コロナ自粛騒ぎでにわかに東京の空気もクリーンとなり、普段着慣れたスーツを脱いで子どもたちと毎日ジョギングに精を出す私の元に「なんかクソ記事が流れてきたんですけど」という急報が入りました。
汗を拭きながらアクセスしてみると、出た汗が全部引っ込むぐらいに興味深くも面白い記事じゃないですか。
https://president.jp/articles/-/34737
タイトルからして「これが対コロナ最強布陣『橋下総理、小池長官、吉村厚生相』 もう安倍に政権を任せるのは無理だ」ですよ。何やこれは。こんな狂った記事、当の橋下徹さん本人でも顔赤くして言わないでしょ。
さらには、5月に入って「橋下徹上げ」「安倍晋三下げ」や、愚かな施策を連発する官邸の体たらくを腐しつつ維新をヨイショする記事が立て続けに掲載され、堂々とヤフーニュースなどで配信されているんです。なんだこれ。どういうことなんだ、これは。
『安倍晋三に絶望…自然発生的「吉村総理」待望論、強まる もうこの政権はあかんわ、いてまえ』
https://president.jp/articles/-/35246
『橋下ゴジラvs吉村ガメラ、日本を救う「総理」はどっちだ! 責任感ゼロの安倍晋三にもう限界だ』
https://president.jp/articles/-/35329
いや、まあ記事の内容は面白いんですよ。プレジデント誌の編集長・小倉健一さん、大の特撮ファンだって言うじゃないですか。実際、安倍晋三さんやその周辺の人たちが連発しているコロナ対策って、どうにもイケてないものが多いのも事実ですからね。ただ、だからといって何の関係もない外野に過ぎない橋下徹さんを持ち上げる理由は、本来、特にありません。
要するにこれらのプレジデントの記事、良い意味で橋下徹さんや小池百合子さんシンパのための売文記事ですよね。コロナ対策で独自のリーダーシップを勝ち取った大阪府知事・吉村洋文さんと、東京都知事・小池百合子さん。
『吉村洋文府知事大活躍! 橋下徹さん首相待望論まで出た「維新の会」は、これから力を増していくのでしょうか?』
https://youtu.be/28HqWv5Q62c
もちろん、小池百合子さんに関しては築地から豊洲への市場移転問題で建築エコノミストを自称する森山高至さんや共産党方面に担がれて、うっかり「立ち止まって」しまった人です。さらには、新国立競技場問題でも方針を二転三転させて、亡くなった世界的建築家ザハ・ハディッドさんの建築設計をキャンセルし台無しにするアシストをして、私たちの血税である国税都税を三桁億単位でおおいに無駄遣い。挙句には、東京オリンピックのホスト都市であるにも関わらずさしたるリーダーシップを発揮できずに東京オリンピックの開催延期では途中まで意志決定から外される体たらくでした。
それでも「独断専行」「根回し無用」の小池百合子さんにとっては「コロナウイルス対策」という絶好の機会がやってきて、かき集めた都税を大盤振る舞いすることでまるで信長の野望で民に施しをして民忠誠度を上げる策に打って出ました。自民党幹事長・二階俊博さんとも握って自民党都連を黙らせてしまって、どうも自民党は次の都知事選では刺客候補を立てられないらしいです。あらまあ。
一方、大阪府に関して言えば、コロナウイルス以前に大阪の医療体制を削減した前々府知事の太田房江さんと、それ以上に予算を削減して「大阪府の財政削減を進めた張本人」が『大阪維新』時代の政治家・橋下徹さんですね。大阪の財政がアカンのは仕方がないとして、その財政立て直しの名目で医療資源を削減して、コロナ対策を一時的に大変なことにしてしまった張本人が橋下徹さんとも言えるわけですよ。もちろん、橋下徹さんもいまとなっては反省しておられるようですが、まあ、まさかこんなことになるなんて思ってもいなかったでしょうしね。
で、その医療リソースの不足でコロナ患者が溢れ返る前にどうにかしなければならない、とばかりに、これらの失政の尻拭いをするために大見得をバンバン切っているのが現大阪府知事の吉村洋文さんです。
そういう状況で、橋下徹さんを総理に待望論をブチ上げる記事が出るってのは妙なんですよ。実際、誰も期待してないですからね。そもそも、文春がやってる恒例の『総理にしたい政治家』アンケートでは、橋下徹さんは8位以下ですし、大手マスコミが予備調査でやる期待する政治家(記名式)にいたっては圏外です。よく見ると東国原英夫さんより下になってて、支持者が少ないというより橋下徹さんを嫌っている人が多い印象です。シンクタンクで期待する政治家や評論家を調べることは多いですが、何度やっても橋下徹さんは著名だけど支持はマイナスなんですが、刺さる人には刺さるってことなんでしょうか。元政治家としてテレビに出ている芸能人の扱いであって、調査結果を見る限り世論において橋下徹総理待望論なんてネットにいる旧大阪維新時代からの支持者が騒いでいるぐらいなのかなと思います。
