今年7月に行われた参議院議員選挙でれいわ新選組から全国比例で出馬し、11万7794票を獲得して当選した水道橋博士。「反スラップ訴訟法の立法」「消費税廃止」「供託金の値下げ」「エンタメ業界の支援と保護」を掲げて8月3日(任期は7月26日から)から始まる臨時国会へと乗り込む。
Q.当選した直後に「水道橋に国政調査権を与えるなんてとんでもないと言われるほど色々と調査したい」と仰いましたけど、どんな記録を調べてみたいですか?
今は、統一教会について調べてみたいですね。有田芳生(前参議院議員)さんが民間人になり、僕が議員になったので調査をしたい。有田さんとは懇意にしていたので、どこに資料請求していけばいいのかなどをアドバイスをもらってやっていきたいと思っています。
紀藤弁護士にも早く連絡をして対談や連携をしていきたいですね。(紀藤弁護士とは)面識があるし、スラップ訴訟についても雑誌に寄稿されているくらいの人です。スラップ訴訟についても専門家だと思いますのでパイプを繋げようと考えています。
統一教会は清和会の利権ですよね。森喜朗さんが総理になってから、ずっと自民党内は清和会が政権を握っていた。あそこはメディアも抑えていたので、テレビもタブー視していましたよね。安倍さんが亡くなったことで地殻変動が起きて、テレビでも各局に差はあるものの報道されるようになってきた。恐らく清和会以外の自民党が動いているのだと思います。
僕個人としては、自民党は解党して出直すくらいのレベルだと思っています。
そもそもの愛国精神が、乱れているわけじゃないですか。韓国発の宗教に乗っ取られていたと言える状況ですよ。だから矮小化したいのだと思います。でも愛国者であればあるほど、今まで何をしていたのだろうと思いますよね。だけど自民党の一部であるし、派閥の利権なのは間違いない。ここから健全化しようとするならマスコミと共にみんなが応援すれば刷新できると思います。
Q.維新の会も統一教会と関係があるのに知らんぷりに決め込んでいますね。
維新が「勝共連合なんか知らなかった」と言っているけど、何を言っているんだと。松井一郎(大阪市長)さんが僕に訴訟を起こしたのは、笹川良一との関係を知られなくなかったのかという説がありますけど、改めてその説は正しいと思っています。だって足立康史(衆議院議員)さんみたいに統一教会と接点があった人が、代表選に出てくるわけですからよほど隠したいんだろうな。
在阪マスコミは本当に何をしているのかと思いますよ。だってコロナの死者数全国1位が大阪です。ワーストなのに第7波が来ても、吉村さんは6波を補うだけの政策を打っていない。それなのにマスコミが何も言わないのはおかしいですよ。これは維新のメディア支配が進んでいるから何も言えないのだと思います。先ほどの統一教会関連の報道ではないけど、大阪では維新批判がタブー視されているのでしょう。実際に僕は現場で目の当たりにしていますので肌感覚でわかります。
今は、政治がメディアを支配するという状態ですよね。特に大阪は地方局が多くあるから維新が戦略的にアメとムチでメディアを支配していった。
Q.やはり最大の敵は維新の会ということですね。
僕が参議院議員になった最大のきっかけは、松井さんとの裁判です。彼は「訴訟をする」という脅しをして口封じをしてきたし、実際に裁判を起こしてきた。その手法を僕はダメだとずっと言ってきたし、法律がなくても違法行為だと言ってきた。そのやり方は橋下さんから続いてきた維新の文化です。僕は維新的な文化を否定していますので僕自身がこだわらなくてどうするんだと思っています。
もし訴えられなかったら維新が組織的にこんなにダメだというのがわかりませんでした。
在阪マスコミが統制したから維新の不祥事が問われていないだけです。一般のルールから見たら維新はとんでもないですよ。ただ、皆がそういう絵を見えなくなっているんです。点でしか報じませんもん。所属議員が犯罪を犯しました。除名しましたで終わり。
彼らが恫喝と融和の手口を使うのは、橋下徹(元大阪市長)さんがジャーナリストの岩上安身さんをスラップ訴訟法で訴えて勝ったという成功体験からです。他の件でも「法的手段で訴える」と言っておけとアドバイスしたからです。痕跡が残っているし、作法でやっていると思います。
「訴えるぞ」と権力者が言えば、市民や個人は縮み上がって黙ってしまいます。
Q.SNS上でも日常的に「訴訟起こすぞ」なんて言葉が飛び交っていますね。
竹田恒泰(元皇族)さんが山崎雅弘(作家)さんにスラップ訴訟を起こして負けました。実は思想家の内田樹さんが山崎さんを応援していて、裁判費用を募っていました。実は、その基金を僕が受け継ぐことになっていて、もうすぐ発表できます。
僕は、竹田さんが山崎さんの裁判と僕と松井さんの裁判が関連していることを伝えたいんです。これとこれは構造上似ていて、スラップ的な構造を持っているんだぞと伝えることで可視化できると考えています。
