「AVを知ったきっかけは紗倉さん」憧れの人と5年越し対面【紗...の画像はこちら >>



 



 2人の“AV女優”のエッセイが、2025年6月、発売された。



  『犬と厄年』(講談社)は、現役AV女優で作家としても注目される紗倉まなさんが、自身の暮らしや思考をつづった一冊。

私をほどく AV女優「渡辺まお」回顧録』(KKベストセラーズ)は、「渡辺まお」として活動していた元AV女優の神野藍さんが、当時を振り返って書いた一冊だ。



 神野さんにとって、紗倉さんは憧れの先輩。対面の前から「ドキドキしてます」とテンション上がりっぱなし。一方の紗倉さんは、登場するなり『私をほどく』の感想をびっしり書いてきた紙を取り出して、「ほんっとうに良かったです」と絶賛。抜群の両想いで、対談は始まった。





◾️「この若さでここまで行ったんだ」と衝撃

 



紗倉まな(以下、紗倉)「私、本を読んでいてこんなにうなずくことが少なくて。著書の中で書かれている神野さんの、周りに対してのふるまい方や目の前に立ちはだかる課題への向き合い方が、私が今まで経験してきた過去と重なるようでページを捲る手が止まらず……。私が言葉に落とし込みきれていなかった思いまでもが解像度が高く描かれていて、たぶん適切ではない感想なんですけど(笑)、読んでいてすごく心地よかったんです」



 



神野藍(以下、神野)「あはは! ありがたいです」



 



紗倉「業界での消費のされ方とか自分の心構えとの距離の測り方とか、この若さで、そこまで察せられることもすごいなって。私はけっこう最近になって気づいたことが多いのに、もうそこまで行ってしまっているんだ、みたいな」



 



神野「私も現役の時は無我夢中すぎて、むしろ見えてないほうが心地よかったです。辞めて、ちょっと距離を置いて、じゃああの2年間って自分にとってどうだったんだろう、って考え直さないとなっていう気持ちが残って。現役の時は毎日もう仕事仕事、撮影撮影みたいな、毎日裸、みたいな感じだったので」



 



紗倉「作品、すごい数出されてますよね?」



 



神野「200本近いですね」



 



紗倉「2年で200本って尋常じゃない数。毎日毎日撮影、って感じですもんね」



 



神野「今日は制服着て、明日は水着を着て、次は山に連れて行かれるのか……みたいな」



 



紗倉「ね。

しかも朝にマネージャーさんから電話がかかってきてすぐに着替えて行く、というエピソードも書いてありましたよね(笑)」



 



神野「そう! だから、離れないと何も見えてなかったです。見えないようにずっとしてたなってところがありました」



 



紗倉「現役を退いた方は、暴露本のような形で業界のことをネガティブに書かれることも多かったりするじゃないですか。それは実際に実在する業界の闇の部分ではありますし、それを発信したり描くことは何も間違ってはいないのですが、受けた扱われ方とか、ずさんな現場の様子だけに限定して、ネガティブな部分だけを抽出する形で見せられてしまうと、複雑な思いになってしまうのは確かで……。神野さんはそういった書き方ではないですもんね」



 



神野「告発してほしいっていうふうに見られますよね。旗印にされがちというか。私も『あなたの被害を話してください』って言われることが多すぎて、“被害”じゃないんだよな……って」



 



紗倉「その距離感が絶妙ですよね。『私をほどく』の帯文を書いている鈴木涼美さんも業界との一定の距離感を確保していて、過剰に悲観的になることも責任を業界に転嫁することもせず、粛々と淡々と、個人が思ったこと、そして体験したことを綴っている。それはすごく慎重な作業でセンスも問われるし、事実と私情を時に切り分け、時にきちんと絡めながらこの業界を描くことは非常に難しいことだと私は思っていて。それをやりのけている鈴木さんを私はとても尊敬しているんですけど、神野さんもそうだなあ……と」



 



神野「2年間そこでお金を稼がせてもらっていたし、恩は恩でちゃんとあるので。辞めて批判ばっかりしてても、仁義が……(笑)。あの2年間を“被害”で片付けたくないというか、みんなに決められたストーリーに乗せられたくなくて、それを思ってずっと書いていたのもあって」





◾️高校の同級生に見せられて…

 



神野さんにとって、この対面は5年越しの念願でもあった。神野さんの「渡辺まお」としてのデビュー作のパッケージには、「紗倉まなちゃんが大好き」という文字が載っている。



 



神野「デビューの時、リツイートしてくださったんですよね」



 



紗倉「パッケージ見た時、めっちゃ可愛い! と思ったのと同時に、隣にある私の名前、完全に邪魔だろって(笑)。嫌じゃなかったですか?」



 



神野「そもそもAV女優ってものを知ったのが、高校で、後ろの席のまあまあしゃべってた男の子が『このAV女優可愛くね?』って言ってきて。これ見ていいんか? って思いながら見せられたのが、紗倉さんで」



 



紗倉「ええっ。そうだったんですね……!」



 



神野「お前ちょっと似てるやん、そんなことないよもっと可愛いよこの人、とか言ってたのが、AVとの出合いだったんです。AV女優イコール紗倉まな、っていう頭だったんですよ」



 



紗倉「いや、これはでも、私の中で申し訳ないなっていう思いがあって。私の存在はAVを知るきっかけではあったかもしれないけど、実際にデビューする本当のきっかけではなかったと思うから。本人としては不本意だったんじゃないかな? そういうことにしてしまっていいのか? って」



 



神野「面接の時に私がぽろっと『紗倉さんが好きなんですよ、すごい可愛いなと思ってて』っていう話をしたんです。だから逆ですよ、私はデビュー作に名前を載せていいのか!? って。名前を借りすぎてるんじゃないか? って」



 



紗倉「全然そんなことない! そもそもですけど、私たちにこういう気遣いをさせる時点でメーカーのやり方がダメです(笑)。でもよかった、聞けて。ずっと気になっていたんですよ」



 



現場を知る2人ならではの話に花が咲く。ひと口に「AV女優」と言っても、見えている景色は人によって違うのだそう。



 



紗倉「同じAV女優という括りでも、各々の働き方は全然違うじゃないですか。現場の雰囲気も、メーカーによっても、制作会社によっても違うし。語る時の主語をどれだけ大きくしないで語るかとか、そういうあんばいも考慮していかないとだめですよね」



 



神野「そうですよね。こういう本を書くってなった時も、どこまで行っても一個人の話で終わらせたいというか。ずっと主語を私からずらさないようにっていうのは思ってました。やっぱり自分が現役を退いた身なので、その立場から何か書くなら、現役の方には迷惑をかけたくないし。あくまで自分個人として全部書きたいなっていうのがあって」



 



紗倉「それってなんか、ありがたいことですね。だって、憎まれても然るべきような業界を去った後に、ちゃんと恩義を忘れないでいてくれているだなんて、業界としてはありがたすぎる話だと思いますよ」



 



神野「好きな監督もいたし、好きな制作の人もいたし。そういう人の顔を思い浮かべると、憎めないんですよね。憎みたくないし」



 



第2回は、紗倉さんの『犬と厄年』をきっかけに大盛り上がりした、愛犬トークをお届けする。



 



 



構成・文:BEST T!MES編集部

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