■20代の好みを取り入れたなら?若者のチョイ買い消費から学び、コンビニをもっと楽しく

20代の本音を調査!「若者のコンビニ離れはナゼ? どうすれば...の画像はこちら >>

本当に高齢者向けだけでいいの? 若者にも楽しいコンビニの方が、皆さんにとって魅力的じゃない?

もちろん、現状のコンビニのメイン客層は40~50代となっていて、高齢化社会に、寄り添った施策が人口動態とともに多くなっているのは、昨年末に発刊した、渡辺広明氏の最新作『コンビニが消えたなら』で述べてきた。でも…。

自身らも50代コンビである、著者:渡辺広明氏&編集担当者は、本書では書ききれなかった新たな命題、「以前は、何があるんだろうって、もっとドキドキワクワクしてコンビニ行ってなかった?」「今の若者感性の品揃えにも注力すれば、さらに魅力的になっていくのでは?」という仮説に気づいてしまったのです。

そこで、若者研究マーケティングアナリストの第一人者、原田曜平先生に対談をオファー。原田先生が率いる20代のインターン研究員5人も参加して、様々なアイデアを練ってみました。

昨年末に発刊した『コンビニが日本から消えたなら』を自ら否定するわけではありません。ただただ素直に、その先がどうしても見たくなってしまったのです。デジタル版でのスピンオフ企画で、この欲求を補完してみました。

では、続編スタート!!

今回の対談に参加してくださった大学生インターン研究生のみなさん
佐藤利奈さん(青山学院大学4年生)、宮本恵理子さん(早稲田大学4年生)、相馬海里さん(明治大学4年生)、内山澪さん(東洋大学4年生)、伊藤光輝さん(法政大学4年生)

■まずは考察の導入として、今若者の消費はどこへ流れているのか? みんなんで考えてみた

内山:私たちジェネレーションZ(1990年代後半~2000年代生まれ)って、とにかく人と比べられたくない。唯一無二の存在でありたいって思う傾向が強いんです。でも一方で他人の意見は知識として吸収します。

伊藤:僕の場合、人との繋がりが最優先で、イベントに参加するとか誰とどこへ行ったとか、コ ト消費を重視していますね。

佐藤:今回のテーマである消費行動に絞って述べると、私たちは「映え」を重視しがちです。もちろんリピートしたくなるかどうかってことも重視します。

原田:ジェネレーションZは小さい頃からSNSとともに育ち、いろいろな自己発信をしてきた世代だから、「me」意識が強く、「映え」重視ですね。あとは経済的に豊かに育っている世代だから、モノ消費以上にコト消費を重視するというのもよく言われていますね。

宮本:健康オーガニック志向、安さ少量志向、見た目を気にしないものは安さ重視。お店の空間デザインにも雰囲気を求めます。

原田:まだ若く、実際健康な人が多いから、本当の意味では健康志向が高まっているとは僕は思っていませんが、「健康感」というのが訴求点になっているのは事実でしょうね。糖質オフとか、カカオ○%とか、コンビニに並ぶものもこの数年で大分健康訴求している商品が増えており、その中で君らは育っているものね。むしろ健康訴求がされていない商品だと、ジャンルによっては違和感を感じてしまうのかもしれないね。

相馬:交際費にお金をかけたいので、日用品は安く済ませます。文具や化粧品など、付加価値を求めるものを買う時は専門店で購入します。「時間や労力をかけて、どれだけの価値が得られるのか」を考えながら行動しています。

佐藤:体験型施設とかも流行っていて。 チームラボとか 。

謎解き脱出ゲームもすごく流行っていて、そういうところにお金を費やしている若者が多いです。

原田:モノよりコト、そして「映え」にはお金を払うけれど、特に「映え」させたいジャンルではないなとなると、途端に「コスト意識」が強くなる、ということなんだろうね。最近は100均のコスメがブランド化されていたりもするし、高いモノは良いモノであるという昭和世代の価値観は薄れ、安くて良いモノがいいという感覚が強くなってきているよね。

佐藤:飲食面の消費でさらに具体的に挙げるなら、若者消費は最近では、タピオカ、チーズハットグ、ワッフル。ここ最近目立ってきてるのがレトロな喫茶店。インスタグラムでも上げている人が目立っています。

原田:ワッフルってコンビニにないんだっけ?