スラップ的な構造は、これとこれですと具体的な例を見せないとわからないと思うんです。特に日本の裁判は、ブラックボックス化しているから判決が出るまで何もわからない。
そういう意味では竹田さんの裁判と僕の訴訟はつながったし、集まった基金から僕の裁判費用を出すことができるようになりました。僕は参議院議員になったから費用面では問題はありません。でも、基金があることに意義があるんです。
松井さんはリツイートした4000人も訴えるかもしれないと言っています。もし彼らの中の誰かが訴えられたら基金を使って裁判をしようと内田さんと打ち合わせをしています。
Q.そのためにも反スラップ訴訟法を成立させたいですね。
反スラップ訴訟法はできるだけ早く立法したいのですけど、スラップの定義づけがすごく難しい。そもそもスラップは国内で言われている言葉じゃないんです。現在、スラップという言葉の定義づけが論争として始まっています。
松井一郎さんは公人から私人になります。僕は反対に私人から公人になった。すると構造上、逆になっていくんです。大石あきこ(衆議院議員)さんと橋下さんみたいになるんです。こういう場合はスラップにならないのでは?といった話が出てきています。そうしたズレを調整していかないといけません。
スラップという言葉の定義を正確にしようとすると、元々の定義がアメリカにあります。英語の法なので、反スラップという名称も考えないといけないと思っています。
そういえばスラップ訴訟というと、世耕弘成(自民党参議院幹事長)さんが、中野昌宏(青山学院大学教授)さんに原理研(統一教会の学生組織)の出身であるような書き込みをされたとして提訴しています。そうなると世耕さんは「それはスラップじゃない」と確実に言ってきますし、認めないですよね。そうした状況も考えて、スラップの定義についてや、スラップとは何かを調整しないといけないのかなとは思っています。
議員にも訴訟権はあるのですごく難しくなる。そういう意味での海外判例を見習いながら、どういう場合に適用されるのか法律の専門家と話し合いが必要でしょうね。
Q.安倍さんが国葬されることについてどうお考えですか?
選挙戦では赤木雅子さんとも知り合いました。彼女は現在、佐川宣寿(森友学園問題発覚当時の財務省理財局長)さんとの裁判が続いています。今や続いていることすら誰も口にしない。でも、僕が関係している裁判と連鎖していると思っています。だって人権上不当に法を使った口封じですよ。それを世間に露わにしたいです。
赤木さんの話だって、どうして財務省に抗議しているのかもわからなくなっているし、順番も忘れられている。もう一度皆さんに掴み直してほしいです。赤木俊夫さんの遺書を読めば、安倍さんが国会で「私と妻が関わっていたら国会議員を辞職する」と答弁したところから改ざんが始まったのがわかるじゃないですか。関係ないって言っている人が、未だにいるのが信じられません。でも時系列を弄くって安倍さんは問題ないと言うために間違えたシナリオが広まってます。
それなのに安倍さんの国葬をやって、彼を神格化し、志半ばで凶弾に倒れた偉大なる首相しようという姿を見ると違和感を覚えます。
Q.参議院は行政機能チェックを持っていますけど、どういった考えで見ようと思っていますか?
議員は何もしなければ、6年間参議院議員でいられますよ。そういうシステムです。何も問題を起こさず、質問主意書も出さない、質問もしない、議員立法もしない人が100人もいるじゃないですか。何もしないでいれば職業的な厚遇を受けるだけです。
でも、そんな議員になりたくないから自分自身が自覚を持って一つひとつの法案を深くチェックしないといけないと思っています。だって議決の票の中に自分が入っていくわけじゃないですか。投票することで、そう思っているのかと周りから問われるわけじゃないですか。だから自分自身が自覚を持って、一つひとつ見ていかないといけないと思います。興味を持っている法案以外にも支持をしてくれと言われることもあるでしょう。そこで、党議拘束だから僕もイエスにしますのではなく、一つひとつ自分でわかるようにならないといけないと考えています。
人と会って自分の人脈を広げるほうが大事だという人もいる。でも、僕は政策そのものを読み込める人になりたい。そうした知識が欠けているし、自分自身への危機感、知識欲とかが今は強いですね。多分すごく地味な日々になると思います。すぐにやらかしてやろうとか面白さを追求するような大向こうを唸らせるようなことではなく、6年あるから地道に力をつけたいです。
水道橋博士から話を聞いて改めて感じたのは意志の強さだ。「自分はこうしたいから議員になった」というのを明確にし、足りない部分を埋めるために努力を重ねていくつもりだ。公約である「反スラップ訴訟法成立」についてもアドバルーンをぶち上げることなく、成立させるために必要なことを既に見極めていたのには驚いた。選挙戦の最中からずっと勉強をしていたと思われる。これから参議院議員として6年間務めるわけだが、どんな政治家になっているのか見届けていきたい。
文:篁五郎