皆さんこんにちは! 茨城県でヨガのインストラクターの傍ら、新米猟師をしているNozomiです! さて、前回は皆さんの気になる猟友会について、その仕組みやメリット・デメリットなどについてお話させて頂きましたね。今回は、各地に伝わるイノシシ料理や実際に私が調理したイノシシレシピについてお伝えさせて頂きます。
そもそも「イノシシ肉」ですが、なんの肉に近いのか皆さんはご存知ですか? 牛肉? 豚肉? 鳥肉?……ズバリ答えは“豚肉”です! 家畜である豚はもともと、イノシシを家畜化していった動物で、いつでも安定した品質の肉を効率よく供給するために開発された動物というわけなんです。しかし、家畜化されたブタですが、栄養などの面については本家本元のイノシシ肉をしのぐことができませんでした。イノシシ肉の栄養については 『【第12回】イノシシを食べよう! ~ジビエって何?』で紹介した通り、豚肉より低カロリーで脂質が低い上に、高タンパク、さらにビタミンB郡が豊富に含まれているというハイスペックなお肉なんですよ!
ちなみに現代中国語ではブタの事を“猪”と書き、イノシシの事を“野猪”と書くそうです。へぇ~!
さて、そんなそんなイノシシ肉の食べ方ですが、「牡丹鍋」と「猪汁」が有名ですね。
●牡丹鍋
イノシシ料理と聞いて皆さんが真っ先に思い浮かぶのが、イノシシ肉をスライスして、牡丹の花のように飾り付けた、「牡丹鍋」ではないでしょうか? 実はこの「牡丹鍋」、マタギ猟の盛んだった東北地方・北海道から北関東、甲信越地方にかけての山岳地帯だけに伝わっているレシピだと思いきや、意外と全国各地で食べられているようなんです。茨城県でも「牡丹鍋」で検索すると、たくさんの料理屋さんがヒットしますし、神奈川県や岐阜県、兵庫県では牡丹鍋を売りにしたイベントや婚活パーティまで行われているそうですよ。
牡丹鍋のレシピですが、たくさんのレシピを調べてみたところ“味噌ベース”が基本の様ですね。その土地でとれた野菜やキノコ、豆腐、そしてメインの“イノシシ肉”を昆布や鰹節でとっただし汁で煮込み、最後に味噌を加えて出来上がり! 地域によっては醤油や八丁味噌で頂くこともあるそうです。日本酒などを入れてもいいですね! 私も実際に自分の畑で獲れた野菜を使って作ってみましたがとっても美味しかったです(´▽`*)
●猪汁
牡丹鍋と同じくらい有名なイノシシ料理が、豚汁ならぬ「猪汁(ししじる)」です! 冬場、猟から帰った猟師たちの胃袋と心を癒し、身体の芯から温めてくれたのが「猪汁」だったんです。作り方はほとんど豚汁一緒なので、こちらも味噌ベースですね。ごぼう、大根、人参、長ネギ、玉ねぎ、こんにゃく、イモ類、そしてイノシシ肉をだし汁でしっかり煮込み、味噌と醤油で味付けします。
■下処理はどうすればいいの?現役のハンター・猟師さんにきいてみた!
さて皆さん、私の原稿を読んでいたら、「イノシシ肉」食べてみたくなりませんか? 食べたいですよね。きっとそうに違いない(独断)。便利なもので、今どきはネット通販でもイノシシを購入することができます。ただし気を付けて頂きたい事があります。「ジビエ肉」に対して、法律の整備が行われてきたのはごく最近です。国はしっかりとジビエ肉の処理施設や取り扱いに対する一定の基準などを設けてきましたが、残念ながらいまだに国の許可を得ていない施設や業者の販売する『違法ジビエ』や『闇ジビエ』が流通しているようですので、安いからと言って、怪しい業者さんでは購入しないように気を付けましょう。
話が少しそれましたが、皆さんは「イノシシ肉」にどんなイメージを持っていますか?くさい? かたい? 野山を駆け回るイノシシですからね。筋肉が発達していて多少のかたさはあるかもしれませんが、それは身が引き締まっているという事です。匂いについてですが、私は新鮮で、きちんと処理のされているお肉は臭いと感じたことが無いのですが、家畜と比べて野生のイノシシは食べているものが違います。育った環境、食べているもので個体に差が出てくるのでしょう。それが「くさい」と感じる方がいるのかもしれません。という事で、現役のハンターさんや猟師さんがお肉の下処理をどうしているのか聞いてきました! 皆さんそれぞれやり方が違うようですが、是非、参考にしてみてくださいね!
