●日本での展開を加速しているシャオミ・ジャパン
メディア向け発表会で登壇したシャオミ・ジャパンの鄭彦取締役副社長は、グローバルでのシャオミの状況について説明した。
2025年の第2四半期は過去最高の成長を達成し、売上高は5四半期連続で前年同期比130%を超えているという。この成長要因の一つとして鄭氏は、製品の基礎となる技術への投資を挙げた。
「過去5年間でAIやOS、チップセットに110億ユーロ(約2兆円)を投資しました。これによってシャオミはスマートフォンで世界3位の座を5年間維持しています。これからの5年間で、さらに240億ユーロ(約4兆円)を投資します」と鄭氏は話した。
日本での展開はどうだろうか。鄭氏は、上半期は多くの新しいことにチャレンジしたと語った。その一つがスマートフォンのPOCOシリーズの展開。「今年に入って6モデルを発売し、エントリーからフラッグシップまでラインアップ化しました。(スマートフォンに関しては)ほぼ新参ブランドながら販売は絶好調」と述べた。
スマートフォン以外でも積極的に新製品を発売し、「1月から8月までで、すでに80SKUを超える製品を発売しました。Wi-Fiルーターやパーソナルケア製品などの新しいカテゴリーにも参入し、ホームデバイスのラインアップは確実に拡充しています」
さらに3月にはさいたま市のイオンモール浦和美園に同社の直営店舗で日本初出店となるシャオミ ストアをオープン。4月には川口市のイオンモール川口に2号店を出店した。同社の幅広い製品群を一店舗に集め、「多くのシャオミファンや近隣のお客様で、期待を上回る実績となっています」と鄭氏は誇らしげに語った。
シャオミは『Human×Car×Home』を事業戦略に掲げ、これらが有機的につながることで、「より便利でスマートなライフスタイルの実現」を目指しているという。この“Car”では中国で今年発売され、日本でも話題となった世界最速のEVであるXiaomi SU7 Ultraが初披露された。
●Xiaomi HyperOSがこの秋にアップグレード
鄭氏に続いてシャオミ・ジャパンの安達晃彦プロダクトプランニング本部本部長が登壇。同社のスマートフォンやタブレット端末、スマートウォッチに搭載している独自OSのXiaomi HyperOS(以下、HyperOS)が、この秋にHyperOS 3としてアップグレードされることを紹介した。
アップグレードのポイントは3つあり、安達氏は直感的で美しいデザインとシームレスな相互接続性、パワフルでスマートなAIと紹介。デザインについては「UIは新しいマテリアルデザインで、アニメーションスタイルに刷新されました。簡略化されたアイコンやひと目で分かるウィジェット、新しいロック画面のデザインなど、システム全体がリフレッシュされています」と述べた。
特に象徴的な機能が、Xiaomi Hyper Island。
また、「ライブアクティビティ機能で、アプリを切り替えたり通知バーをスワイプしたりしなくても進捗状況が確認できます」という。
●Macbookでシャオミスマホのロックを解除
HyperOSは、シャオミ製品同士がシームレスに接続し、「クロスデバイス体験を進化させてきました」と安達氏は話す。HyperOS 3ではスマートフォンのロック解除をタブレット端末側で行うことができる。
この利便性をさらに高めるため、HyperOS 3ではApple製品との接続がこれまで以上に便利になったという。「例えば、MacBookの指紋センサーでスマートフォンのロックを直接解除したり、スマートフォンのアプリをMac上で別々のウィンドウとして操作したりできます。Xiaomi PadをMacBookの外部ディスプレーとして使うことも可能です」
パワフルでスマートなAIについては、Xiaomi hyperAIによって、「日常のすべてのシーンで、より自然にAIが体験できるよう進化しています」という。
テキスト機能では画面上の画像をテキストとして認識できるようになり、音声認識では騒がしい環境でもバックグラウンドノイズを低減して翻訳や文字起こし、字幕などが生成できるようになった。検索機能は探しているものを尋ねるだけで必要な情報を要約する。
「HyperOS 3は10月以降にシャオミのエコシステム全体のデバイスに展開し始めます」と安達氏は結んだ。
●日本の市場やニーズに合った製品を選んで展開
発表会の後、登壇した鄭氏にインタビューをする機会があったので、シャオミの特徴や日本市場での今後の展開などについて聞いた。
――日本で販売する製品の選定ポイントはどのようなところですか?
