異様な発言を続ける橋下徹、三浦瑠麗、茂木健一郎……。「臭いもの(統一教会問題)には蓋をしろ、そんなことに拘っている場合じゃない」と言わんばかりの彼らの論点ずらしの目的は何か。

新刊『日本をダメにした 新B層の研究』を刊行し、売国政治屋をのさばらせた大衆社会の末路を鋭く分析した適菜収氏の「だから何度も言ったのに」連載第25回。







■「国葬反対 SNS発信の8割は隣の大陸から」発言の真偽とは



 バンドにおける楽器の演奏は比較的自由だが、それでも前提がある。それはチューニングである。演奏の技術とかそれ以前の話。チューニングが狂った楽器では演奏が成り立たない。不協和音だらけになり、聴いているほうも苦痛しか覚えない。



 音楽以外でも同じこと。人間が社会的動物である以上、勝手なチューニングは許されない。発言は事実を前提にしなければならないし、言葉の定義を勝手に変えるのはマナー違反である。しかし、完全にぶっ壊れた人たちが、明後日の方向から、デタラメな発言を繰り返しているのが現在の状況だ。



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 元大阪府知事の橋下徹はテレビ番組で統一教会問題に関し「昨日も萩生田(光一政調会長)さんが『解散請求はしない。困難だ』と(言った)。

僕はこれが法律的見解で、今までそれがごっちゃになって。信者の個別的な違法行為の話と教団の幹部たちが本当に違法な犯罪行為をしていたのか、このへんがごっちゃになった議論になっていた」「僕は旧統一教会を擁護するつもりはないですけど、感情的になってはダメです」「あくまでも旧統一教会の問題は個別に違法行為をただしていくでないといけない」と発言。現在、弁護士らが追及しているのは、統一教会幹部の違法性である。「ごっちゃになった議論」を続けているのは、どちらか。



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 自称脳科学者の茂木健一郎は「何度も書いているけれども、国葬や統一教会の問題は重要だが国政全体からするとせいぜい1%以下の重みだと思う。そんなことに国会の審議時間を使うセンスは全く理解できない。他に議論すべきことはたくさんあると思う」とツイート。国葬は葬式ではない。国費を投入したプロパガンダのための脱法イベントである。つまり法治の問題だ。また、反日カルトが日本の政治に食い込んでいた問題を「そんなこと」というセンスは全く理解できない。



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 自称国際政治学者の三浦瑠麗も平常運転。

「今朝番組でコメントした、政治と統一教会との関係調査に対する食傷感。過去調査は政党が勝手にやればいいけど、有権者はずーっとこのニュースを聴いていたいかといえば、そんなことないんじゃないかという話」「政治不信の時代ですね」と発言。多くの人が食傷感を覚えているのは三浦の論点ずらしであり、政治不信が拡大しているのは、この類の連中が議論の前提をぶち壊してきたからである。



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 安倍の国葬について、自民党の三重県議が「国葬反対のSNS発信の8割が隣の大陸からだったという分析が出ているという」とツイート。さらに、その根拠として「高市早苗先生が、政府の調査結果としてお伝えいただいた内容」とツイート。これは名古屋市内で行われた「日本会議」の講演会の発言とのこと。水面下でなにがあったかは不明だが、その後、県議は発言を撤回。高市も会見で「発言はなかったです。ないです。そもそも大陸という言葉を私は使わない」と否定した。県議が根も葉もないデマを流したのか、高市が嘘をついたのか、そのどちらかということになるが、講演会に出席した人たちがいる以上、真相が明らかになる可能性は高い。





■売国政治屋を支えてきた自称保守論壇



「週刊文春」によると、韓国には統一教会教祖の文鮮明が残した「お言葉集」があるという。

そこには次のような言葉が並ぶ。



《岸(信介)首相は霊界に行っていますが(亡くなっているの意)、その次に福田(赳夫)首相です。福田は、私が首相にさせたのです。中曽根(康弘)も私が首相にしたんです》



《日本の政治、政界の有力者である首相の岸信介という人を(略)笹川のじいさんと組ませて、私たちの計画通り踊らせるようにしておいたんですよ》



《中曽根の時は(略)、130人の国会議員を当選させ、20ある国会の委員会のうち、13の委員会の長は、私が立てた人になりました》



《安倍晋太郎は私と契約書まで書いたのです。これを発表すると、世の中がひっくり返ります。その時の約束はというと、自分が首相になれば、80人から120人の国会議員を連れて漢南洞(文氏の自宅があったソウルの地名)を訪問するということでした》



