■教育現場の非正規教員が増加している
非正規雇用の増加がデフォルト化している。1995年5月に当時の日経連(日本経営者団体連盟、現・日本経済団体連合会)が報告書『新時代の「日本的経営」−挑戦すべき方向とその具体策』を発表し、ここで提示された「雇用ポートフォリオ」が注目を集めた。
もっとも、この報告書で正規の雇用を最小限に抑えるという考えが初めて登場したわけではない。バブル経済崩壊後の状況に苦しんでいた経営者たちは、どうやって人件費を減らすかに頭を悩ませていた。そして、その解決策は「正規雇用を減らして、非正規雇用を増やすこと」だと誰もが気づいていた。しかし、それまでの雇用慣習があって正規雇用を減らすことにためらいがあった。
そこに登場してきたのが『新時代の「日本的経営」』だ。これが、正規雇用を減らして非正規雇用を増やす「免罪符」となった。ここから経営者たちは、非正規雇用を増やすことに積極的になっていくのだ。
非正規雇用は正規雇用にくらべてランニングコストが安価なだけではなく、経営環境が厳しくなってきたときに解雇することで、生産調整とコスト調整の両方を実現する役割も果たす。いわば「調整弁」的な役割を果たす存在であり、経営者にとってはすこぶる都合のいい存在である。
2020年2月に総務省統計局が発表した「労働力調査 2019年(令和元年)平均(速報)」によれば、2019年平均の正規の職員・従業員数の前年からの増加は18万人である。これに対して非正規は45万人増となっている。
この流れは学校現場にもあてはまる。都道府県によって違いはあるが、「4人に1人が非正規教員」という状態になっている地域も少なくない。非正規といっても正規と同様に過剰労働を押し付けられる教員の状況は同じであり、残業も強いられている。しかし、正規と同様に残業代が支払われていないのが実態だ。
非正規の賃金は、正規にくらべて低い。それにも関わらず、残業代も支払われないのでは、まさに二重苦である。
■名古屋市教員の申告による変化
そこに、「風穴」が開いた。
『中日新聞』(2020年11月19日付Web版)は、「時間外労働、改善に風穴 市立中非常勤未払い賃金支給へ」という記事を載せている。
名古屋市立中学校で昨年度、中学3年と特別支援学級の社会科を担当していた非正規教員(非常勤講師)が、残業代の支払いを市教育委員会に求める申告を労働基準監督署に行った。それが認められたのだ。
その非正規教員は「給料がもらえる時間数の2倍」働いたとしても、残業が認められることはなかったという。
残業しても、それが把握されない仕組みになっていたのだ。これについて市教委は、労基署の是正勧告を受けて今年度から改善したという。ただし、「始業と終業時刻を印字した『勤務時間確認書』に、非常勤講師に押印させる運用にとどまる」のだと『中日新聞』の記事は伝えている。
正規教員のようにタイムカードでの労働時間把握ではないのだ。物理的には、勤務時間確認書によって、勤務時間を操作することも可能になりそうだ。
そうなれば抗議すればいい、という単純なものでもない。非正規教員の話を聞いていると、「文句の言えない雰囲気」といった表現がよくでてくるからだ。
■教員は「点」を「面」へと変えられるか
非正規の場合、雇用期間が決められている。校長や教委に「次の雇用はない」と言われてしまえば、それでお終いなのだ。継続して雇用してもらうためには、校長や教委の機嫌を損ねてはいけない。だから、不満があっても文句は言えない、という。
そんな雰囲気の中では、勤務時間確認書と実際の勤務時間が違っていても指摘しにくい。言われるまま、残業していてもサービス残業になってしまう勤務時間確認書に押印するしかないのではないだろうか。
今回、市教委は未払い賃金の支払いに応じたものの、それを全ての非常勤に適用するつもりはないようだ。『中日新聞』の記事は、「市教委は他の非常勤講師の労働実態については申し出がない限り調査しない考えだ」と伝えている。
非正規教員から申し出がなければ、市教委が積極的に調べて未払い賃金の支払いはしない、というわけだ。非正規が「文句の言えない雰囲気」の状況を、市教委は見抜いているのかもしれない。
雇用継続を優先して、申し出をする非正規は少ない可能性が高い。支出増につながる積極的な調査もしない。
1人の非常勤講師(非正規教員)が労基署に申告することで、たしかに「風穴」が開いた。ただし放っておけば、穴はふさがってしまうだろう。
この穴を広げ、時間外労働への対価、つまり残業代が支払われる「まっとうな状況」にしていくためには、非正規からの申し出がどんどん行えるようにしなくてはならない。非正規が「調整弁」で終わらない、第一歩かもしれない。
名古屋市の場合でいえば、まずは勤務時間確認書に言われるままに押印しないことではないだろうか。正確な勤務時間と合致していることを確認したうえで押印する覚悟が必要になる。
それとて、「文句の言えない雰囲気」のなかでは簡単なことではない。1人や2人だけがやっても、孤立させられ、潰されてしまいかねない。そうならないためには、非正規のまとまりが必要になってくる。
非正規だけの問題ではない。不正確な勤務時間確認書には異を唱えて訂正させいく環境づくりには、正規も積極的に関心をもつことが欠かせない。
■オール教員で「定額働かせ放題」を変える
正規教員のなかには、「非正規の問題は自分たちには関係ない」とする声があるかもしれない。それは正規と非正規の「分断」につながるし、教委をはじめ管理する側には都合のいい状態でもある。経済界でも、分断が非正規が増えていく要因にもなっている。不満を大きくせずに、抑えられるからだ。
「風穴」が名古屋市だけでなく全国的に広がっていけば、それは正規教員の待遇にも影響してくるはずである。
そうした声が、教員の「定額働かせ放題」を変えていく第一歩になるだろう。それは社会全体の非正規問題にも大きな影響となっていくはずだ。そのためにも、名古屋市の「風穴」を大きく広げていく動きを止めてはいけないのではないだろうか。
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