■世界最高峰の藝大の技術「スーパークローン文化財」
バーミヤンE窟仏龕及び天井壁画《青の弥勒》 想定復元(2021年) 東京藝術大学COI拠点制作 /復元もと:アフガニスタン/スーパークローン文化財/幅592.5×高303.8㎝×奥392.9㎝ /東京藝術大学" />
足掛け2年にもわたるコロナ禍。いまだ予断を許さない状況ではあるものの、ワクチン接種による感染者の減少、そして緊急事態宣言解除にあたり、少しずつ私たちの移動の自由は回復され、外出の歓びに胸踊る日々かもしれない。
そこで、「今週末はどこへ行こうか」と思いながら、まだ予定が立っていない方々に、ぜひオススメしたい展覧会がある。それは、上野公園にある、東京藝術大学大学美術館で今月10日まで開催されている「みろく——終わりの彼方 弥勒の世界」である。
「みろく(弥勒)」とは釈迦入滅(お釈迦様が亡くなった)後、56億7000万年の時を経て、衆生を救済する未来仏である弥勒菩薩(マイトレーヤ)のこと。この弥勒を「救世主」とした弥勒信仰は、東アジアから日本にも広がり、親しまれた。この弥勒が、長い時を経ながら東アジアにどう広がっていったのか、
①ガンダーラ、②アフガニスタン、③西域・中国、そして④日本へ。
弥勒文化の伝承までのその長い歴史的「変化」を、いま、私たちが会場内を「歩き」ながら体感できる展覧会となっている。
弥勒菩薩坐像 2-3世紀/ガンダーラ、パキスタン 片岩/高62.0×37.0㎝/平山郁夫シルクロード美術館蔵" />
■世界最高峰の藝大の技術「スーパークローン文化財」
そしてなによりも、今回の展覧会での注目は、東京藝術大学が誇るスーパークローン文化財の技術。最新のテクノロジーでオリジナル(当時)の図像の色彩や質感を解析、再現すると同時に、世界最高の芸術力の粋を集めた東京藝大COI拠点Arts & Science LABのスタッフの「手仕事」によって時空を超えてオリジナルに迫る作品に仕上げた技術は、息を飲むほどに美しい。この技術をもって原寸大復元したバーミヤンE仏龕天井壁画《青の弥勒》、敦煌莫高窟第275窟交脚彌勒菩薩像を中心に、バーミヤン東大仏仏龕天井壁画《天翔ける太陽神》、法隆寺金堂9号壁「弥勒浄土図」を一堂に会し、藝大美術館所蔵作品も交え、弥勒の姿を見ていく。

■ここがすごい!そこに注目!! 制作者に聞いた
この展覧会の構成に基づく展示を現場で制作された日本画チームの林宏樹さんは、「文化の底流と図像の変遷が例えば、日本のブースにいても、ガンダーラの気配を感じることができるように、うまく空間で演出できたらいいなと思い制作しました。
同チームの林樹里さんは「制作で言えば、私たちは印刷、彩色のジャンルを担当するので、今回は色を合わせる、《青の弥勒》のラスピラズリ(瑠璃、青)だったり、オレンジ色を合わせることなどに苦労しました」。
色味は、ほんの繊細な感性で決まるため、デジタルで極限までオリジナルに近づけ、最後のニュアンスを手仕事で完成させる——ここに藝大のプロ魂の込められた仕事が宿っていた。
みろく-終わりの彼方 弥勒の世界-
会 場 東京藝術大学大学美術館3F
会 期 2021年9月11日(土)~10月10日(日)
休館日 月曜日、9月21日(火)※ただし9月20日(月・祝)は開館
開館時間 10時~17時(入館は閉館の30分前まで)
チケット情報 一般 1,000円 大学生 700円
※当日窓口販売のみ ※前売券の販売はありません
※高校生以下及び18歳未満、障がい者手帳をお持ちの方(介護者1名を含む)は無料
※本展は事前予約制ではありませんが、今後の状況により、変更及び入場制限等を実施する可能性があります。