それもそのはずで、大阪維新で旋風を巻き起こし、元東京都知事・石原慎太郎さんを共同代表に迎えて国政に打って出た橋下徹さんはそこから期待感は急降下。最後は2015年の大阪都構想のチャレンジは敢なく失敗に終わって一端は政界引退を余儀なくされたんですよ。
大阪に本社を持つ企業は増えたのでしょうか。大阪での賃金は増えましたか。大阪は住みやすいですか。参考にするかどうか微妙なところではありますが、日本総合研究所の『都道府県幸福度ランキング』を見てみますと2018年度までずっと大阪府は下位を低迷し、総合幸福度で43位、政令指定都市としては大阪市が栄えある20位でドベであります。大阪府民、為政者に厳しすぎるだろ。もちろん、ここでいう「幸福度」はあくまで傾向値であって、府政、市政の成績そのものではないにせよ、本調査が刊行された12年版以来、42位、43位、44位と90年代の阪神タイガースもかくやという暗黒状況になっているのは特筆するべきところです。もはやオマリーとパチョレックを知事に担がないと駄目なのではないかとすら思います。
『都道府県「幸福度」ランキング2019【完全版】』
https://diamond.jp/articles/-/220931
維新の会の支持の構造において、右派系野党としてすでに多くの政党支持・有権者の行動分析はかなり行われており、中でも『維新支持の分析 -- ポピュリズムか,有権者の合理性か』(善教将大・著 有斐閣・刊)はほぼ維新の支持状況に関する決定版とでも言うべき内容になっています。政策の支持動向や政策分析に関心のある方からすればまさに必携の書です。
維新の会の支持層からすれば、維新の会を支持するのは維新の政治家や(主に地域に対する)政策が良いとするものです。
『維新支持の分析』(有斐閣)
http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641149274
【書評】有権者の態度を読み解く『維新支持の分析』の迫真度 - やまもといちろう
公式ブログ https://lineblog.me/yamamotoichiro/archives/13218154.html
この中で問われているのは、いまや旧「大阪維新の会」を創設した橋下徹さんのリーダーシップや個人に対する期待感は特定の維新支持熱狂層のみにしか届いておらず、むしろ現「維新の会」で見るならば橋下徹さんが出てくれば出てくるほどマイナスで、橋下徹さん本人の政治勘の鋭さや、未練混じりの政治時評は必ずしも全国の有権者には好意的に受け取られていないどころか、大阪府の有権者ですらもそのアイコンに対して賛否両論の深刻な対立状況に陥っていることです。それもこれも、橋下徹さんの優秀さや発信力の強さと同時に表現・存在のドぎつさと、大阪府が抱えた特有の閉塞感、さらには在阪マスコミによる恒常的な橋下徹ヨイショが本来政治については選挙前ぐらいにしか考えることのない有権者にいちいち是非判断を突きつけるあたりに満腹感を持たせている可能性は否定できません。
確かに、2012年の週刊朝日による『ハシシタ』なる橋下徹特集において、ジャーナリストの佐野眞一さんと週刊朝日取材班(今西憲之さん、村岡正浩さんら)が橋下さんの出自を被差別問題に重ねてしまい問題となるなど、橋下さんが目立つがゆえに酷い足の引っ張られ方をして国政進出についてはおおいに阻まれたのは不幸であったとは思います。
橋下徹さんも大阪土着の地域政党から全国政党への脱皮を行い国政にしっかり進出するプロセスを踏もうとしたところで数々の妨害に遭い、また、都知事就任前は自由民主党時代でも群れることのできなかった孤高の有力政治家・石原慎太郎さんの存在感をスイングバイに使って飛躍を狙った橋下徹さんのセンスと行動力は素晴らしかったのは間違いないのです。
【全文】
石原慎太郎氏「維新の会」分党会見 「橋下徹氏と目的は同じだが、登る道が違う」
http://logmi.jp/13718
しかしながら、橋下徹さんの王道政治家としての歩みが閉ざされるのは、まず『週刊文春』2012年7月26日号から掲載が始まった橋下徹さんの不倫&セックススキャンダルです。これで、大きく女性支持層からの離反を招き、またマスコミからの好意的な報道がかなり減少してしまいます。さらにその後、鬼門中の鬼門である2013年当時の「従軍慰安婦問題」に関する失言で決定的な状況になりました。
『大阪の元愛人だけが知っている「裸の総理候補」 橋下 徹大阪市長は スチュワーデス姿の私を抱いた!』
http://shukan.bunshun.jp/articles/-/1593
『慰安婦制度は必要だった』
https://www.jiji.com/jc/d4?p=gaf928-jlp14540092&d=d4_int
