■所属するのにお金がかかる猟友会。その金額は?

 皆さんこんにちは! 茨城県でヨガのインストラクターの傍ら、新米猟師をしているNozomiです。

前回は狩猟車について綴らせて頂きましたね。今回は「猟友会」という組織について綴らせて頂こうと思います。その仕組みや、メリット・デメリットについて一緒に勉強していきましょう! 私の拙い文章を通して、少しでも“狩猟”に興味のある方、すでに“狩猟”に携わっている方、そして何より“いのち”と向き合っているすべての方のお役に立てれば幸いです。 



 さて、これから狩猟を始めようと思っている方、「猟友会」という組織はご存知でしょうか? 近年鳥獣の被害が拡大してきており、ニュース等でも「市街地にイノシシが迷い込み、“地元猟友会”が捕獲に出動しました」といったニュースを見ることが増えてきましたね。そういった映像でよく見かける、オレンジ色のベストと帽子を着たあの人達こそが猟友会の方々なのです。
 猟友会とは野生鳥獣の保護や狩猟の適正化のための組織で、主に「野生鳥獣の保護増殖」「狩猟事故・違反防止対策」「狩猟共済」の3つの事業を行っています。まずトップに「大日本猟友会」があり、その下に各都道府県猟友会、さらに各市区町村に「支部」が存在します。もし皆さんが猟友会に入ろうと思ったら、この支部に所属することになります。
 猟友会に入ると、同時に「都道府県の猟友会」と「大日本猟友会」にも所属することになるので、「各支部」と合わせて3つの会費を払わねばなりません。大日本猟友会は第一種銃猟が4,800円、第二種銃猟3,300円、網猟・わな猟なら2,300円です。都道府県猟友会と各支部の会費は場所によってマチマチですが、それぞれ5,000円~10,000円程度です。例えば、第一種銃猟ならすべて合わせて年間15,000円程度が会費としてかかるようです。


 ちなみに、支払うものはまだまだあります('Д') その年度の狩猟税や狩猟者登録の手数料も同時に支払いしますし、支部によっては「協力金」「事務手数料」などがかかり、合わせて猟期毎に20,000~50,000円を支払わねばなりません。私の場合はわな猟、2年目で22,000円くらいでしたね。参考までに以下〈猟友会ポイント〉に2020年度の私の支払額の内訳を載せておきましたので参考にしてみてくださいね!



〈猟友会ポイント〉
⑴「猟友会」は野生鳥獣の保護や、狩猟の適正化(違反や事故の防止)、後継者の育成等の活動を行う為の組織!
⑵猟友会に所属すると「大日本猟友会」「都道府県の猟友会」「市町村の猟友会」の3つに所属することになって、各々に会費がかかり、猟法や、各自治体によって値段は異なるよ。
⑶参考例Nozomiの場合(2020年度狩猟者登録申請緒経費内訳)
狩猟税 8,200円
登録手数料 1,900円
免許証明料 400円
大日本猟友会会費(網猟・わな猟) 2,300円  
茨城県猟友会会費 5,000円
猟友会支部会費 1,000円
連絡協議会会費 1,300円
わな保険 2,000円
合計 22,100円



ちなみに新規会員の場合、茨城県の場合は入会金として5,000円+税がかかります。神奈川県など入会金がかからないところもあるようです。





■猟友会への所属は任意? 義務? メリット・デメリットを考えよう!

 さて、だいたいの金額が分かったところですが、実はこの「猟友会」、必ず入らなきゃいけないという訳ではありません。猟友会に入らずとも、狩猟者登録をしていれば問題なく狩猟は行なえますし、実際にそうしている方も大勢居ます。ではなぜほとんどの方が毎年会費を払いながらも猟友会に所属するのでしょうか。メリットとデメリットを見ていきましょう!