《金丸(信)は私と会う約束をして招聘した人です。約束した1週間後に銃撃事件が起きたのです。(中略)5メートルの距離で3発撃たれた銃弾は、体に1つもすれ違うことなく、どこかに行ってしまいました。その人が死んだら、私は日本に入れないのです》



《私に後援して欲しいということです。日本の官房副長官(当時)が安倍晋太郎の息子なんですよ》



 大口を叩き虚勢を張るのは統一教会の常套手段だが、すべてを捏造だと決めつけるのは早計だ。実際、福田赳夫は《アジアに偉大な指導者現る。その名は文鮮明である》と発言。

安倍は2006年にUPF(天宙平和連合)が合同結婚式を兼ねた集会に祝電を送り、昨年9月12日の会合には《今日に至るまでUPFとともに世界各地の紛争の解決、とりわけ朝鮮半島の平和的統一に向けて努力されてきた韓鶴子総裁をはじめ、皆さまに敬意を表します》とビデオメッセージを送っている。なお、韓鶴子は統一教会総裁、UPFの実態は統一教会である。



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 何度も言うが、安倍とその周辺と統一教会の関係は「疑惑」ではない。事実である。



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 安倍の国葬で笑いが止まらないのが統一教会だ。全国霊感商法対策弁護士連絡会代表世話人の山口広弁護士は東大駒場キャンパスで行われた「国葬を考える」というシンポジウムでこう述べる。



《統一教会は単なる宗教団体ではありません。いくつかの部門を傘下に持っていまして、それによって「地上天国」実現を標榜する組織でございます。どういう分野かといいますと、ファンドレイジング、資金をつくるための経済組織、経済部門。それから政治家に食い込んで政治を動かす部門。それからアメリカのワシントン・タイムズ、日本の世界日報は大したことありませんが、韓国の世界日報(セゲイルボ)とか、それなりの言論出版の雑誌、定期刊行物をたくさん出版しておりまして、こういう部門その他たくさんの部門があるんですが、それを傘下にもって「地上天国」を目指すという、こういう複合体の組織です》



《日本は秀吉の時代から朝鮮半島に侵略してきたと。明治以降、朝鮮半島を日本軍が占領して様々な韓国・北朝鮮に人権弾圧をしてきたと。

その韓国人女性の怨念が、日本人の女性の子宮に取り憑いて子どもが生まれないとか不具の子どもが生まれるというそういうところまできているのだということを、文鮮明の今の妻のお母さん、文鮮明の熱狂的な信者であったのですが、その人が地上に降りてきてキム・ヒョンナムという天からの御言葉を伝える、「金持ちイタコ」みたいな女性がいるんですが、それに語らせるということをやっています》



《イエス・キリストは神が地上に遣わしたメシアだが失敗した。それを神様がそれを悲しんで地上に再臨のメシアということで遣わした。これが文鮮明なんです。そういうことで文鮮明あるいはその後継のハン・ハクチャは神が遣わした真のメシアだと。神が遣わした真のメシアの文鮮明あるいはハン・ハクチャが言うことは、神様の御言葉として受け入れなければならないと教えています》



《じゃあ国葬をするとどうなるか。統一教会の信者、統一教会の幹部は間違いなく喜びます。今、「安倍晋三先生は霊界の義人・聖人のいる高い位置にある」、統一教会の信者たちの中で間違いなくそう教えられています。その教えを今、国葬によって、日本国民全体が賛美した、認めたということになるんです》



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 案の定、安倍と周辺一味が、反日勢力だったというオチ。それを支えてきたのが自称保守論壇と恥知らずの乞食ライター連中だ。TBS「報道特集」が入手した資料によると、統一教会は2020年までに教団を日本国民の宗教とし、連携する国会議員を150人から362人に増やし、そこから総理大臣、閣僚を選出することで「国を動かす」目的があったとのこと(9月24日放送)。安倍の地元事務所には統一教会関係者が出入りしており、安倍は統一教会票の割り振りにも手を染めていた。安倍を礼賛し、統一教会問題を矮小化する工作員は同じ壺のムジナである。





文:適菜収

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