■企業の設備投資増大を小泉進次郎は実現できるか?
かつて小泉純一郎総理だった時、前半は不良債権処理など課題が山積していたが、後半はGDPも上がり成長軌道に乗ってきた。
そしていま、そうした「小泉劇場」を息子である進次郎氏が再演しようとしている。
鍵となるのは、「経費の即時償却を可能にする」という公約の一文である。これがどういった政策なのかということを、ここでわかりやすく説明し、なぜ小泉進次郎総裁候補が誕生すると企業の設備投資が飛躍的に伸びるのかを説明しよう。
まず、経費の即時償却というのはどういった概念か。小泉候補は以前減価償却についての議論でマスメディアから叩かれたことがあるが、今回の公約を見ると小泉候補がむしろ減価償却という概念についてよく理解しているということがよく分かる。
一般的に企業勤めをしているサラリーマンは、飲み会などの際に自営業の友達に「これ経費で落としておいてよ」というようなことを言う事があるが、すべての経費がその年に経費として認められるわけではない。工場など資産になるものについては、その年のうちに経費として認められるわけではなく、決められた期間にわたって分割して経費として認められるような形になる。
しかし、税金はその年その年の認められた利益に応じて現金で払わなければならないので、「勘定合って銭足らず」という事態に陥る。こうした事態を回避するためにも、企業は、特に小規模事業者は投資を絞るところがある。
投資の多くがその年に経費として認められるのであればこうした投資の抑制にも歯止めがかかる。経費で資産を買うことが認められるのであれば、どんどん経費を使って資産化していきたいと思うのが経営者である。
■無形資産時代に企業は経費で資産を増やせる時代がやってくる
この政策はYouTube全盛の今だからこそ非常に価値がある。
資産というとかつては工場やなんらかの土地・ビルをイメージする人が多かったが、いまやYouTubeもまた資産なのである。
この政策は大銀行とも付き合いがあり、万全の経理を行っている大企業よりもむしろ、起業したばかりの若者などこれから下剋上を狙う人間にこそ刺さる政策だ。小泉進次郎候補が開明的な候補で、ベンチャー気質があるといえる側面だ。
■企業が経費で資産を増やせるというのは一種の無税国家に近い
企業がその年のうちに認められる経費で資産をどんどん増やせるというのは、ある種の無税国家に近い。現金を残すのであれば税金がかかるが、現金を半永久的に生み出す資産を残すのであれば税金がかからないというのはチャレンジする人にとってこれ以上ない福音である。
大企業株や都心の不動産を中心に恩恵がある量的緩和をこれだけ物価高になった今さらに進めていこうとする無謀な候補よりも、むしろ実体経済の中で活躍する若い起業家を育てたい。そう考える小泉進次郎候補は、まさに令和の改革者になれる可能性がある。父・小泉純一郎氏の系譜を受け継ぐ政治家としてあるべき姿勢ではないだろうか。
文:林直人