新型コロナウイルスのオミクロン株による急速な感染拡大、いわゆる第六波の勢いがなかなか止まりません。
沖縄・広島・山口には1月9日よりまん延防止等重点措置が適用されましたが、1月21日になると、東京、群馬、埼玉、千葉、神奈川、新潟、愛知、岐阜、三重、香川、長崎、熊本、宮崎の1都12県でも適用されることに。
1月27日、北海道、大阪府、京都府など1道2府15県が続きます。
2月5日にはさらに和歌山が加わる。
東京など1都12県の重点措置は2月13日までとなっているものの、これについても延長論が出ています(2月3日現在)。
オミクロンの感染拡大については、急速に進むかわり、収束も早いという予測がある。
「8割おじさん」こと、京都大学の西浦博教授もこの意見。
2020年、コロナ感染拡大の第一波が到来したとき、対人接触を8割減らすよう提唱したのでこう呼ばれます。
くだんの予測が正しければ、第六波は短期間の辛抱ですみそう。
ただしこれは、ピーク時のインパクトが強烈なものとなることも意味します。
西浦教授の表現ではありませんが、「ものすごい規模のものが一瞬でドンと訪れる」。
ついでに第六波が、コロナに関する従来の通念をくつがえした点も見過ごせません。
新しい感染症が広まったとき、人々がまず注目するのは、それによって死者がどれくらい出るか。
コロナで言えば、肺炎が重症化するリスク、ひいては肺炎で亡くなるリスクになります。
オミクロンは重症化率が低い。
ワクチン接種をすませ、効力が持続していればとくにそうです。
だったら感染が拡大したところで、重症者・死者の数は相対的に少なくてすむ。
これを根拠に「オミクロン、恐るるに足らず」とする主張が、わが国でもけっこう見られました。
重症化率が低いのは、ウイルスが毒性を弱めはじめたことの表れであり、すなわちパンデミック終息の兆しではないかとする見解も登場。
後者の見解は、じつは正しい可能性もあります。
けれども前者はみごとにハズれました。
重症化率が低いかわりに、オミクロンは感染力が強かったのです。
そして軽症者でも、症状によっては社会経済活動がしばらくできなくなってしまうんですね。
高熱が出たり、全身がだるくなったりするんですから。
無症状者や濃厚接触者であろうと、感染を拡大させないよう、一定期間の隔離は不可避。
毒性が弱まったところで、感染力が強ければ社会の基盤は揺らぐのです!
沖縄など1月18日の時点で、すでに綱渡り状態でした。
濃厚接触者にたいする行政のPCR検査が1週間待ちで、那覇市内の幼稚園や保育園の6分の1 は休園した(1月12日時点)と伝えられます。
「弱まった」と言っても、インフルエンザなどに比べれば、新型コロナはまだまだずっと危険。
それも呼吸器に限った話ではない。
「オミクロンのもとで経済を回す方法」で述べたとおり、軽症、ないし無症状の場合でも、心臓、腎臓、脳を含めた他の臓器に損傷を与えるリスクがあります。
要するにオミクロン、「毒性が弱まる=怖がらなくてよい(社会に与える影響は小さい)」という通念を否定したのですよ。
となると、パンデミックが終息に向かいだしても気は抜けないことに。
ウイルスのほうが、こちらより一枚上手(うわて)な感じですが・・・
人間も愚かではない。
感染急拡大にもビクともしない、最強のコロナ対策があるのです。
以下、ご紹介しましょう。
◆最強対策の前提と効能
この対策は、以下の前提を踏まえて成立します。
(1)コロナによる社会経済活動への被害、いわゆる「経済被害」は、感染拡大を抑え込もうとすることから生じる。感染拡大対策は、これらの活動への制限を必然的に伴うためである。
すなわち感染拡大による健康への被害(いわゆる「感染被害」)と経済被害の間には、一方を小さくしようとすると他方が大きくなるという、トレードオフの関係があることになります。
(2)感染被害は肺炎の重症化、さらには肺炎による死亡に集約される。軽症、ないし無症状の場合、感染被害も軽微か、そもそも存在しないと見なしてよい。
(3)感染拡大を抑え込もうとするのは、感染被害を小さくするためである。
一見するかぎり、どれも説得力があります。
これをオミクロンに当てはめると、どうなるか。
オミクロンは重症化率が低い。
よって前提2(感染被害は肺炎の重症化、さらには肺炎による死亡に集約される)にしたがい、感染被害は軽微となります。
この結論に前提3(感染拡大を抑え込もうとするのは、感染被害を小さくするため)を適用する。
感染被害が軽微である以上、抑え込む必要も少ない。
ワクチンのブースター接種を進めたり、症状に応じて治療薬を処方したりすれば十分でしょう。
さて真打ち、前提1です。
感染拡大を抑え込もうとすることから経済被害が生じるとすれば、オミクロンの流行による経済被害は小さく済んで当たり前。
重症化率が低い以上、感染被害は軽微に決まっているのです。
社会経済活動を制限する必要も少ないはずではありませんか。
ところが現実には、医療・介護はもとより、社会経済活動全体に重大な影響が出かねないと危惧されている。
経済被害が大きくなりそうなのです。
これは一体なぜなのか?