鄭彦副社長(以下、敬称略で鄭と表記) 当社の製品の中から日本のお客様のニーズが高いものを選ぶのが基本です。
――中国ではシャオミファンを増やすことで成長してきましたが、日本ではどのような戦略でファンを増やしていこうと考えていますか?
鄭 例えば日本のスマートフォン市場はキャリアの販売が9割を占め、グローバルと比べて非常に特殊な市場です。当社もキャリア向けにビジネスを展開してきましたが、それだけだと他社との差別化ができず、シャオミの特徴を出せないところがネックでした。
シャオミの特徴は、スマートフォンやタブレット端末を中心としたスマートデバイスとスマートホームに車も加わったエコシステムで、当社のような広範囲でエコシステムを構築しているメーカーはありません。
この特徴を活かすには中国で10年前からやってきた、一つの空間ですべての製品を体験して購入できるストアという場所が必要。キャリアや家電量販店、ECだけでなく、タッチポイントとしてシャオミストアを拡大していく戦略で進めています。
――シャオミのエコシステムの強みを具体的に教えてください。
鄭 やはり機器同士が連携すると、より使いやすくなるという便利さですね。当社ではハードはもちろんですがソフトにも力を入れていますので、連携の利便性をアピールしていきます。
日本ではまだ家の中の家電を一本化して操作できるところまで至っていません。各機器のメーカーごとにアプリをインストールしなければならず、ユーザーエクスペリエンスは良くありません。しかし、当社は製品のラインアップが非常に幅広く、日常生活で使用する家電製品をある程度カバーしているところが他社との違いであり、シャオミのストロングポイントと考えています。
――シャオミストアの今後の展開についてはどのようにお考えですか?
鄭 2025年は首都圏で、2026年には東名阪まで広げていきます。最終的には全国展開も視野に入れていて、自分の生活圏に必ずシャオミストアがあるというところを目指しています。
――店舗が増えるとコストアップにつながったり、展開製品の拡大で当初オープンした店舗が手狭になったりすることも考えられるのではないでしょうか?
鄭 すでに当社ではストアマネジメントのソフトを活用して効率の高いオペレーションが実現できています。販売に関する情報もリアルタイムで収集して分析できます。
店舗が増えれば当然コストはアップしますが、2店舗が5店舗になったからといってトータルコストが比例して増えるわけではありません。かえって店舗が増えることで1店舗当たりの運営コストは下がります。
手狭になってしまう可能性についてですが、日本で展開する店舗は中国と同じくらいの大きさです。中国のシャオミストアでは1店舗のSKUが800~1000弱で、日本のストアのSKUはその1/3くらいなんです。つまり、日本のストアの将来像がすでに中国にあるので、今年オープンした店舗が将来的に手狭になることはないといえます。
――オープンしたストアでお客さんの反応はいかがでしたか?
鄭 お客様もですが、出店した商業施設の方からも「スマートフォンにスマートデバイス、家電や自動車まで販売しているメーカーは聞いたことがない。何屋さんですか?」と聞かれました(笑)。
今まで見たことがないということで、新鮮さや興味を持ってくれる方は多く、新製品を発売する度に見に来てくれるお客様もいます。
――お客さんに驚かれることは大事ですね。
鄭 はい。ストアを出店することで今までアプローチできていなかったお客様にもシャオミを知っていただき、リピートのきっかけになればと考えています。
限られた時間だったが、インタビューを通して鄭副社長が日本市場でシャオミの特徴や強さをどのように活かしていくかについて、明確なビジョンを持っていることが分かった。そのビジョンどおりにシャオミファンを獲得していけるか、今後の同社の展開に注目していきたい。後編ではXiaomi EXPO 2025で発表された新製品を紹介する。(BCN総研・風間理男)
【注目の記事】
2万1800円 シャオミのロボット掃除機「S40C」 エリア設定やモニタリングなど便利機能を搭載
シャオミ、11インチタブレット「Redmi Pad 2 シリーズ」を2万1980円で販売
「Xiaomi 15」を4月1日から順次発売、ライカ共同開発したカメラ機能を搭載