昨今の物価高でようやく見直されてきたものの、「薄利多売」は永く日本では善とされてきた。しかし、この男は1972年の著書ですでに「バカの商法」と一刀両断。
◾️ユダヤ商法と大阪商法
日本の代表的な商法は、私の生まれた大阪に伝わる大阪商法である。そのガメツさを看板にする大阪商法ですら、ユダヤ商法の前ではおよそ『商売』とは言えない幼稚なものでしかない。
大阪商法は、いわば薄利多売の商法である。〝薄利多売〟でガメツく儲けていくのが大阪商人なのだ。
ところが、ユダヤ人には〝薄利多売〟ということが分からない。
「たくさん売って、薄利とはどういうことなんだ、デン。たくさん売るなら、たくさん儲けるべきだ」
ユダヤ人は決まってこういう。
「たくさん売って〝薄利〟だなんて、フジタの言う大阪商人っていうのはバカじゃないか。うん、きっとバカなんだぜ」
私はユダヤと大阪の歴史を両手ではかってみた。
残念ながら、倍以上もユダヤの歴史の方が長い。ユダヤが三〇〇〇年以上も歴史の時間を刻んだ時、日本はまだ文字すら存在しなかったのである。
◾️安売り競争は「死のレース」
同業者同士で薄利多売競争をして、両方がポシャッてしまうということはよくある。よその店より少しでも安くして、少しでも多く売ろうという気持ちは分かるが、少しでも安く売ろうと考える前に、なぜ、少しでも厚利を得ようと考えないのだろうか。メーカーや商社は、利益が薄ければ、いつ倒れるか分からない危険にさらされているのも同然で、まして、薄利競争などは、お互いの首に縄をかけて、ヨーイ、ドン、で引っ張り合うようなもので、愚劣きわまりない商法である。
ひょっとすると、この薄利競争という名の『死のレース』は、徳川時代に商人を弾圧して、権力をふるって安売りさせた時の、名残りの商法ではないだろうか。
〈『ユダヤの商法』より構成〉