「誰も本当のことを言わないから、ブスで馬鹿な私が本当のことを言う!」と元祖リバータリアン(超個人主義的自由主義)でアイン・ランド研究の第一人者である作家・藤森かよこ氏がペンで立ち上がった。
 氏のものした『『馬鹿ブス貧乏で生きるしかないあなたに愛をこめて書いたので読んでください。

(KKベストセラーズ)は4刷を超え(以下、「馬鹿ブス貧乏」と表記)、多くの女性を勇気づけた「革命の書」である。アラフォー読者からの要請が殺到。今月21日より、第2弾『馬鹿ブス貧乏な私たちを待つ ろくでもない近未来を迎え撃つために書いたので読んでください。が出版される。
 そこで、今回、藤森氏のご厚意に預かり『馬鹿ブス貧乏』の長いまえがきから第1章まで再構成し、「若いほど」役立つと低スペック女子が37歳までにやるべき本当のことを転連載で教えてくれる。まさに「馬鹿ブス貧乏」で生きるしかない女性が最高に幸せになる本当のサバイバル術である!



■心を守る読書

読書こそ「領域展開」理不尽で不可解なことが起きがちな現実の世...の画像はこちら >>





 読書は、あなたの国語能力を高めてくれると同時に、理不尽で不可解なことが起きがちな現実の世界からあなたを守るバリアにもなってくれる。



 ブスで馬鹿で貧乏なあなたは傷つきやすい。そんなあなたに読書の習慣がないと、あなたはむき出しの無防備な状態で、ときに残酷な様相を見せる世界に対峙(たいじ)するはめになる。



 2014年にアメリカで興味深い本が出版された。モリー・グプティル・マニングのWhen Books Went to War: The Stories That Helped Us Win World War IIだ。日本では、『戦地の図書館——海を越えた一億四千万冊』(松尾恭子訳、東京創元社、2016年)という題名で出版された。



 この本は、第二次世界大戦中のアメリカ政府が戦地の兵士に送った書籍が、いかに兵士たちの心の糧となり、兵士たちを支えたかを記録したものだ。



 全米の図書館員たちは、国民から寄付された本を戦場の兵士たちに贈る「戦勝図書運動」(Victory Book Campaign)を展開した。マンハッタンの五番街にあるニューヨーク公立図書館には市民から寄付された本が山積みにされ、それらは戦地に送られた。その数2000万冊。



 戦地の兵士のための「兵隊文庫」(Armed Services Edition)なるペーパーバックも創刊された。なんと1億2000万冊の兵隊文庫が供給された。



 20歳の海兵隊兵士は、戦場で自分の心が死んでしまったと感じていた。マラリアで 入院していたときに兵隊文庫の一冊を読んだ。すると自分の心に感情が復活し心が生き返ったのを感じた。その兵士は、その喜びと感謝を作家に書き送った。 戦地でのストレスと恐怖を忘れさせてくれるものとして、読書はもっとも簡便な方法 だった。兵隊文庫を軍服のポケットに突っ込んでいない兵士はほとんどいなかったとい う。徴兵され戦地に来て、初めて読書をするようになった兵士もいたという。



 常に集団生活の軍隊生活において、兵士が自分自身の世界を守る方法としても読書は機能した。読書は生産的な孤独というものを読者に提供する。



 この兵隊文庫というペーパーバックが、第二次世界大戦後のアメリカのペーパーバック隆盛の起源となった。廉価(れんか)なペーパーバックになった書物は、アメリカの中産階級の教養を形成した。



 死闘が繰り広げられた悲惨で過酷な戦場においても、読書は兵士の精神を守った。読書はあなたの心も守ってくれる。



 読書の効用は、癒やしと辛い現実からの建設的逃避だけではない。読書は、自分の状況を対象化することも教えてくれる。



 自分の状況を対象化するということは、もうひとりの自分が自分の状況を眺めるようなものだ。状況を俯瞰(ふかん)するということだ。これを「メタレベルに立つ」と言う。形而上(けいじじょう)的に考えるというのは、こういうことだ。



 自分の実体験や観察を認識し解釈するために、今まで読んできた物語や情報の中から自分の状況と似たような状況を見つけて比較することができるのも、読書の効用だ。



 ブスで馬鹿で貧乏なあなたこそ、読書を習慣にしないと、サバイバルできない。あなたは米軍兵士ではないので、政府から無料で兵隊文庫が供給されるわけではないが、その代わりに無料で書籍を貸し出してくれる公立図書館は日本のどの町にもある。古書ならば安く入手できる。





