米国大統領選で勝利を確実にした民主党候補のバイデン氏。来年1月20日には就任する見通しだ。
■「私たちが見させられている全ては〇〇の陰謀による虚像。真実は△△だ」というタイプの主張が蔓延(はびこ)る理由
アメリカ大統領選をめぐって、トランプ大統領の敗北を認めず、アメリカのマスコミと民主党がグルになっているとする陰謀論が、ネット上で広がっている。実際にトランプ氏を支持する運動をし、彼に投票したアメリカ人の間で広がるのならまだ理解できるが、日本のネット媒体、ヤフーコメやツイッターでそうした主張がかなり目立つ。
どうして彼らは、このような陰謀論に乗ってしまうのか、何が彼らを惹きつけているのか。
大統領絡み陰謀論に共通しているのは、CNN、NBC、CBS、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストなどの左派傾向のあるマスメディア(+Fox)の報道は、全てフェイクであり、信頼できるのは、トランプ氏自身と彼に絶対忠実な最側近、及び、トランプ勝利を伝えるローカル・メディアやネット上の情報サイトだというスタンスだ。
主要メディアが、トランプ氏に不利な情報を伝えると、必ず、「追いつめられているのはバイデンの方だ」「ここで“勝たない”と逮捕されるからバイデンは必死だ」「既にバイデン陣営の大規模な不正が明らかにされ、当局による捜査が始まっているのに、CNNなどに追随している日本のマスごみは、周回遅れだ」、といった情報をどこからか拾ってきて、コメント欄やツイッターで拡散する。
彼らは、そうした全マスコミ挙げてのトランプ叩き、バイデン上げの工作が行われている背景として、これまでリベラル利権をむさぼってきた民主党が組織を挙げて最後の悪あがきをしているとか、中国が自分たちに都合の良いバイデンを大統領に据えて、世界の完全支配を狙っている、などと主張する。
そうした巨大な力が働いているから、自分たち以外の人には真実が見えていない、あるいは、分かっているのに現実から目を背けている、という。
アメリカ政権の中枢に関わる陰謀説は、テンプル騎士団≒フリーメーソンやユダヤ系財閥の暗躍、ケネディ暗殺の真の黒幕など、かなり古くからある。ロズウェル事件の真実のようなオカルトの領域に属するものもある。比較的新しいものとしては、二〇〇一年の九・一一テロ事件は、中東の完全支配あるいは石油利権の確保をもくろむブッシュ政権+ネオコンの自作自演だとする説があった。
これらのものと、今回の大統領選をめぐるものが違うのは、保守系のものも含めてマスメディアが伝えているのとは違う“客観的事実”を自分たちが知っていることを、論証する余地のない自明の理として発言している人が多数を占めることである。
フリーメーソンの陰謀について語るのであれば、世の中の多数派がなかなか真に受けてくれないことを予想して、どうして自分がその“事実”を知り得たか説明しようとするのが普通だが、大統領選の陰謀論者たちは、その必要は一切ない、説明を求める方が頭がおかしい、と言わんばかりの語り方をする。
■当事者でもない日本のトランプ・ファンが陰謀論を語りたがるのはなぜか?
