残すところあと1週間も切った2020年。
新しい年を迎える上でやっておきたいことは、家の掃除だ。
でも、中高年にとっていまから始めたいことは家財の整理だ。
この年の瀬に、『一個人』編集部は、50歳からの人生のあり方、とくに思い出のつまったモノとの上手な「お片づけ」について提案していきたいと思います。
◼︎家財整理は「捨てる」から「つなぐ」へ
人生100年時代、50代は後半戦のはじまり。
この後半生を楽しく過ごすには、自分の暮らしの家財と向き合い、その思い出のつまった品々を上手に片付けていくことも大事。
世間では断捨離、ときめきのお片づけ、ミニマリズムなどの整理術の流行は依然として続き、しかし、ともすればやみくもに「捨てる」ことを目的化していることも散見される。
効率的、合理的であることはもちろん重要だ。でも、モノとの関係、購入した動機など「思い出」として振り返ったとき、モノを「捨てる」ことから「つなぐ」こと、すなわちモノに込められた思いを、誰かに伝え、つなげていく発想の転換も必要かもしれない。
モノを大事にする心がけは、持続可能な社会の理念(SDGs)としてもより大切な考え方だろう。
とはいえ、50年間生きてきた家には、明らかに不用品となっているものも確かだろう。とくに、親子2世代、3世代とつながる家族の場合、ご両親の終末を境に、不動産の売却にともなう転居、あるいは建て替えなどで家財を処分されることも少なくないだろう。
では、その家財整理をどのように行えば、スッキリできるものとなるのか。
家財というモノに込められた思い出や宝物の価値を「捨てず」に、それを「欲しい」と願う誰かのために「つなぐ」ことはできるのか。

◼︎家財整理は3つのライフ(生活・命・人生)から「つなぐ」を導く

「モノを断捨離するということは、いままでの暮らしに対する否定から入るイメージだと思うのです。でも、私は「肯定」から考えることはできないかと、ずっと思っていました」
竹本氏は、家財整理についてまず、一般論として「整理」についての以下のエッセンスは重要だと語る。
●いま使わないモノは一生使わない可能性がある(道具除く)
●収納スペース以上のモノは暮らしの動きを損ねる
●モノを購入した分だけ捨てなければモノは増えていく悪循環
「で、多くの整理術は、こうしたことをネガティブにとらえて、では捨てましょうということになると思うんです。あるいは、モノを所有する意味や、モノが増える原因と向き合うことを勧めて、捨てることの正当化を示唆する。これは概ね正しいと思うのですが、しかし、そこにモノを所有しようとしたときの『人』の想い、動機ということを考えた時、やはりその想いは、尊重されるべきだと思うのです」(竹本氏)
なので、こうした一般論をもう少し深く掘り下げると、違う行動パターンが見えてくると竹本氏は言う。
●いま使わないモノでも大切なモノはある。
●収納スペース以上のモノでも価値のあるモノはある。
●増えたモノで不要となったモノでも、欲しい人はいる。
「リサイクルの発想とつながっているのですが、大切であり、価値あるモノであっても持ち主様にとって不要なモノになったとしたら処分されるべきモノです。しかし、他のお客様にとってそれが必要とされるモノは、売れる価値があるモノです。ですから、買取査定などをすることで『捨てる』から『つなぐ』へと、持ち主様のモノへの大切な想いを次世代の欲しい方へとつなぐことができるのです。
◼︎家財の中から眠っている価値のあるものを「つなぐ」
竹本氏の会社である「クオーレ(CUORE)」とは「心」という意味を表すイタリア語であり、「生活・命・人生」と3つの意味に当たる「LIFE」をサポートするところから家財整理や遺品、生前整理などのサービスを行っている。竹本氏によれば、家財整理と不用品処分についての「違い」をこう続ける。
「家財整理は、家族や周りの人に迷惑がかからないように『早め』に準備することだと思うのです。また、生活の面の要・不要からだけでなく、持ち主様の生命の証である大切な家財を、つなげるように配慮し、ご本人とご家族様の人生をサポートすることまで含むコーディネート(=つなぐ)だと思うのです。整理、片付けの要諦は、事前に準備をすることで、多くの家から排出される家財の中から「眠っていた価値のあるもの」をプロの鑑定士が査定し、しっかりと誰かの手に売り渡すことができます。すなわち、こうした準備する時間が大切なのです。多くの方が、ギリギリまで家財の処分を二の次にしてしまうと、最終的に買取などの選択肢を失いながら、高い費用で処分、廃棄してしまうケースが多いと思います。私たちの場合、買取できないモノの8割は、リサイクルにつなげるように心がけています」(竹本氏)
では、そうした家財が「高い費用で廃棄されている」現場について、考察していく。
(第2回は「家財整理」の現場について考えます)