答えは明らかでしょう。
どのみち感染被害の小さいオミクロンにたいし、過剰な感染拡大対策を取っているから。
ゆえにそれらの対策を緩めれば、感染被害と経済被害の両方を小さく抑えることができる。
最強のコロナ対策とは、対策を緩めることだ!!
素晴らしく秀逸な発想です。
コストがかからず、効果抜群。
すでに政府は濃厚接触者の隔離期間を短縮しましたが、これも「医療や介護、さらには社会経済活動が逼迫するところまで追い詰められたあげくの苦肉の策」ではなく、「コロナを着実に克服しつつあることの表れ」となるでしょう。
けれども、いいことずくめはありえないのが世の常。
この対策も遺憾ながら欠点を抱えています。
ずばり言ってしまえば・・・
◆最後に残る「慰めの報酬」
最強対策を支える三つの前提は、すべて正しくないのですよ!
順番に見てゆけば以下のとおり。
(1)コロナによる経済被害は、感染を抑え込もうとしても生じるが、感染が拡大しても生じる。社会経済活動に参加できない者が増えるせいである。
感染被害と経済被害の間には、たしかにトレードオフの関係もあります。けれども新刊『感染の令和』に収録した「予言された疫病の記録」で詳細に論じたように、それが両者の関係のすべてではありません。
このため感染対策を緩めさえすれば、経済被害を小さくできるという保証もない。
緩めたことで被害が小さくなる側面と、緩めたことでかえって被害が大きくなる側面が存在します。
そして後者が前者を上回れば、最強対策は事態を悪化させる結果に終わるのです。
(2)コロナの感染被害を、肺炎の重症化、さらには肺炎による死亡に集約することはできない。したがって重症化率が低いことは、用心しなくても構わないことを意味しない。
すでに見たとおり、コロナは肺疾患に限定された病気ではありません。
「新型コロナウイルス呼吸器症候群(Coronavirus Respiratory Syndrome 2019, COVIRS-19)」ではなく、「新型コロナウイルス感染症(Coronavirus Disease 2019, COVID-19)」と呼ばれるのは、関連して意味深長。
ついでに感染力が強い場合、重症者が増えるまでもなく医療逼迫が起きてしまう。
「オミクロンのもとで社会の基盤が揺らぐ構造」でも指摘しましたが、感染したり、濃厚接触者になったりしたせいで、多くの医療従事者が欠勤せざるをえなくなるためです。
沖縄では1月13日の段階で、1000人近くの医療従事者が活動できなくなり、コロナ専用病床を減らす事態に追い込まれました。
(3)感染被害と経済被害の間にトレードオフのみが成立しているのではない以上、感染拡大を抑え込もうとするのは、感染被害を小さくするためでもあるが、経済被害を小さくするためでもある。
このような不都合な真実を無視して、最強対策を実践するとどうなるか?
感染拡大対策を緩めるのですから、当然ながら第六波を抑え込むのは難しくなる。
経済被害も悪化するか、少なくとも期待されるほどには小さくなりません。
これに対抗する手段はひとつ。
さらに感染拡大対策を緩めるのです!
すると当然ながら、第六波を抑え込むのはいっそう難しくなる。
経済被害もますます悪化するか、いよいよもって期待されるほどには小さくなりません。
これに対抗する手段はひとつ。
さらに感染拡大対策を・・・
あとは感染の波が収束するまで、感染被害と経済被害の双方に耐えるのみ。
ただし救いがないわけではない。
前提がすべて間違っているという現実さえ否認すれば、感染被害と経済被害がともに大きくなったところで「最強の対策を実践してもそうなのだから、これ以上、被害の規模を小さくすることはできなかった。仕方のないことなんだ」と言い訳できる。
「やるだけのことはやった」という次第。
実際には「やらないだけのことはやらなかった」なのですが、そのことに気づくようであれば、最初からこんな対策は取らないでしょう。
最強対策には、失敗したあとも「慰めの報酬」が残るのです!
言い換えれば、主観的には最後まで失敗を認めずにすむ。
人間の知恵とは偉大なものではありませんか。
もっとも感染被害と経済被害を本当に小さくしたいのであれば、感染が拡大した際には対策を強めるほうがいいでしょう。
予防法と治療法が確立されるまでは、感染者が少ないに越したことはない。
この基本に立ち戻るのです。
偉大さにかけては最強対策に見劣りしますが、そこはそれ。
健康は大事ですし、経済だって回さなければなりませんからね!
文:佐藤健志
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