トランプ氏をどうしても再選させたい熱心なアメリカ人の支持者であれば、政治闘争の当事者でもあるので、弱腰を見せないために断言調の語り口になるのは、ある意味、当然だろう。
しかし、当事者でもない日本のトランプ・ファンが、自分たちだけ“客観的事実”を知っているように語るのは、非常に奇妙である。
トランプ・ファンでない人間からすれば、
――という当然の疑問を抱くところである。日本のトランプ・ファンには、それが当然の疑問ではなく、バイデン信者の言いがかりに思えるようである。そうした、いかにも話の通じなさそうな雰囲気が、ファンでない人間には、気持ち悪く感じられる。
■一九九九年のライフスペース事件(成田ミイラ化遺体事件)と似た奇妙さ
私がこれと同じ種類の気持ち悪さを最初に感じたのは、保護責任者遺棄致死が問題になった一九九九年のライフスペース事件(成田ミイラ化遺体事件)の際である。
セミナーで、シャクティパットというヒンドゥー教由来の用語が使われ、代表が「グル」と呼ばれていたことから、九五年に一斉捜査を受けたオウム真理教との関連が取り沙汰されたが、私は、オウム真理教のスポークスマンたちと、このセミナーの代表の語り口は異質だと感じた。
前者の語り口にもそれなりの気持ち悪さがあったが、彼らは自分たちが世間からヘンな人たちと思われていて、自分たちの言い分が受け入れられそうにないことは自覚しているふうで、その違いを前提にして、自分たちの言い分を正当化しようとしているように見えた。それに対してライフスペースの代表は、定説なので説明の必要はないという態度を取り続け、記者たちからどう言われても、何も感じてない様子であった。
オウム真理教の人々は自分たちが宗教団体だと自覚していたようだが、ライフスペースは報道からすると、かなり宗教めいた団体だが、そう自称していなかった。「定説」というのは、学者が使う言葉である。本人たちが、宗教ではなく、科学的な営みだと思ってやっているように見えるところに、ライフスペースの気持ち悪さがあったのだと思う。
■「インターネットの普及は情報リテラシーを高める」という妄信
ライフスペース問題自体は、インターネットとは直接的に関わりなかったようだが、九九年は日本でインターネットが普及し、普通の人が気軽に利用するようになった時期である。当時、双方向的な媒体であるインターネットは、マスコミによる一方的な情報伝達と違って、一般の人々の情報リテラシーを高め、物事を複合的・客観的に見ることができる、真の自立した主体にする、という楽観論が啓蒙的知識人たちによって語られていた。
しかし各種の情報発信・交換媒体が発達し、様々な情報がネット空間を飛び交うようになると、自分は、他の人たちが知らない“客観的情報”をネットを通じて入手した、と豪語する人が徐々に増え始めた。その手の人々は、同じような考えの人々と意見交換できる特定のサイトに集まり、他のメディアの情報は受け付けなくなるので、余計に自分が得ている“情報”の真理性に対する確信を強めていく。アメリカの憲法学者キャス・サンスティーン(一九五四- )がサイバー・カスケードと呼んでいる現象である。
二〇一二年に民主党が内部分裂して、小沢一郎元幹事長が国民の生活が第一を結党して、更に、日本未来の党と合流して総選挙に臨んだ時、小沢ファンの人たちは、新聞やテレビの選挙予測を信じず、小沢さんには、自民党を破る秘策があると、ネットで喧伝していた。
その後、数年間、彼らは政局になりそうな出来事があるごとに、「自民と結託したマスコミが小沢さんを葬ろうとしているせいで、日本は悲惨な状況になっている」「でも、小沢さんには逆転の秘策がある」、と言い続けた。国民の大多数はマスコミに欺かれているにもかかわらず、彼らには何故か日本の政治の“真の姿”が見えていたようだ。
今回のトランプ・ファンの先駆けのような物言いが目立った。
■小沢一郎、小保方晴子、トランプ大統領を教祖化する人々
二〇一四年のSTAP細胞問題の時も同じような言動の人たちが登場した。分子生物学や基礎医学の専門家が、公表された論文通りのやり方ではSTAP細胞を再現できないことを示したにもかかわらず、ファンの人たちは、海外のサイトから“情報”を仕入れてきて、「STAP細胞の存在は海外の研究者によって証明されているのに、日本人は騙されている」「小保方さんを潰す陰謀のせいで、国益が大きく損なわれている」、と自信満々に語っていた。