渡辺:コンビニにラインナップしている3000品は世の中の売れ筋商品の集約ですからね。みなさん食べたことないかもですが、コンビニのワッフル、結構美味しいですよ。

三社三様、異なる食感、味わいなので、ぜひ食べ比べて好みのワッフルを見つけてみるのがオススメ。

原田:ワッフルなら、もっと美味しいお店が他にあるってことが言いたいの?

佐藤:そうです。ミスターワッフルとか(チェーン店です)。

原田:要は、コンビニでは体験できないものに流れていると。

渡辺:コンビニへも専門店の味や体験を求めるぐらいハードル上がってるんですね。タピオカとチーズハットグは、コンビニにもあるよね。

佐藤:それらもコンビニにはあるんですけど、ちょっとイマイチに感じます。

渡辺:どんな部分が?

佐藤:味がイマイチに感じるんです。チーズハットグってチーズがびよーんと伸びる揚げ物なんですけど、コンビニの店員さんは忙しいから事前に揚げていて、想像してたよりもチーズが伸びないんです。

■「作りたて」が購買衝動のキーワード

渡辺:要は揚げたてじゃないぞと。なるほどね。コンビニは専門店ではないので、お客さまの購買ニーズに合わせて、食べる直前に揚げることができないもんね。この課題を解決するのは難しいかな。コンビニでの仕事は簡単だろうって、みなさんには映るんだろうけど、スタッフがこなさなければならない作業は実は1200タスクもあるんです。経営の問題というより、現場スタッフの作業が多く揚げたてに対応できないということなんですよ。できるだけ揚げたてに近いものを提供するのであれば、お客さんの来店時間ピークを読んで、用意しておくしかないよね、

佐藤:タピオカも同じで。

作られたものが売られてるって感じ。

渡辺:配送されたものが売られていて、その場で作っていないから。専門的でないという点が物足りないと。ローソンとゴディバが組んだ期間限定で発売されるデザートシリーズは、ローソンの専用ラインで作られてはいるものの、専門店と大きく変わらない商品で美味しいけどね。

宮本:スタバなどの、ちょっと高級目なテイクアウトドリンクに流れているんじゃないかなとも思っていて。

内山:さらに、最先端のスイーツや食べ物も増やしてほしい。

原田:コンビニのスイーツって最先端じゃないの?

内山:いや、最先端だと思っています。さっきチーズハットグが美味しくないという意見があったと思うのですが、私は逆で。チーズハットグを食べたいのに人気すぎて毎回売り切れているんです。あと、セブン-イレブンのチーズタッカルビの冷凍食品もすごく美味しいと話題になっていて。新大久保までは行けないけれど、流行りのものは食べたいなと。リピートもしたいので旬な食べ物が増えてくれたら嬉しいです。

原田:タピオカよりもちょっと新しいというくらいのものがあると嬉しい。タピオカくらい店舗が増えちゃったものはもう…。

内山:わざわざコンビニにはいらないという感じですね…。

原田:若者は、本当に最先端のモノを求めていると。ブームが去ったようなモノはどこでも買えるからわざわざいらない、ということかな。でも、最先端なモノばかりを取り入れてしまうと、コンビニの主要顧客である中高年がついていけないかもしれず、ここはコンビニにとって大きなジレンマですね。アルマーニエクスチェンジやGUみたいに、比較的若者を狙った新たな形態の店舗がコンビニ業界にも求められていくかもしれないね。

渡辺:バスチーとか、悪魔のおにぎりは流行りかけでしたよね。流行に敏感なアーリーアダプター層で話題になり、比較的慎重だけど新しいものを取り入れたいアーリーマジョリティが食いつくこのタイミングなんですね。コンビニは流行りを広げられるというポテンシャルは高いので。チーズハットグはタピオカと同じで後出し感のパターンになっちゃたけどね。何れにせよ、気をつけなくちゃいけないのは、流行りモノって、時代の流れとともに不安定なものでもあるんですよ。

いきなり在庫過多となってしまう可能性があるんです。その時、定番商品となっていくのか、ならないのかのバロメーターとなるのがリピート率で、バイヤーはそこに常に目を光らせています。コンビニこそ、どんなな業界よりシビアなのです。というのも店舗数が5万8000超。全体で見ると仕入れも大量なので、在庫を抱えるリスクが高い。ハイリスクハイリターンの基で成り立っている業界だということを、しっかりと押さえていただきたいですね。あと、本物感という点については、専門店と比べるのは酷かもしれないけど、コーヒーはセブン-イレブンをはじめコンビニのが美味しいっていうのもあってね。

