日本全国に数多ある名字に高校生の時から興味を持ち、研究を始めた高信幸男さん。自身が全国を行脚し出会ってきた珍名とそれにまつわるエピソードを紹介する。
6月10日は、国民の祝日ではないが「時の記念日」として知られている。国民に「時間をきちんと守り、欧米なみの生活の改善・合理化を図ろう」と1920年に東京天文台などの呼びかけで制定された記念日である。日本書紀によると、日本初の時計(水時計)が鐘を打った日が6月10日であるためこの日を記念日にしたと言われている。
このように、日本でも昔から時間に対して強い思いがあったことが伺える。それは、名字にも表れている。「時(とき)」や「時計(とけい)」・「十時(ととき)」という名字がある。「時計」という名字の由来は、時間が正確だったことから殿様から賜ったとされる。「十時」という名字の由来は、大分県豊後大野市にある十時(ととき)という地名からで、その地を治めていた戦国武将の十時惟信がいる。同じ「十時」の名字を持つ人の中に「十時七五三分」という方がいた。まるで時間を表しているような名前である。
また、昔は十二支(子・丑・寅・卯・辰・巳・午・羊・申・酉・戌・亥)で時刻や方向を表していたため、これらの文字を使った名字も存在する。虎(とら)という名字が存在するが、この名字は獣の虎が由来ではなく、干支の寅であると考えられる。