惜しむらくは、決定的に日韓関係が悪化した徴用工訴訟問題および海上自衛隊レーダー照射事件(ともに2018年)以降であれば、韓国批判の文脈も込みで橋下徹さんの発言も許容されることもあったろうとは思います。その点では、橋下徹さんは時代の先を行き過ぎて、結果として女性層からも無党派層からも「安定感を欠く」「清潔感がない」というマイナス評価と共に2015年の「大阪都構想」(大阪市における特別区の設置についての投票)で大阪市民から僅差で否決されて、従前の宣言通り政界から(一時)引退することになるのであります。もったいないと言えばもったいない。
思い返せば、前述した橋下徹さんにまつわる舌禍事件やセックススキャンダルのひとつでも回避するか、釈明も含めてもう少しうまく立ち回っていれば、このわずかな差で負けた「大阪都構想」はひっくり返り、大阪市に5つの特別区を設置するプロセスに進んでいたでしょう。一度は石原慎太郎さんとの行き違いで挫折に追い込まれた国政への歩みも、いまごろはもっともっと隆々たるものであったかもしれないと思うと、これで良かったのでしょうか悪かったのでしょうか。
そういう橋下徹さんはいまやタイタン所属のタレントであり、述べた通り、どの社会調査でも媒体アンケートでも首相待望論で「橋下徹」の名前が上位に出ることなどほとんどありません。政治家としては、橋下徹さん本人や周辺の期待がどうかは分かりませんが、完全に「終わった人」扱いになっています。それでも、プレジデント誌でいまごろになって麹町文子なる名義で「橋下徹上げ」記事が連発されたので、業界的にも「なんだこれ」となるわけであります。
で、その麹町文子の正体とはプレジデント編集長にこの1月に就任された小倉健一さんとその周辺のライター氏であり、何より小倉健一さんは都知事・小池百合子さんの元秘書の御仁です。プレジデント編集長就任の挨拶ページに、なぜか「元大阪市長・橋下徹さんの信頼を勝ち得た理由」とか書かれていますが、まあ、要するにそういうことです。プレジデント本誌の編集部が、ネット向けに出している記事が「プレジデント Digital」であり、そこの本誌編集長がまさか橋下徹さんや小池百合子さんの提灯記事を実名で堂々と書くわけにもいかないという謎の配慮で一橋文哉(広野伊佐美さん)をもじったペンネームを使っておるわけですね。個人的には支持政党や関係先に関わる記事ほど実名でしっかりと論評したほうが、小倉健一さんや『プレジデント』ブランドのためになるのではないか、と思うのですが。
編集長メッセージ
https://www.president.co.jp/ad/president/message/
ちなみに、このプレジデント誌ですが、こんどは最近「菅義偉 人生相談」が始まりました。なに考えてんだよ。官房長官自らがプレジデントに出てきて人様の人生にあれこれ仰っていただける素敵コンテンツに眩暈がします。
『橋下徹・大阪市長はこのまま消え去るのか? 菅官房長官は放っておかないだろう』
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/43384
その菅義偉さんがかねて橋下徹さんを高く評価し、また、田崎史郎さんも意を汲んで関係について詳らかにする記事を執筆されています。私が聞き及んでいる話と概ね一致するので、田崎史郎さんの記述は正しいんだろうと思いますけれども、つまりは菅義偉さんもある程度承知の上で、政権批判を繰り広げる文書をプレジデント誌がデジタル方面に拡散させるお手伝いをしていると見ることもできます。
プレジデントDigital 麹町文子
https://president.jp/list/author/%E9%BA%B9%E7%94%BA%20%E6%96%87%E5%AD%90
皆さんもぜひこの麹町文子ことプレジデント誌編集長の小倉健一さんとその周辺の皆さんのご健筆を末永く祈りつつヲッチしていただきたく存じます。また、小倉健一さんの筆致から見える官邸内お友達情実人事の微妙な力関係や三浦瑠麗さんの行く末、さらには菅義偉さんのお膝元・横浜からのカジノ撤退を明言してしまった大手オペレーターのラスベガス・サンズ社、そして菅義偉さんが握ったのかは知りませんが検察庁法改正で無関係なのに揺れている黒川弘務東京高検検事長の未来についても、ぜひご高説を賜りながら世情を掴む望遠鏡の役割を果たし続けていただきたいと切に願っております。
末筆ながら、政界で内閣改造が取り沙汰されるたびに橋下徹さんが法相などの閣僚にサプライズ起用されるとかいちいちガセネタが流れ、内心「そんなわけねえだろ」と思いながらも下々の政治記者や週刊誌記者の人たちが事実確認に走り回らされては疲弊するという恒例行事を繰り返しています。
橋下徹さんにおかれましては、コロナ禍で講演活動が減少して大変な折に申し訳ございませんが、首相待望論とは別に一刻も早く政界復帰して物事に白黒つけていっていただきたく、吉村洋文ブームの足場固めや火の後始末、敗戦処理等々に取り組んでいただきたいと強く願っております。「おおさかとこうそう」、がんばってください。
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