Tomy 「小林さんは男性を条件でチェックする派ですか?」
小林久乃(以下:小林) 「全然です。もう経済的には自立していますから、直感を基準にしてパートナーを選んでいます。でも結婚となると、譲れない条件がひとつだけあって……」
Tomy 「ほう、なんでしょう?」
小林 「(結婚相手の)宗教や国籍も気にはしますけど、それ以上に譲れないのは“育ってきた環境”です。私は未婚ですけど、友人の離婚のお世話だけはたくさんしてきました。
Tomy 「相手に、何か“育ってきた環境”に代わるものがあればいいですよね」
小林 「そうですね。キンプリ級に顔面偏差値が高いとか、もう私が好きで好きでしかたなくて狂っているとか。(笑)Tomy先生には条件はないんですか?」
Tomy 「僕たちゲイの世界には結婚という制度がないから、条件は全然気にしない。あと交際するまでのスピードが男女のカップルと比べると、めちゃくちゃ早い。僕なんて、すぐに告白しますからね」
小林 「うーん、……それは見ていて、うらやましさを感じる時もあります。みんな、気持ちに率直ですからね。年齢を重ねると忘れてしまうんですよね、あの感じ。
Tomy 「でもね、条件なんて “見てしまう”ことが悪いんですよ。高級ホテルで、高ビーなホテルマンがフロントで、客のことを頭の先からつま先まで、舐めるように見て持ち物チェックをしているのと同じ行為です。だから好きになるかもしれない人は、まず“感覚”で見ましょう。また会いたいかどうかとかね。それができている人は、いい人を捕まえています」
小林 「婚活でいういい人は究極、誠実な人です。金と女にだらしなくない人。言葉にすると簡単だけど、これがなかなかいないんです」
Tomy 「そんなに確実な結婚を求めるなら、地味なタイプの男性を選んだほうがいいんですよ。やっぱり昔ながらのお見合いが一番ですね」
小林 「それは私も大賛成です! 著書にも書いたのですが、いわゆるお見合いおばさんみたいな人を介して出会うのは正解。私の地元で開催しているんですけど、教職を退任した先生たちが行っているんです。こんなデジタル化している時代なのに、必ず対面式で希望を確認している。おそらく人間性も見ているんでしょうね。彼らが紹介してくれる人は、やっぱり気が合ったんです。
Tomy 「交際成立するまでは肉体関係を持ってはいけないとも言いません?」
小林 「あったかも」
Tomy 「そのルールは大事。僕らゲイが出会いの場としてフル活用しているマッチングアプリも、遊びとしか考えていない可能性が高い。でもまず設定されたルールを守れるかどうかで、相手の誠実さも図れます。あとお寺が主催している合コンとか? 」
小林 「それも主催者の話だと神様の前では悪いこともしようとしないらしく、トラブルが少ないそうです」
Tomy 「神罰が与えられそうですもんね。(笑)ここまで婚活に関していろいろ話しましたけど、僕は2つポイントがあると思っています。まずは“一人で生活していけない人が婚活をすること”。例えば、外食を一人でできないとか、寂しさと不安を結婚で埋めようとすることです。もうひとつは“本当は何もできないのに「私はなんでもできます」と、自分を盛ってしまう人が結婚しようとすること”。実は後者の層が一番多いんです。結局隠して結婚をして、その偽装していた部分の負担がパートナーにかかってきてしまう。で、浮気される」
小林 「結婚をブランディングの一環だと考えちゃうと、苦しくなるっていうことですよ。婚活はビジネスかもしれないけれど、ゲームではないんです。
Tomy 「総括すると、お見合いおばさんの紹介してくれる人に会う。この時点で自分の条件はクリアしている。で、好きかどうかを直感に聞いて、少しずつ距離を縮めて、共に生活をすることの目標が同じかどうかを確認する、でどうでしょう」
小林 「その通り。ひとつ女性の意見を加えるとすると、婚活しているっていう女性って地味なコーディネートをしていることが多いんですよ。ベージュ、薄ピンクとかふんわりしたラインばっかり。その色が悪いわけじゃないんですけど、本当に好きで選んでいるのかなって思う。男性に好かれる見本に沿っているんでしょうけど、それじゃ個性もないです。男性に『お!』ってチェックされるポイントを作って欲しいな。洋服でもメイクでも、会話でもなんでもいいから」
撮影/岩瀬有奈 ※撮影は2月に行われたものです