■こうして歴史は捏造されていく



 面白いツイートを見つけた。ラノベ作家の百田尚樹先生の『日本国紀』が文庫化されたが、大阪東梅田の清風堂書店で、「歴史改ざんファンタジー」というポップと一緒に並べられていた。

これは百田先生に失礼。『ウォーリーをさがせ』に匹敵する間違い探し本の名著なのに。



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 冗談はさておき、ここまで嘘とデタラメばかりの本を出してしまうというのもある種の才能である。単行本では「初版から第9刷にかけて少なくとも50カ所以上の修正を重ねるお粗末さ」(「毎日新聞」12月16日)。しかも、重大な歴史的事実の誤りが文庫化でも修正されていなかったという。



 単行本が出たときはかなり話題になった。皇室の「男系」の説明もデタラメだし、内容も支離滅裂。織田信長は「一向一揆鎮圧の際も女性や子供を含む2万人を皆殺しにしている。これは日本の歴史上かつてない大虐殺である」と述べる一方で、「日本の歴史には、大虐殺もなければ宗教による悲惨な争いもない」。矛盾をツイッターで指摘されると、百田は「そういう文学的修辞が読み取れないバカがいるとは思わなかった」と返答。フランシスコ・ザビエルとルイス・フロイスを間違えていた件に関しては「どっちにしても外人や」。本を購入し、具体的に間違いを指摘してくれた人たちを罵倒するって……。



 さらにはウィキペディア、新聞記事や関連書籍、ネット上のまとめ記事からの膨大な無断引用が発覚。百田は「全体の1%にも満たない」と開き直ったが、そもそも量の問題ではない。指輪3個を盗んだ泥棒が取り調べで「1個だけだ!」とドヤ顔で言うようなものだ。なお、その後の検証でコピペとされる部分は3%に達している。



 人間は完璧な存在ではないので、間違ったことを書いてしまうことはある。そのときは謝罪して修正すればいいだけだ。しかし、 間違いを犯しても、開き直り、そのまま放置する。さらには、事故本を文庫化して売る。こうして歴史は捏造されていく。



 これは今の時代を象徴している事件でもある。事実と嘘の境界がなくなっていくのだ。



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 国の基幹統計である「建設工事受注動態統計」のデータを国土交通省が無断で書き換えていたことが発覚。

簡単に言えば、国家に対するテロである。国家とは記憶であるからだ。基幹統計とは公的統計の根幹をなす重要性の高い統計のこと。建設業の受注状況が8年前から実態より過大になっていたが、朝日新聞が入手した資料によると、国土交通省が都道府県の「建設工事受注動態統計」の担当者向けに配布した文書に「すべての数字を消す」「全ての調査票の受注高を足し上げる」とあった。



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 国の基幹統計をめぐっては、18年末に厚生労働省所管の「毎月勤労統計」が、決められた調査手法で集計されていなかったことが発覚。残念ながら、日本は近代国家としてはすでにぶっ壊れている。安倍政権下の財務省の公文書改竄、防衛省の日報隠蔽……。こうして歴史は捏造されていく。



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適菜収著『国賊論 安倍晋三と仲間たち』を参照。" />



 安倍晋三が維新の会の議員のパーティーで講演(11月29日)。



「トランプ大統領は北朝鮮から日本が攻撃を受けたら戦うが、日本はアメリカが攻撃を受けても黙って見ているだけなのは不公平。もっとお金を出さないと。

こんな調子なんで、いつも反論する。『だから平和安全法制を作って、日米を助け合える同盟に変えた。そのために私は10%も支持率を落とした』と言ったら、トランプ大統領からは『グレート! サムライだ』と言われた」



 こんな話を得意げに話す67歳児。人治国家か。政治の私物化そのものである。



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 さらには、トランプとのゴルフについて発言。



「なぜゴルフをするのか。北朝鮮からミサイルを撃ち込まれたら日本は打撃力がないから米大統領に電話して、『報復してくれ』と頼む。報復するかもしれないから北朝鮮はミサイルを打たない。私がトランプ大統領としょっちゅうゴルフをしたのは、こんなに仲がいいから『安倍が電話をしたらトランプは報復する』と抑止力のためにゴルフをやっていた」



 恥知らずの一言だ。ちなみに、安倍はトランプとのゴルフ中にバンカーですっ転び、その映像を見たトランプは「私は感動した。今まで見てきたどの体操選手よりも素晴らしかった」と感想を述べた。

これが安倍のゴルフ外交の結論である。







■悪徳マルチ商法と「ほら吹き」たち



 石原伸晃の一連の騒動もくだらないけど、面白かった。自身が代表を務める政治団体が雇用調整助成金を受給していた問題で内閣官房参与を辞任。その後、地元事務所の家賃を妻が代表取締役を務める企業に支出していることを「週刊文春」にすっぱ抜かれていた。雇用調整助成金も身内への「還流」もせこい話だが、もっとせこいのは、政治資金で花札とトランプの購入に計2481円を支出していたという話。大好物のアイスクリーム「ガリガリ君」を政治資金で買っていた安倍には負けるけどね。



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 維新の会の衆院議員伊東信久が、消費者庁から特定商取引法違反で取引停止命令を受けたマルチ商法の集会で少なくとも3回講演し、報酬を受け取っていたことが判明。集会を開いたのは「ITEC INTERNATIONAL(アイテック)で、「DDS マトリックスエキス」などの商品名で化粧品を販売していた。この団体は、会員の勧誘に際し、商品の製造元として著名な化粧品ブランドの工場を、共同研究先として複数の大学を挙げていたが、いずれも虚偽だった。



 悪徳マルチ商法の「ジャパンライフ」の広告塔だった安倍もそうだが、この類の連中は裏社会とかなり親和性がある。ちなみに、安倍主催の「桜を見る会」には安倍に近い統一教会の関連政治団体・世界戦略総合研究所の事務局次長や反社会勢力のメンバー、半グレ組織のトップらと共に「ジャパンライフ」の会長も招かれていた。



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 この狂った世の中。

恐竜のことにでも想いを馳せないと、おかしくなりそう。なお、発見されているセイスモサウルスは推定全長33メートルくらいだが、60メートル以上の恐竜はたくさんいたという説もある。60メートルというと、15階のビルと同じくらいだ。セイスモサウルスの体重は40トン前後なので、大型クレーン車と同じくらいである。



 なお、骨格化石の一部が発見された史上最大級と推定されているアルゼンチノサウルスは全長30~ 45メートル、体重は80~100トン以上と見積もられている。





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 先日、この隔週の時評で維新の会の礼賛記事が異様に増えていることを指摘したが、今度は《橋下徹氏、妻の誕生会で撮影した家族写真を公開…「お父さん、飲み過ぎです」「優しい旦那様」などの声》(「スポーツ報知」12月8日)だって。なお、橋下は女房の妊娠中にコスプレ不倫を繰り返し、それがばれると「娘に制服を着ろと言えなくなった」と発言した人物である。





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 維新の会の衆院議員杉本和巳の資金管理団体が、昨年、ほら貝の購入に約4万円、宗教法人の会費に約3万円を政治資金から支出していたことが判明。事務所は「選挙の出陣式で景気づけに吹くために買った」「練習をしたがいい音が出ず実際には使えなかった」と回答したとのこと。ほらを吹くのが専門の集団が、ほらを吹くことができなかったとは、これいかに。まずは、橋下徹、松井一郎、吉村洋文といったほら吹きの名手に学んではどうか。





文:適菜収

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