多重債務者の現実。それを「見続け、貸し続け、回収する」街金の現実。
日頃見えてこない生活金融の現場。『ぼく、街金やってます』の著者であり、現役街金経営者のテツクル氏の実話をもとにバラ色の20代から暗黒の20代後半へと変わるお話しをする。
債務者と債権者の壮絶なドラマをお届けします。
■怖い人がやってきた!
利息の支払いが遅れだしたEさんから「相談に行きたい」と電話がありました。
Eさんは50代の経営者。あまり儲かってないせいなのか、それともそういう性格なのかわかりませんが、ぱっとしない人です。いろいろぱっとしないので、利息の支払いもぱっとしません。
「あのさ、いつになったら払ってくれんの?」
「すいません、もう少し待って……」
「あのね、毎日その返事なんだけど」
「はあ……」
「もうさ、家売って返済してよ。できないなら競売……」
「あ、ああ、あの、借り換えます……借り換えして返済します!」
「あのね、もう借り換えできるところなんてないよ。わかってるでしょ?」
ぼくがすでに査定額いっぱいまで貸してるわけですから、借り換えなんかできるわけありません。ぼくから借りたときも、あちこちの街金に散々断られたのを忘れたんでしょうか。
「いえ、なんとかします……」
「もう返済期日過ぎてるんだから、ちゃんと遅延損害金の20%乗せて返してくれるんだよね?」
「……はい……」
「じゃあ、肩代わりしてくれる人、早く連れてきてよ。
担保の不動産に抵当権を設定しているので、競売を申立てすれば回収は簡単です。でも、申立てしてから回収が終わるまで、半年以上かかりますし、できることなら借り換えしてもらったほうが効率はいいんです。
「もしもし、テツクルさんですか?」
「はいはい、借り換え先見つかった?」
「はい……それで相談がありまして……」
「別にいいけど、何の相談なの?」
「いろいろとありまして……ちょっと知り合いも一緒に行くんで……お願いします……」
こういうときの「知り合い」はだいたい3パターンです。
❶変なブローカー(「わたしが責任持って借り換え先を探します」とEさんの代わりに言い訳をして、結局何も進展していないパターン)、❷弁護士や親族(圧力をかけるつもりが、ぼくは適法な経済行為しかしていないので、状況は変わらずすぐ帰るパターン)、そして、❸反社の人です。
Eさんと一緒に登場した知り合いの人は、誰が見ても反社のおじさんでした。白髪混じりの角刈りに、ダボダボスーツ。もろ昭和の「ザ・ヤクザ」です。
おじさん、上着を脱いでハンガーに掛けます。安っぽい白のシャツから透ける刺青。
名刺も出さずにぼくの前にどっかと座り、両腕を広げてテーブルに手を置きます。小指が欠損しています。全身で反社アピールです。
「あのーEさんとどういう関係です?」
「関係なんてなんでもいいだろが」
「いや、名前も関係も教えてもらえなきゃ、何を話していいかわかんないですよ」
「Eさんに金貸してるんだろ? 利息高くねえか?」
「いや、法定金利ですよ?」
「オレがEさんの借金肩代わりしてやるから、利息まけてくれよ」
おじさんもその世界にいた人ですから、駆け引きは慣れた様子。脅すような口調ではなく、穏やかではありますが、押しの強い言葉尻。
◼︎ロクオンデキマセンデシタ……
「いやーそれは無理すね」
「あんたがまけりゃ、すぐに肩代わりしてやるって言ってんだよ」
「いやいや、勘弁してくださいよ」
「オレがわざわざ話に来てんのに、おまえどんだけ大物なんだよ。あんまり無茶言ってると、金貸しできなくなっちゃうよ?」
Eさんはずっと下を向いたまま。
下手に出て言質取られても困るし、かといって激高させると収拾つかなくなる。
早く帰ってくれないかなと、のらりくらり話をかわしていると、ハンガーにかけてあったおじさんの上着から何か声が聞こえてきます。
「ロクオンデキマセンデシタ……ロクオンデキマセンデシタ……」
おじさんの上着の内ポケットに入れられていたスマホが発する機械的な音声
「あのー、上着がしゃべってますけど」
「あぁ⁉ む、ん……」
おじさんは慌ててポケットからスマホを取り出し、必死に音声を止めようとしますが、スマホはしゃべりつづけます。会話の中で、ぼくから言質を取り、後々使うつもりだったのでしょうか。でも、録音失敗です。
「すいません、もう帰ってもらえません? 無理なもんは無理なんで」
「おい、ちょっと、ま……」
手からすべり落ちたスマホを拾い、
「また来るからな」と捨てゼリフで帰るおじさんと、慌ててあとを追うEさん。
部屋を出ていったふたりが別れたあたりを見計らって、Eさんに電話しました。
「ちょっと、いまの誰?」
「す、すいません……知り合いに紹介されて。
「あのね、Eさん、あのおじさんだってタダで動いてくれるわけないんだからさ、おじさんにも手数料取られちゃうんだよ? Eさん、わかってる?」
「……それは……まあ……」
「もうさ、変な人に相談したりしないで、ちゃんと話しようよ。うちだって取立てするだけが仕事じゃないんだから。返済方法、一緒に考えようよ」
「はい……ありがとうございます……」
結局、Eさんはおじさんにしっかり手数料を取られ、自宅も売ることに。
ぼくは無事に回収できました。反社と付き合ったり、何かをお願いしても、いいことは何もありません。食いものにされるだけです。甘い話や優しい言葉をかけられても、最後は必ず牙をむいてきます。
街金の取立ては口うるさいですけど、決まった利息と遅延損害金以外は取られないんです。
あなたはどちらを選びますか?
![LDK (エル・ディー・ケー) 2024年10月号 [雑誌]](https://m.media-amazon.com/images/I/61-wQA+eveL._SL500_.jpg)
![Casa BRUTUS(カーサ ブルータス) 2024年 10月号[日本のBESTデザインホテル100]](https://m.media-amazon.com/images/I/31FtYkIUPEL._SL500_.jpg)
![LDK (エル・ディー・ケー) 2024年9月号 [雑誌]](https://m.media-amazon.com/images/I/51W6QgeZ2hL._SL500_.jpg)




![シービージャパン(CB JAPAN) ステンレスマグ [真空断熱 2層構造 460ml] + インナーカップ [食洗機対応 380ml] セット モカ ゴーマグカップセットM コンビニ コーヒーカップ CAFE GOMUG](https://m.media-amazon.com/images/I/31sVcj+-HCL._SL500_.jpg)