小保方さんを支持する自分たちこそ、分子生物学の最先端を分かっている人間であるかのように。
現在進行中のコロナ問題も含めて、その領域の専門家でも意見が分かれるような問題で、“並みの専門家を越える知識”を誇るネット論客がしばしば登場するが、小沢さんとか小保方さんのようなカリスマが脚光を浴びると、そこに、教祖にどこまでもついていこうとする教団のような雰囲気が加わってくる。
多角的に情報を収集できるはずのネット社会で、どうしてこうした擬似宗教的なクラスターが発生するのか。
エーリヒ・フロム的に言えば、普通の人間には、何を信じるべきか自分で決めねばならない自由が、本当のところ耐えがたいからである。現代社会に生きる我々は、「マスコミや政府が発する一面的な情報を信じるな。ネットを駆使して、自分で真実を探れ!」、と絶えず“啓蒙”されている。
それをビジネスにしている人たちも少なくない。オウム真理教のアルマゲドンの言説やライフスペースの「定説」も、そうした“啓蒙ビジネス”の先駆だったのかもしれない。
自分たちだけが、他の人々に先駆けて、特別に“真実”を知っていると言われると、選民意識を刺激され、神の全能に近付いたような気分になる人がいる。しかし、自分独自の情報収集だと、自信が持てないので、いざという時に寄りかかれる絶対的な権威が欲しくなる。ただし、宗教は非合理的な人間が依存するものだという先入観と自分は合理的な人間だというプライドがあるので、露骨な教祖様に従うことには抵抗感もある。
そういう人にとっては、日本の政界の表も裏も知り尽くしている小沢さん、ビジネスマン出身の大統領としてアメリカ社会の闇を知り尽くし、中国の野望をうち砕いてきたトランプ大統領、ハーバード大学に留学し、若くしてノーベル賞級の論文を《Nature》誌に発表した小保方さんのようなキャラは、一番落ち着きがいい権威なのだろう。だから、一度信じたら、なかなか疑えない。ようやく見つけた“客観的権威”を失ったら、どちらを向いたらいいか分からなくなるからだ。
■“客観的権威”の妄信はどうしたら克服できるのか?
こうした“客観的権威”の妄信はどうしたら克服できるのか?
誰にでもすぐ効く処方箋などあるはずないし、そういうものがあるという発想自体が転倒している。ただ、自分にそういう傾向があると自覚している人が、念頭においておくと、多少有益だと思えるポイントはいくつかある。
第一に、ネットの発達によって様々な情報を入手できるようになったのは確かだが、自分の情報収集・処理能力には限界があり、全ての問題に精通することはできないし、ある特定の領域に限っても、一〇〇%確実な情報を得ることなどできないことを、絶えず思い出すこと。“ネットを通じて真実が見えてきた”、という気がしたら、危険な兆候だと思うべきである。
第二に、全てのことについて正しい判断ができる人間などいないこと、たとえいたとしても、誰がそういう人か見分ける能力が自分にはないことを、絶えず思い出すこと。そのような権威を求めているとしたら、自分は教祖を求めているのだと自覚すること。
第三に、既存の情報を批判的に吟味する姿勢を持とうとするのであれば、その姿勢を中途半端なところで放棄しないこと。全てを疑う姿勢を保持しようとすれば、相当な労力が必要である。生半可な決意で疑っていると、途中で疲れてしまって、「これだけ疑ってきたのだから、私には真実を見抜ける批判的な視座が身に付いたはず」、と思いたくなる。それが間違いの元である。
第四に、ある情報ソースについて、一〇〇%信じるか、全て嘘だと決めつける、オール・オア・ナッシング的な態度を捨てること。「〇〇の問題については、△△の条件を満たす専門家あるいはメディアの見解を、□□という限定付きで、取りあえず信用する」という是々非々の姿勢を徹底すること。加えて、自分の拠って立つ〇〇、△△、□□は、できるだけ明確に言語化し、他人に説明できるように準備しておくこと。説明できないものを信用しているのに、自分は信者ではないと思っているとしたら、かなり危険である。
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