●デジタル時代にこそ必要な“人の気づき” 必要に応じて配慮を
ヘルプマークとは、自治体が発行する赤地に白い十字とハートが描かれた小さなタグのことである。外見からはわかりにくい障がいや病気を抱える人が援助や配慮を必要としていることを周囲に知らせるための制度で、2012年に東京都で配布が始まり、現在では全国に広がっている。
対象は、義足や人工関節を使用している人、内部障がいや難病のある人、妊娠初期の方など多岐にわたり、1人1枚まで、誰でも無料で受け取ることができる。利用者は鞄などに装着することで、困ったときに声をかけてもらえるなどの支援を得やすくなる。
実は私もこのヘルプマークを実際に使用している。心臓に持病があり、毎日複数の薬を服用しているが、副作用で「血が止まりにくい」「ふらつく」といった症状があり、転倒や怪我を避けるために日常生活では細心の注意を払っている。体力を維持するためには適度な運動が欠かせず、ウォーキングなどを日課として努力しているが、それでも外出先で周囲の助けを必要とする場面も考えられる。
そこで私は、救急搬送など不測の事態に備え、迅速に必要な情報を伝えられるよう、ヘルプマークに加えて服用薬の種類やかかりつけ病院を記したヘルプカードを常に携帯している。ヘルプカードに持病や必要な支援、緊急連絡先などを記入し、財布や障害者手帳とともに携行しておけば、日常生活での意思疎通が容易になる。災害時や事故の際にも、カードの存在は命を守るための重要な情報源になる。
ヘルプマークは制度開始からすでに10年以上が経過し、配布数も全国で増加している。しかし、ヘルプマークを持つ人には、利用者ごとに抱える困難が異なるという現実がある。
一方、マイナンバーカードを健康保険証として利用登録済みの人を対象に、受診歴や薬剤情報を即時に確認して搬送先や処置を判断できる「マイナ救急」の制度が今年10月から始まった。マイナ救急の仕組みがあればヘルプカードは要らないという意見も出るかもしれないが、読み取るステップが必要なデジタル認証には特有のデメリットも存在する。だからこそ、ヘルプマークやヘルプカードといった仕組みを社会全体で正しく理解し、実生活に根付かせていくことが求められている。(堀田経営コンサルタント事務所・堀田泰希)
■Profile
堀田泰希
1962年生まれ。大手家電量販企業に幹部職として勤務。2007年11月、堀田経営コンサルティング事務所 堀田泰希を個人創業。大手家電メーカー、専門メーカー、家電量販企業で実施している社内研修はその実践的内容から評価が高い。
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