東京五輪をめぐる汚職事件。東京地検特捜部は、出版社「KADOKAWA」の角川歴彦会長を逮捕した。

組織委元理事・高橋治之への贈賄容疑だが、すでに紳士服大手AOKIの前会長・青木拡憲氏が贈賄疑惑を認め始めている。一方、自民党とカルト教団との関係も底なし沼のようで・・・。新刊『日本をダメにした 新B層の研究』を刊行し、日本の大衆社会の末路を鋭くあぶり出した適菜収氏の「だから何度も言ったのに」連載第24回。





■当事者なのに居丈高な人々



 NHKのBS番組「河瀬直美が見つめた東京五輪」の中で、誤った内容の字幕が放送された問題で、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は「重大な放送倫理違反があった」とする意見を発表。番組は東京オリンピックの公式記録映画監督の河瀬直美と映画製作チームを取材したドキュメンタリーで、問題となったのは、河瀬から依頼を受けた映画監督の島田角栄が、競技場の外で出会った男性にインタビューするシーン。NHKは「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」と字幕を付けたがディレクターは、実際に男性が五輪反対デモに参加していたか確認していなかった。



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 放送倫理検証委は「放送は五輪反対デモに参加していない男性を参加したかのように描くものだった」「男性の発言について事実の確証が得られておらず、別のデモに関する発言を五輪反対デモに関するものであるかのように編集して放送した」と結論付けた。



 この件に関しNHKが謝罪したのは当然だが、河瀬は「公共放送であるという自覚と意識を再確認し、大きな影響力があるテレビ放送というものに携わるあらゆる立場の方々が、より真摯に番組制作をして頂くことを、切に願います」などと声明文を出した。本来なら一緒に頭を下げるべき当事者・関係者なのに、なぜかふんぞりかえって、居丈高になる人が増えたと思う。



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 汚辱と恥辱とウンコと利権にまみれたバカの祭典、東京五輪はわが国の精神的腐敗と凋落の象徴そのものだった。東京地検特捜部は、大会組織委員会の会長だった森喜朗を参考人として複数回事情聴取。組織委の元理事・高橋治之はスポンサー選定で便宜を図り、紳士服大手「AOKIホールディングス」側から5100万円、出版大手KADOKAWA側から約7600万円の賄賂を受領したとされ逮捕。

森は高橋と一緒にKADOKAWAの会長とも面会していたことが判明している。



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 こんな人間の胸像をこのタイミングで作ろうとしている人たちがいる。政財界人の15人が発起人になり、胸像制作の募金活動が行われているとのこと。また、反日カルトとつながっていた安倍晋三は、自民党の議員連盟「保守団結の会」の「永久顧問」になったそうな。カルトってすごいね。とりあえず、「保守」を名乗るな!



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 英国の女王エリザベス2世が死去。享年96。1952年から70年と約7カ月に及んだ在任期間は、英国の歴代君主として最長。世界各国の首脳はイギリスの国葬に行くから、日本で行われる統一教会の広告塔の国葬に関わっている暇はない。「弔問外交」をやりたいならイギリスでやればいい。



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 消費者担当大臣の河野太郎は、霊感商法など悪質商法の対策検討会について「境界線なく議論をしていただき、最大限のスピードで結果を出す」と問題解決への強い意志を示したとのこと。しかし、実態は境界つくりまくり。

安倍も衆院議長の細田博之も自民党の内部調査の対象になっていない。なお、細田は、統一教会の関連団体と自民党議員が参加する「日本・世界平和議員連合懇談会」の名誉会長を務めていた。



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 2004年7月、河野が統一教会関連のイベントにメッセージを送っていたことが発覚。



《歴史的な平和統一聯合の創設を心よりお祝い申し上げます。ご参集の皆様の高い志に深い敬意を表します。在日コリアンの和合が半島の和合、さらにアジア、世界の和合へとつながると確信しております。またはるばる大韓民国よりお越しいただいたご来賓の方々に心より感謝申し上げます。この歴史的大会のご成功、そしてその運動のご発展を心から祈念申し上げます》



「FRIDAY」が取材したところ、河野側は「弊事務所では発信を確認できませんでした。いずれにしても、消費者庁としては被害の未然防止、救済に向けてしっかりとした対応をしていきます」と回答があったとのこと。「いずれにしても」って何?



 自分が送った祝辞の存在すら確認できないのに、他の議員の統一教会との関係なんてわかるわけがない。当たり前の話だが調査は第三者がやるべきだ。





■自民党は公安の捜査対象だった!



 政界がカルトに汚染される中、しっかりと仕事を続けてきた人たちがいる。

「週刊新潮」は危険団体の監視や外国勢力に対する防諜などを担う、警視庁公安部の「捜査資料」を入手。そこには400名を超える国会議員と地方議員の名前が並んでいるが、たとえば麻生太郎についてはこう書いてある。



《かくて麻生氏が、教会の関連団体主催によるイベントに何度も祝電を打っていた事実が記されている》(「週刊新潮」9月15日号)。



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 岸田文雄も追い詰められて壊れたようだ。「FRIDAY」によると、岸田は「国葬は麻生さんが言い出したことだと一部メディアが書いているが、そうじゃない。安倍元首相が亡くなったと聞いたその瞬間、俺が、国葬と決めた。…浅慮だった」と、議員仲間や新聞記者に対し、はっきり言ったとのこと。浅慮で決めたことを強行する。安倍の政治手法はきっちりと岸田に受け継がれている。



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 今の論壇界は「西のほんこん、東の瑠麗」ということになっているらしい。SNSでも三浦瑠麗とほんこんの芸風がかぶっていることが指摘されていた。《三浦瑠麗とほんこんが匂わせ大炎上。

なぜ壺サーの姫は「女ほんこん」に進化したのか?》(「まぐまぐ」9月11日)という記事もあった。安倍が銃撃されてからは、二人の熱量はさらにアップしていく。三浦はツイッターでと安倍の国葬に関する野党の姿勢を批判。これにはSNSで総ツッコミが入っていた。村八分とは葬式と火事の「二分」以外の関係を切られること。つまり三浦は正反対の意味で理解していたわけだ。高級紙「ワシントン・ポスト」と統一教会系のプロパガンダ紙「ワシトン・タイムズ」の区別がつかなかったり、三浦のボケは、ほんこんが拡散させたデマ「スナイパー小屋」なみに面白いものもある。



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 しかし、お笑いが本職のほんこんには結局はかなわない。「ほんこん氏が教えるフェイクに騙されないツイッターの使い方」というネット記事(2020年10月4日)では「ツイッターで発信するうえでは、どんなことに気をつけていますか?」という質問に対し、「計算に基づいた数字的な根拠を出してツイートすること。文系だと感情論でツイートする方も多いけど、ツイッターは理系のやり方でやった方がいいと思います。そしてフェイクに騙されない。これが一番大事やね」と語っている。

素晴らしいとしか言いようがない。



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 昔『そうだ、村上さんに聞いてみよう』というタイトルの本があったが、『そうだ、ほんこんさんに聞いてみよう』という本の企画はどうか。知の巨人ほんこんにいろいろ質問して、玄妙な回答を楽しむという企画。印税は果物で。





文:適菜収



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