膨大な税金が投入し続けられている「大阪・関西万博」。能登半島の震災復興を後回しにし、いったいなにが「いのち輝く未来社会」なのか!?  さらに万博開催を推進する維新議員の不祥事は「ほぼ日」どころか「時事刻刻」。

日本の衰退は加速度を増している。「だから何度も言ったのに」連載第58回。著者適菜収氏の新刊『維新観察記   彼らは第三の選択肢なのか』が好評発売中。





■ラサール石井と「ボトルシップ」



 日本建設業連合会の宮本洋一会長が、定例記者会見で、2025年大阪・関西万博のシンボルとなる大屋根(リング)をめぐり、「リング内側のパビリオン等の建設は、これから着工するものも多く、今後すべてのリングがつながった際には、内側への重機や資材の搬入に制約が生じると聞いている」と懸念を示した。



 現在は6割程度が完成。2024年9月ごろ、環状につながる予定とのことだが、海外の約60カ国が独自で設計・建設するパビリオン(多くはリングの内側に建設される)は、まだ5カ国しか着工していない。バカにも限度がある。わが国で、現実がフィクションを追い越すようになってから久しい。



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 ラサール石井がSNSに「バカすぎる。先に外側作って、中に物が入らなくなってる。ボトルシップか!」と投稿していたが、もうリングとトイレだけでいい。吉村がそこでうんちをして万博は終了。



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「果てしなく続く木の回廊」などとアピールしていたが、維新の不祥事も果てしなく続く。万博関連予算は膨らみ続け、会場に設置される2カ所のトイレには2億円かけるとのこと。吉村洋文は、新進気鋭の建築家が「魂を吹き込んで」作るものだと発言。胡散臭い中抜き国際博覧会が「うん国際博覧会」に進化。



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 下水道の整備も間に合うのかわからない。うんちはビニール袋に入れて各自持ち帰るルールにすればいい。犬の散歩と同じ。



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 橋下徹がテレビ番組に出演。自民党の裏金事件を受け、野党が求める政治倫理審査会の開催に関し、「いいかげんなことをやった政治家に圧力をかけていくことは重要」と指摘。じゃ、維新の会の政治家にも圧力をかけないとね。



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 橋下は「民主国家、統治法治国家というのは、政治に信頼があるから国民は力を行使せず、法に従って生活している。こんなに政治家の皆さんがいいかげんなことをしていたら、1億2000万の国民が本気で力を出すことになったら、国として成り立たない」「ちょっと、しっかりやってもらわないと統治不全に陥る危ない状況になっていると僕は思う」とも発言。

維新の会といえば、不正受給、パワハラ、ストーカー、公然わいせつ、署名偽造、飲酒ひき逃げ、中学生を恐喝、殺人未遂……。ありとあらゆる不法行為・反社会的行為で有名だが、ところでこいつ、どこのいい加減な集団の代表だったんだっけ?



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 自民党の二階俊博の調査研究費の書籍代が3年間で約3500万円という話があった。二階の事務所は、資金管理団体「新政経研究会」が訂正した2020~2022年の政治資金収支報告書で、書籍代として計上した約3500万円分の内訳を公表。総購入冊数は2万7700冊にのぼる。二階について述べられた『ナンバー2の美学 二階俊博の本心』が5000冊、小池百合子に関する『小池百合子の大義と共感』が3000冊。その他、石井一や大下英治などの本が目立っている。



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 事務所は「1つ目のケースは、議員活動としての政策広報のための支出です。具体的には、二階の推進する国土強靱化、観光立国、地方創生、平和外交などの政策広報や政治活動を紹介することを目的として出版した書籍の費用」「出版社(作家)より出版構想並びに最低買い取り数量を提案され購入いたしました」と説明。また「2つ目のケースは、政策広報のため与野党の政治家や関係者より著書を紹介され纏(まと)めて購入した書籍の費用」と記載。これらの書籍について「選挙区外の行政や議会関係者、関連する政策を進める関係者などに配布し政策広報に努めています」とした。



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 自民党が資金力にものを言わせて、世論工作を繰り返してきたのは客観的事実。森友学園や加計学園を巡る報道を「虚報」などと書籍で記され、名誉を傷つけられたとして、朝日新聞社が自称文芸評論家の小川榮太郎と版元の飛鳥新社に謝罪広告と5000万円の損害賠償を求めた訴訟があったが、その判決では、書籍の表題を含め、朝日新聞社が問題視した記述のほぼ全てで真実性は認められなかった。

