■小泉進次郎候補の政策の出来はかなり良い
小泉進次郎総裁候補の政策は出色だ。他の候補者の政策と比較しても、来たるべき衆議院総選挙に向けたマーケティング戦略としても、他の総裁候補が影響力を持つ自民党内の派閥を切り崩す政治戦略としても、そしてなにより国民の生活を豊かにする経済戦略としても、修行に修行を重ねた自民党内の精鋭たちが絶対に負けられない戦いのために練り込んだ戦略を発表し(あるいは特に発表せず)、実行に移しているのがよく分かる。
たとえば、「物価スライド基礎控除の導入」というのは、国民民主党の政策とほとんど同じ政策である。自民党内の中にいる若くて格好いい総裁が国民民主党の政策をほとんど丸呑みで実行すれば、玉木代表の存在感は一気に薄れる。
今日はその中でも、小泉進次郎総裁候補を総理にするということが、今回の総裁選挙や次の衆議院議員選挙で政策的・選挙戦術的にどのような意味を持つのか、そしてなぜ小泉進次郎候補は今のところ他の有力候補を抑えて圧勝しているのかについて考えたい。
■選挙戦略としての「関東学院大学卒業」
小泉進次郎総裁候補については、マスコミでよく取り上げられるイメージとしては、「議論・討論に弱い」「何を考えているかわからない」というものである。私も含めてだが早慶出身の東京のマスコミ関係者は、関東学院大学出身の小泉進次郎総裁候補を知的な部分でどこか見下しているような雰囲気すら感じる。
だが、そもそも小泉進次郎総裁候補が関東学院大学出身であるということは、父親の小泉純一郎元総理が慶應義塾大学を卒業した後、一回目の選挙で負けていることへの反省を込めた選択であるとも考えられる。実際に横須賀に行くとよく分かるが(私は前回の横須賀市長選挙の取材で横須賀を度々訪れた)、横須賀は横浜からは1時間程度かかり、横浜とは地理的に隔絶している。全く別のコミュニティなのだ。
この中で選挙に勝つには、横須賀の学校に通うのが一番だ。小泉進次郎総裁候補が関東学院大学出身であることは、(親と同じ名前に改名した中村喜四郎元大臣同様)ある種の選挙戦略だとも考えられる。

■本当の知性というのはアホっぽく見られる・舐められることである
その上で、小泉進次郎総裁候補が林芳正候補や茂木候補とも遜色がない知性の持ち主であるということは、コロンビア大学大学院卒業という学歴からだけではなく、彼の実際の行動に現れている。
彼の実際の選挙公約を見ると、茂木候補の地盤である茂木派、特に参議院の茂木派を切り崩すための戦略を彼が着実に実行していることもわかる(たとえば「参議院の合区解消」は参議院茂木派を切り崩すための武器になる)。
また、それ以外にも彼は、最近勢いがある国民民主党や旧来からのライバルである立憲民主党の支持者さえも取り込む政策・選挙戦略で敵意を見せずに着実に実行している(たとえば、あらゆる選択肢を排除せずに与野党で協議して物価高対策をするというのは、おそらくは一定の所得以下の人に給付を行うという「給付付き税額控除」を彼が考えていることの現れである。これを実行できれば立憲民主党の支持層はかなりの部分自民党支持層に変わる)。
そもそも、ある高学歴な総裁候補が週刊誌で話題になったように、高圧的に敵意をむき出しにして自己顕示的にアピールされる知性というのは大した知性ではないのだ。
本当の知性というのは、穏やかに温かく、それでいてしっかりと戦略を実行することだ。いわゆるアホっぽいイメージ(つまりクレバーで冷徹な印象ではなく、逸物を隠しどこか空気が読めない天然な印象)であり、戦略を実行したことにさえ気づかれないならなおのことよい。
小泉進次郎総裁候補はこれらすべての条件を満たしている。
だからこそ自民党総裁候補との争いにはもちろんのこと、これから迫りくる野党との鍔迫り合いにも勝つことができるのだ。
アメリカでだってアホそうに見えるけど勝負強いというのが一番アメリカ人好みだ。赤澤大臣はまるで空気が読めない人物のようにトランプには見えたのではないか。それによって外交で獲得した利益は大きかったはずだ。
ゆえに小泉進次郎総裁候補がトランプと真っ向からやり合える総理になる可能性がある。そう、これこそが本当の知性だと気づく人は実際少ない。
文:林直人