〈イノシシの下処理・臭み抜き〉
・塩水を入れたボウルの中で5~6回もみ洗い。
・水1、酒1を入れたボウルの中に一晩漬け込み、よくすすいでから調理。
この他漬け込むものは、炭酸水、生姜牛乳、ヨーグルト、塩こうじ、味噌、すりおろしリンゴ、レモン汁、ハーブ、スパイス、焼肉のたれ……などなど。皆さんそれぞれ工夫を凝らしているようです。
■おしゃれ!? 海外でも食べられるイノシシ
イノシシ肉を食べるのは、なにも日本だけではありません。実はドイツやフランスなどでもヨーロッパの国々でも、イノシシ肉は重宝されているんです。ではその料理方法を見てみましょう。
【ロースト】(ドイツ)
ドイツでもイノシシ肉はジビエとして一般的に食されていて、特に1歳未満の子イノシシは「Frischling(フレッシュリング/ウリ坊)」と呼ばれ最高の味として人気があります。ドイツのイノシシ料理はとても色彩豊かで、マリネ液に、エシャレットやパセリ、ハーブ等と一緒にイノシシ肉を24時間ほど漬け込み、バターで表面を焦がした後に、さらにマリネ液に赤ワインを足して、中に火が通るまで煮ていくようです。ドイツビールで乾杯ッ!
ちなみにドイツでも害獣被害を何とかして地域貢献をしたい! といった方たちが立ち上がり、狩猟免許保持者が急増しているとの事。1989年には311257人だった免許保持者が、2014年には374084人と、約6万人も増えています!(参:ドイツ狩猟協会)
【超高級フランス料理】(フランス)
本来フランスでは、“ジビエ”は上流階級の特権、超高級料理でした。なぜならば、狩猟とは“自分の領地”を持っている貴族が行うものだったからです。今でもトリュフやオマールブルーと並ぶ季節の高級食材には変わりはないようですが、昔と比べたらだいぶ一般家庭にも普及してきました。
【豪快イノシシのスペアリブ】(オーストラリア)
オーストラリアではイノシシや、シカのほか、ワニやカンガルーなどもジビエとして広く食されているようです。シチューにするのが一般的だそうですが、私が目を引いたのは、山盛りフライドポテトの上にドッガーーーン! と乗ったイノシシのスペアリブ。シンプルイズベスト。骨が付いたままの塊肉に塩コショウで豪快に味付けをし、こんがり焼いていきます。これはビールが進みそうですねぇ……! また、ソーセージに加工して食べる事も多いそうです。そういえば、子どものころにオーストラリア旅行に行ったことがあるのですが、その時は「カンガルー」のジャーキーを食べましたよ。癖が無くて、日本のジャーキーと比べたら柔らかかったのを覚えています。
【その他】
このほか調べていくうちに、海外で食べられるジビエの種類の豊富さに驚きました。バイソン、エミュー、リス、ヌートリア、アルマジロ、サル、ザリガニ、亀、蛇、カピパラ、犬、猫など……。
【終わりに】
今回は、各地に伝わるイノシシ料理や下処理法などについて綴らせて頂きました。次回は実際に私が調理したイノシシレシピについてお伝えさせて頂こうと思います。この連載を通して私の、私たちの想いが、少しでも誰かに繋がり、そして何かのお役に立てれば幸いです。