しました。入園時に案内された書類には「マイナンバーカードのコピーを提出でOK」とありました。つまり「保険証は不要」ということ。私は「制度が変わったから、もう保険証はなしでOKなんだ!」と理解して提出しました。
ところが数カ月後、園から「やはり保険証も必要になりました」と追加提出を求められたのです。
実際、2024年12月2日で新規保険証の発行が終了しましたが、既存の保険証は最長1年間有効です。そのため現場では「カードだけでは不安」「従来の保険証も控えておきたい」といった判断が働いているのではないかと推察できました。
幸い我が家では出生時に保険証を作っていたためスムーズに対応できましたが、「マイナンバーカードがあるから保険証は作らなかった」という家庭だったら慌ててしまったかもしれません。制度上はカードで十分でも、現場ではまだ保険証も併用されている――まさに“制度と現場のズレ”を体感した瞬間でした。
●まだまだ続く“過渡期”の混乱。これからどうする2025年問題
今回の一連の経験を通じて感じたのは、マイナンバーカードをめぐる制度は「理念」と「運用」の間にまだギャップがあるということ。
制度上は「保険証はマイナンバーカード(マイナ保険証)に一本化」「本人確認は厳格に」という筋道が立っています。しかし現場では「赤ちゃんを連れての手続きは非現実的」「保険証なしだと不安」という実務的な事情が優先される場面も多いのです。
従来の保険証が廃止されると、マイナ保険証を持っていない方は保険証とほぼ同じ機能を持つ「資格確認書」で受診することになりますが、さらに混乱が広がるかもしれません。特に子育て世代や高齢者世代のように医療機関や行政サービスをよく利用する層にとっては、制度の不透明さが生活に直結することになります。
私自身、今回の体験を通じて「マイナンバーカード問題は決して他人ごとではない」と強く実感しました。
私が体験したマイナンバーカード関連のモヤッとしたズレは実はまだまだあるんです。「電子証明書の更新」や「運転免許証との一体化」についても、過渡期ならではの実情を引き続きレポートしていきたいと思います。
▼次回「電子証明書」編に続く
※本記事は実体験に基づくレポートです。マイナンバーカードに関する取り扱いは、お住まいの自治体やご利用の施設などによって異なる可能性があります。詳細はご利用先などにお問い合わせください。
■Profile
武田千冬
美容誌や女性ライフスタイル誌、コスメのクチコミメディアで10年以上の編集・ディレクター経験を経て、現在は美容やライフスタイル領域をメインに活動するフリーライターに。2025年春に第一子を出産し、妊娠・出産・子育てなど女性のライフステージに関連するカテゴリでも実体験をベースにコラムなどを執筆。
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