【猟友会に加入するメリット】
⑴保険に自動的に加入
 狩猟者登録をするには、「3000万円以上の保障が可能な損害賠償能力の証明書」が必要です。つまりは、狩猟によって事故が起きた場合に3000万円が支払えるハンター保険の加入者証です。大日本猟友会では共済保険事業を行ってますので、猟友会に入ることで共済保険に加入し、この条件を満たすことが出来ます。
 ちなみに、必要なのは「保険の加入者証」ではなくて「損害賠償の証明書」なので、「何かあったら3000万円をポンと支払えるほどの資金信用を証明する証書」をお持ちの方であれば、ハンター保険に入らずとも狩猟者登録ができるそうです!……私にはどういったものを指すのか想像もつきませんけどね!(笑)



⑵提出書類の受理代行をしてくれる
 狩猟者登録の手続きをするには、申請書や保険の加入証書、狩猟免許を持って各都道府県の役所にある自然環境課などの窓口に行かなければなりません。

それを猟友会支部が代行してくれます。特に、自分の住む地域だけでなく遠方の都道府県で狩猟をする場合は、直接役所に行かなくて済むので非常に便利だなぁと思います。郵送での登録も出来ますが、狩猟免状の原本もしくは「都道府県猟友会会長に原本と相違ない旨を証明された狩猟免状の写し」が必要になりますので、なかなか煩雑になってしまいます。



⑶火薬類の無許可譲受票が貰える
 猟銃を使って狩猟をするには、必ず実包(弾薬)が必要になります。しかし、いきなり銃砲店に行っても買うことは出来ません。実包を購入するには、警察署へ行って「猟銃用火薬類等譲受許可申請書」を提出し、許可証を貰わねばなりません。手数料もしっかり2,400円かかります。しかし、猟友会に入っていれば「狩猟用火薬類無許可譲受票」というものが貰えます。これがあれば、その年度の狩猟者登録期間内は決められた数量の範囲内までは警察署で許可を取らなくても購入することが出来ます。この無許可譲受票で実包は300個までなら購入できるので、多くの方はこれ足りると思います。1通しか貰えないので、たくさん狩猟をする方や熱心に練習射撃をする方でしたら、別途警察へ申請を出すことになります。
 
⑷有害鳥獣駆除にも参加できる
 どんなに狩猟がやりたくても、猟期は11月~2月(北海道は10月~1月、各都道府県により期間延長の場合も有り)だけです。

それ以外の期間には基本的に狩猟は行えません。しかし、猟友会に入り狩猟の実績を重ねれば、有害鳥獣駆除(駆除隊、捕獲隊、駆除班等)に参加をすることが出来ます。市区町村からの依頼で、イノシシやカラスなど有害鳥獣の駆除として狩猟を行います。一定の期間と目標数等を決めて猟期と同じ様に狩猟を行う場合や、指定日に隊員全員で巻狩りを行う場合など、駆除の方法は地域によって異なるようです。記事の冒頭で書いたイノシシの捕獲に出動する猟友会の方などが、まさに有害鳥獣駆除で出動されているシーンですね。
 また、地域によっては猟期でもイノシシ等の捕獲報奨金が市区町村からもらえる場合がありますが、その条件が「猟友会支部の会員が当該市区町村内で捕獲したものに限る」となっている場合もありますので要注意ですね。
 ちなみに、SNSやYouTubeのコメントでよく「有害鳥獣駆除やらないの?」と質問を受けるのですが、私の所属している支部は駆除隊に参加するのに猟法、経験年数、定員……など幾つかの条件があり、私はその条件に満たしていないので、あと数年は駆除隊に入れなそうです……!



⑸使い勝手の良いベスト
 狩猟に興味を持ったことのある方なら、誰でも一度は目にしたことがあるあの黄色とオレンジの帽子とベスト。実はあれ、猟友会に入ると貰えるものなのです。獲物と誤認されることによる誤射を防ぐための派手な色のベストと帽子で、出猟時は着用を推奨されています。狩猟者が使うことを考えて作られたものなので、意外と使い勝手も悪くありません。必ずこのベストを着用しなければならない訳ではないので市販のハンティングベストなどを使われている方もいますが、農作業をされている方などからも一目で「ハンター」だと分かりやすいので、私は今でもこのベストを着用しています。





【猟友会に加入する際のデメリット】
⑴お金がかかる
 デメリットですが、やはり、お金がかかることでしょう。

毎年数万円の会費の出費はキツイと感じる方も少なくありません。狩猟免許を取るにも、猟具を揃えるにもお金がかかります。趣味として狩猟をするなら、そのお金はお小遣いから……。出来ることなら出費は減らしたいですよね。そんな新規狩猟者の懐事情を慮って(?)、自治体が狩猟免許取得者に助成金事業を行っている場合もあります。狩猟免許だけでなく、銃所持許可証の取得費用や銃保管庫の設置費用、猟友会の入会費等を助成してくれる場合もありますので、これから狩猟を始めたい方は一度お住まいの地域の制度をチェックしてみてくださいね!