小川は《朝日新聞がひたすら「安倍たたき」のみを目的として、疑惑を「創作」した》《全編仕掛けと捏造で意図的に作り出された虚報》などと述べていたが、要するに完全なデマ本である。



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 これは、現在の出版界の病そのものだ。カネになるならなんでもいいという連中が、いかがわしい工作員を飼うようになった。小川の本は自民党が組織的に買い上げていた。自民党所属の国会議員に本とともに送られてきた書面には《ご一読いただき、「森友・加計問題」が安倍総理と無関係であるという真相の普及、安倍総理への疑惑払拭にご尽力賜りたい》という旨が記されていた(「FRIDAY」2017年11月24日号)。





■アジアで凋落する日本



 Amazon Prime Videoで『私の夫と結婚して』という韓国ドラマと『テセウスの船』という日本ドラマを見た。両方とも主人公が過去に戻り、未来を変えようとするよくある話だが、日本ドラマのほうはツッコミどころが多すぎて、途中から見るのが苦痛になってきた。過去に戻るというありえない設定なのだから、ストーリーの矛盾はいくらでも修正できそうなものなのに、最初からそれを放棄してるような感じもある。中盤からは、よくもこんなひどいドラマを作って、地上波で流したなと、今の日本が心配になった。俳優さんたちの演技は素晴らしいので気の毒。一方、韓国ドラマは矛盾も少なく面白く見ることができた。日本の凋落は、こういうところにも現れるのかもしれない。

他の日本ドラマやアジアのドラマを比較してもそう思う。



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 先日、取材を兼ねて11日間台湾に行ってきた。最近、アジアに行くことが多いが、そこで現在の日本の状況について考えることは多い。昔は台湾は物価が安い国と感じたが、今は日本と同じくらいか、ものにより高いくらいである。スーパーマーケットでは、牛乳が1リットル450円、キムチが1パック900円くらいか。



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 今回は台湾中部の台南、嘉義にも行った。2月とはいえ、少し暑いくらい。基本は飲み歩いているだけだが、台湾で必ず食べたいのが、台湾料理の老舗欣葉(シンイエ)の蒜香醃蜆仔(しじみのニンニク醤油漬)。いくつかの柑橘系の香りがあり、レアで高貴な味。欣葉は数店舗あるが、なかなか予約が取りにくい。台北に到着した日、なんとか本店に入ることができたが、しじみは品切れ。その後、リベンジで中山駅近くの新光三越にある欣葉南西店へ行ったが、そこでもなかった。

旧正月と時期が重なったことと関係があるのかはわからないが。



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 台湾は飲食店が閉まるのが早すぎる。もちろん例外もあるが、多くの店は夜10時くらいには閉まってしまう。一度、夜に行く場所がなくなり、宿の近くの吉野家で牛丼を食べたことがあるが、まずすぎる。日本の吉野家の牛丼とは別物。



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「台湾ではなにを食べても美味しい」と言う人がよくいるが、もちろんそんなことはない。そんな天国みたいな国が地上に存在するわけはない。日本と同じように、本当に美味しい店はごくわずかである。中華料理でも場所によってはあまりレベルが高くない。夜市もあちこちにあるが、外国人がふらふら歩いて、いい店にあたる可能性は少ない。



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 永康街の鼎泰豊本店に四半世紀ぶりに行った。見た目はきれいだが、予想以上に美味しくない。

そもそも熱くないので論外。昨年、高雄にある鼎泰豊にも行ったが、そこも小籠包はダメだった。私は台湾の小籠包を20ヵ所くらいで食べたが、総じてレベルは高くない。台北には京鼎樓の支店もあるが、東京恵比寿にある京鼎樓本店のほうが上。



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 台湾の悪口を言っているのではない。よいところもダメなところも含め、フェアに比較したほうがいいということだ。近隣諸国蔑視と日本スゴイ論で食いつなごうとする低レベルの言論乞食もいまだに存在するが、思考停止したままでは、日本の本当の「強み」に気づくこともないだろう。





文:適菜収

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