■税金と社会保険について学ぶ

読書こそ「領域展開」理不尽で不可解なことが起きがちな現実の世界からあなたを守るバリアにもなる(藤森かよこ【馬鹿ブス貧乏】㉕)



 心を守る読書と平行して、この社会の仕組みを知るために、「税金の本」と「社会保険の本」を、私はあなたに読んでもらいたい。このテーマの本は、いくらでも書店に並んでいるので、テキトーに選んでください。手っ取り早く、あなたが生きる社会の仕組みを知りたいならば、税金と社会保険の知識はマストだ。



 あなたが起業しているとか、ハンドメイドのものを売っているとかでなく、賃金労働をしているのならば、どんなに低賃金であっても、あなたの賃金からは前もって所得税が差っぴかれている。これを源泉徴収(げんせんちょうしゅう)と呼ぶ。



 極めて低収入の場合は確定申告をすれば、源泉徴収されたお金が返金(還付(かんぷ))される。低収入のくせに寄付すれば、寄付した金額は収入から控除(こうじょ)され、収入から源泉徴収されていたお金の何がしかは、やはり返金される。



 ただし、駅前のよくわからない街頭募金に寄付しても控除されない。

税務署が認めた組織でなければ、寄付したとは認められない。



 不思議なことだが、小学校でも中学校でも、税金や社会保険の仕組みについて詳しく教えない。国語の時間には、税や社会保険に関する法律文を読んで理解できる訓練をしてもらいたいものだと、ずっと私は思ってきた。



 そうしたら、2020年度から高校の国語の科目構成が変わると聞いた。文学作品に偏らない多様な文章を理解し、論理的に自分の思考を表現する能力を養う「論理国語」という科目が新設されるそうだ。



 高校からといわずに、小学校からでも、法律文や、いわゆる「霞ヶ関(かすみがせき)文学」(霞ヶ関の中央官庁の公式文書の作文)を音読すると、お役所文書の故意の難解さ曖昧(あいまい)さ意味不明さに耐性(たいせい)ができるのではないか。



 小学生のときに、税金や社会保険の仕組みをしっかり学べば、国民から収奪した税金と呼ばれるカネを、もっとも効果的に無駄なく使用されるように配分し監視することが政府のすべきことであると理解できる。本来ならば。



 さらに、国民健康保険や国民年金や厚生年金なるものは保険であって、その保険の掛け金は、被雇用者ならば、将来の自分の毎月の給与からあらかじめ差し引かれ、積み立てられ、病気のときや、高齢期には、そのカネが使えるので、ちゃんと働いて保険の掛け金を払えるようになろうと思えるはずだ。



 さらには、途中解約できないし、解約しても解約返戻金(へんれいきん)が出ない保険は保険とは言わないから、日本の社会保険は、「保険」ではなく、「税金」の別名であることもわかる。



 将来的には年金制度が破綻すると危惧されているが、それは少子高齢化だけが原因ではない。積み立てられていた年金原資を、天下り先の機関設立のためであれ、運用であれ、役人が流用したことも原因のひとつだ。



 しかし、つくづく私は思う。「税」というものを考えついた人間は天才だ。税でしかないのに、「社会保険」と呼ぶことを思いついた人間も天才だ。人間の悪知恵の限界のなさには、ほとほと感心するというより感動する。



 こういうからくりも小学生の頃に知っておくと、政府や役所に依存的になることもないだろう。



 社会は、勝手に自然に動いているのではなく、人間が作った仕組み(システム)によって運営されている。つまり、人間によって変えることができる。変えることができないものなど、人間の世の中のルールにはない。



 このような基本的なことは小学校時代に徹底的に理解しておくべきことだ。しかし、日本の初等教育の不備のために、つまりは日本の民度の低さのために、あなたは青春期になって、あらためて独学自習しなければならない。



 でも遅過ぎることはない。自分の給与明細書(めいさいしょ)をじっと見つめながら、税と社会保険について学ぼう。



 加えて、法治国家の日本国の骨組みである法についても学べれば理想的だ。大学の法学部に行かずとも、法を学べば、知識は力なりという言葉の意味を実感できる。



 たとえ、「法の下の平等」が建前(たてまえ)でしかないにしても、人間は建前という法に則(のっと)った正論を主張して戦うしかないのだから。



(第26回につづく『馬鹿ブス貧乏で生きるしかないあなたに愛をこめて書いたので読んでください。』より再構成)

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