原田:でもね、若者はコーヒー離れしていると言われているよね。ビールも同じだけど、とにかく苦いものがダメになってきている。

宮本:コーヒーは、本格派はおじさんというか。うちら若い世代はそもそも本格派コーヒーの味がわからないからいいやっていうのがあって。味に無頓着な若者はどこのコーヒーってこと自体に興味がないんじゃないかなって。

渡辺:作りたてという点が重要なのでしょう。先ほどのチーズハットグの話も同じで。ちょっと僕の体験談を話させてもらうと、実はアンパンで人生で一番美味しかったのが、山崎パンの工場で作りたてを食べた時で。ありえなかったくらい美味しかったんですよ。

一同:え~っ?

渡辺:なんでって聞いたんですよ。パンを開発していた時、原材料メーカーに。すると、「そんなの当たり前じゃないですか」「山崎パンが原材料を一番買ってくれているんだから、価格に見合った一番いい原材料を入れているんですから」と。それなのに町のパン屋が美味しいのはナゼか?  コンビニのパンは、当たり前ですが、作ってから時間が経っているので、工場の作りたてより、店舗に届いた時点では味が少し落ちているんですよ、残念ながら。コンビニの商品って、原材料ではナンバーワンのものを使っているはずなんだけど、作りたてという点では、専門店に大きく負けているんじゃないかな。

原田:うん。唯一本格派と言われているコーヒーが、若者がコーヒーを飲まなくなってしまったと。そこにあんまり価値は感じないと。コンビニの得意分野と若者のニーズにギャップがあるというのは非常に深刻ですね。

■映えが購買のきっかけに強く作用

内山:あとは、「食べられるお花」とか、ストーリー映えするメニューが揃っているカフェが流行っています。やっぱり消費がそちらに流れていると思います

伊藤:僕の場合、コンビニへは、飲み物目当てで行くというイメージがほとんどです。

渡辺:コンビニはもともとペットボトルや缶などの清涼飲料と紙パックのチルド飲料の販売でしたが、カウンターコーヒーの展開で飲料売上が上乗せになり、カウンターコーヒーが飲料の売上の25%前後を占めるまでになりました。さらに新しく、スムージーなどチルド系のカップ飲料、エナジードリンクなどが増えているんで、伸びている商品が以前より多様化してますね。

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伊藤:タピオカやインスタ映えの飲み物が登場して、飲むこと+SNSに上げるという目的があるので、そちらへ消費が流れてしまっていると思います。

原田:専門店のタピオカはインスタ映えするけど、コンビニのタピオカはインスタ映えしないってこと?

伊藤:コンビニのタピオカはパッケージが包装されていて、中身が見えない。

渡辺:たま~に中が見えるのあるけど、見えづらいってことだよねタピオカ感が。

伊藤:そういう点で、インスタ映えしないのかなって。それよりはインスタ映えするお店のにって流れてしまう。

渡辺:現状のコンビニでは、日常買い目的の人がほとんどだろうという分析から、インスタ映え重視の品揃えではないけど。新商品ではパッケージで工夫の余地はあるかもですね。みなさん、コンビニで飲み物を買っていないという訳ではないんですね。回数が減っていると。

相馬:私は、実家暮らしなんですけど、コンビニで「何を買うか、何を買わないか」と考えたところ、コンビニで買うのは、紙パックの飲料、デザート、お菓子、おにぎり、サラダ、チルド商品。コンビニで買わずに専門店で買うものは、本、文房具、パンですね。

原田:文房具はさておき、やっぱり、本物感を求めるのものは専門店へ向かっている。本物を真似るんだろうけど、所詮真似にとどまっていてと感じてしまう…。

渡辺:実は文房具が、この20年間くらいコンビニで売り上げを落としているものの象徴で。専門店嗜好とは逆バージョンで100円ショップへ取られちゃったんですよ。お金使うところは使って、使わないところは100円ショップへという。

原田:研究員の皆さん=ジェネレーションZ世代は、どっちかじゃないんですか? 例えば、おしゃれなという観点で文房具を選ぶならPLAZAとかLOFTへと。

一同:LOFTです。

原田:LOFTか100円ショップ。両極のみで、真ん中が存在しないということか。ということは、コンビニ業界もコストで勝負するコンビニと、付加価値で勝負するコンビニに、二極化していくということも考えられると…。

第2回へ続く

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