⑵グループ内での団体行動
 猟友会も人の集まり。「一人気ままに自然の中で狩猟をしたいから狩猟者になりたいんだ」という方もいるでしょう。風のうわさですが「定例会と称した飲み会」「先輩猟師からのシゴキ」「グループ同士の対立」「縄張り争い」「派閥争い」「マウントの取り合い」etc……なんて悪い話を聞いて萎縮している人もいると思います。その気持ち、ものすごーく分かります。私も猟友会に入るまでは、そういった不安で一杯でした。でも、実際入ってみたら拍子抜け。私の所属する支部では強制参加の会合等は一切無く、集会も猟期前に総会が一度あるだけ。

それも支部の収支報告会と狩猟者登録証の配布、変更があった狩猟関係の法律の説明等を兼ねたもので、来られない場合は他の参加者に代理で登録証を預かってもらえばOKと、簡単なものでした。支部長と会うのは年に2回、書類提出のみです。ラクと言えばラクですが、その分、先輩猟師や師匠を探すのは大変でしたね。







 他の猟師との兼ね合いも、そもそも罠師のほとんどの方が自分の自宅や畑付近がメインの猟場。山で出会う猟師も、もともと近所でお知り合いのおじいちゃん。「他人の罠のそばに罠を設置しない」というマナーはありますが、どこもかしこもすでに罠だらけで自分が設置する場所が無い! なんて事もありません。逆に人の罠を発見した時などは、「どんな罠を使っているのか」「どうしてそこに仕掛けたのか」など、遠巻きに観察して勉強させて貰っています。狩猟者減少で自治体が四苦八苦するこの時代、広い猟場で対立するほど多くのハンターは残っていないようでした。
 もちろんこれは私の体験談ですので、他の地域の猟友会支部にそのまま当てはまるわけではありません。きっと猟法などによっても変わってくるのだと思います。ですが、勝手な想像で決めつけてしまう前に、その猟友会支部がどんな活動をしているのか、一度調べてみてはいかがでしょうか。



【猟友会に入ってない人、ハンター保険どうしてるの?】
 狩猟者登録をする際に(ほぼ)必須となるハンター保険ですが、大日本猟友会で行っている共済保険はあくまで会員向けの事業で、猟友会の会員にならなければ入ることは出来ません。

では、猟友会に入らず狩猟を行っている人は、どうしているのでしょうか。実は大日本猟友会以外にも、賠償責任保険のハンター特約という形でハンター保険を提供している保険会社がいくつかあります。
 ただし、調べるかぎり現在個人での加入が出来る保険商品は無いようで、団体での加入が必要になっています。団体と言っても、概ね10人程度で加入できますし、ハンター保険に加入する為に会員を募っている団体もあります。保険によっては「猟場への行き帰り」や「猟具の盗難や破損」などでも保険金が出る場合もありますので、気になる方はチェックしてみてはいかがでしょうか。



※参考:ハンター保険を取り扱っている代表的な保険会社
・東京海上日動
・三井住友海上火災
・あいおいニッセイ同和損保
など



■終わりに。恐れずに扉を開けてみよう! もし合わなかった場合は……?

 如何でしたでしょうか? 今回は猟友会についてまとめさせて頂きました。もし、私が貴方から猟友会に入るか、入らないかの相談を受けたとしたら、私は「とりあえず、勝手の分からない一年目は入っておいたら?」と答えるでしょう。私が声を大にして貴方に伝えたいことは「猟友会は支部によって性質が全く異なり、入ってみるまでわからない!」という事です。私の支部のように物足りなさを感じるくらい何もない支部もあれば、そうでない支部もあるという事です。だけれども、なにも最寄りの支部に絶対入らなければいけない、なんて決まりはありません。あまりにも合わなかったら次の年はその支部で更新しなくてもいいんです。恐れずに扉を開けてみましょう! 心から、貴方が快適な狩猟生活を送れるように祈っています。



編集部おすすめ