多くの薄毛難民たちが、薄毛治療に関する情報の波に溺れ、混乱している。
育毛薬に効果はあるのか? 植毛の費用はどれくらいかかるのか? 自毛植毛の手術ではメスを使うのか? 効果はいつ頃から感じられるのか?
彼らからの切実かつ様々な問いについて、『薄毛革命』(幻冬舎)の著者であり、自毛植毛3000症例の実績を持つ「親和クリニック」総院長・音田正光先生に話を聞いてきた。
■その薄毛対策…あなたに合っていますか?

 「毛深い人は薄毛になりやすい」
 「ワカメを食べると髪が増える」
 「帽子をかぶるとハゲる」
 「シャンプーより石けんで洗う方が良い」
 etc…

 今も昔も髪にまつわる噂や都市伝説は枚挙にいとまがない。しかし、これらにはいずれもエビデンス(医学的根拠)はなく、ただの迷信に過ぎないと音田先生(以下「音田氏」と記載)は語る。
 また、「AGA」という言葉が一般化するにつれて、「薄毛に効果がある」とされる様々な商品、サービス、治療法が多数存在するようになった。しかし、その効果や対象、コストに関する情報が多すぎるため、結果として薄毛に悩む人(=薄毛難民)たちを惑わしているというのが実情だろう。

 たとえば、薄毛を気にしはじめた多くの人が手にする、比較的安価な「育毛、発毛効果のあるシャンプー」について。音田氏は『健やかな頭皮環境を整えることは大切ですが、頭皮の外側からのアプローチで髪の生物学的性質が変わることはありません』と言う。
 同じくその手軽さから人気の「育毛剤」については『予防・防止には一定の効果はあります。ただし、効果については個人差がありますし、何より「継続し続けなければならない」ことはランニングコストの面でも知っておくべきです』とアドバイスをくれた。

 ほかにも薄毛難民の周辺には多くの商品や治療法が存在している。

 「隠す」方法として代表的な「増毛パウダー」については『手軽ですし、軽度なAGAには有効だと思います。しかし、ある程度進行したAGAの場合は…どうしても不自然に見えてしまいますよね。パウダーを使っていること自体が「バレ」を意識した心理的なストレスになってしまう方も多いんです』とのこと。

 「増やす」方向では、「増毛」が挙げられるが、これはどうだろう?

 『カツラに頼ることなく増毛感を得られるのがメリットでしょう。ただし、そもそも毛髪がなければ結び付けることはできませんし、元の髪の毛が伸びてくれば、メンテナンス費用が必要になります。それに、抜け毛で落ちた髪の毛も不自然に見えてしまうので、日常生活でも気を使うと思います』。

 このように、それぞれの効果やデメリットを理解した上で、自分の状態や目的に合った対応をすれば良いのだが、残念ながら、進行性であるAGAにおいてはいずれも根本的な解決法とはいえない。
 また、コストがかかり続けるという問題も、特に若い方にとっては無視できるものではないだろう。
 

■「隠す・増やす」ではない「移す」というベクトル

 では、根本的な解決法とは何なのか。そもそも、そのような方法はあるのだろうか。

 『AGAにならない後頭部や側頭部(特に後頭部が適している)の毛根組織を採取し、薄くなった部分に移植する「自毛植毛」は一つの最適解だと言えます』

 たしかに薄毛の方は前頭部、頭頂部は薄いのに、側頭部から後頭部にかけての毛は黒々している…。自毛植毛は、この後頭部の髪の毛を薄い部分に植えるというのだが、本当に毛は生えてくるのだろうか。また、そんなことが可能なのだろうか…。

 『人口毛と違って、自毛植毛は自分自身の毛根組織を移植するので拒絶反応が無く、抜けても生え替わるため半永久的に生え続け、伸び続けます。ただし…ご理解いただきたいのは、自分の髪を生やすわけですから、それなりの長さになるまでは一定の期間は必要となることです。

しかし、その伸びていく過程こそが見た目の「自然さ」にもつながっているのです』

 そんな良いことづくめの「移植手術」とはどのようなものなのか、痛みや術後経過について気になる方は多いだろう。

 『かつての「自毛植毛」は皮膚を切り取る手術だったのですが、今はメスを使うことなく移植が可能です。痛みがあるとすれば麻酔の時くらいでしょうか。ダウンタイム(施術を受けてから施術前と同じ日常生活に戻れるまでに要する時間)も最小限に抑えることができるようになり、翌日にはシャンプーもできるんですよ』
 術後については『 移植した周囲の毛髪が脱落する“ショックロス”という現象が一時的に起こることがありますが、高い技術で移植手術を行えば90%以上は生着し、6~8カ月後くらいには効果を実感することができます』とのことだ。
 

■薄毛治療コストは人生を豊かにするための投資

 ただ、このような精密な手術による自然な植毛となると、やはりコストがかかるのではないだろうか…。調べてみたところ、音田氏のクリニックでは『基本治療費20万円+900円/株』と設定されているので、500株の移植であればおよそ65万円(税別)が必要ということになる。溢れんばかりのCMや雑誌広告で見かける他治療の最低料金に比べると、決して安くはない金額のように感じる。

 これについて、音田氏は次のように話してくれた。

 『AGAは放置しておくとどんどん進行しますので、ひとりで長期間悩み、あれこれ試す経済的・時間的なコストこそが最も無駄になってしまいます。早く来て頂ければ、その分移植する髪も少なく済みますので、手術時間や費用といった患者様のご負担を抑えることにも繋がります。それに、薄毛の問題は心理的な悩みに関連することが多く、恋愛や結婚、仕事での出世などに間接的な影響もあると考えています。私たちのミッションは、自然に薄毛の悩みを解消し、患者さんの人生を豊かにさせることなのです』

 人生100年時代とも言われる令和の日本において、薄毛コンプレックスによるネガティブなマインドから解放され、人生を好転させるには、どうやら「自毛植毛」が多くの薄毛難民にとって有力な選択肢であると言えそうだ。


 

※取材後、特別に見せていただいた「自毛植毛」手術の一例。編集部も驚いた、まさに人生が変わるほどの変化である。

術前と術後1年後の検診時による比較画像(提供/親和クリニック)

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