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 オープンAI、グーグル、エヌビディア……。いまやニュースで見ない日はないほどAIブームが席巻している。

それと同時に「AIが人間の仕事を奪う」という絶望的なディストピア論が、あたかも決定事項であるかのように語られている。



 しかし、私は断言したい。現在起きているのは「雇用の終わり」ではない。産業革命以来、人類が経験したことのない規模で展開される「労働のルネサンス」であり、爆発的な価値創造の「始まり」に過ぎないのだ。



 私は、企業のAI導入を間近で見てきた立場として、世にはびこるAI悲観論の嘘を暴き、これからの時代を生き抜くための「真実の商法」を明らかにしたい。かつて日本マクドナルドの藤田田が『ユダヤの商法』で世に衝撃を与えたように、この「労働のルネサンス」という視点こそが、これからのビジネスの覇権を握る鍵になる。





■銀行員はなぜ増えたのか? 「労働の塊」という大いなる誤謬



 AIが職を奪うという恐怖の根底には、経済学で「労働の塊の誤謬」と呼ばれる、古臭い思い込みがある。これは「世の中にある仕事の総量は一定であり、機械がそれを行えば人間の取り分が減る」という考え方だ。



 しかし、歴史を紐解けば、この直感がいかに的外れであるかがわかる。その最たる例が、1970年代に登場したATM(現金自動預け払い機)だ。当時、ATMが普及すれば銀行の窓口係(テラー)の仕事は消滅すると予言された。だが事実はどうなったか。

1980年から2010年にかけて、米国の銀行窓口係の雇用数は逆に増えたのだ。



 理由は単純である。ATMによって支店の運営コストが劇的に下がったため、銀行はより多くの支店を出せるようになった。そして窓口係の仕事は、単純な現金の出し入れから、顧客対応や融資相談、金融商品の販売といった「高付加価値な対人業務」へとシフトした。つまり、技術革新は仕事を奪うのではなく、仕事を「再定義」し、総量を増やしたのである。



 いま、AIについても全く同じ力学が働いている。プログラミングや記事執筆のコストがゼロに近づくことで、これまで予算不足でシステム化できなかった中小企業の需要や、ニッチなコンテンツ市場が爆発的に拡大する。これを「ジェボンズのパラドックス」という。効率化が進めば進むほど、その資源の消費量は減るどころか増えるのだ。





■「ルビーロマン・パラダイム」が農業を高度サービス業に変える



 私が最も注目しているのは、AIがもたらす「贅沢の民主化」だ。石川県が生んだ1房数万円の高級ブドウ「ルビーロマン」を例に挙げよう。かつてこの品種を開発するには、14年という歳月と気の遠くなるような試行錯誤が必要だった。





A I 失業という大嘘――「1房数万円のブドウ」が教える新経済圏の正体【林直人】
ルビーロマン



 ところが、AI駆動型の「ゲノム選抜」技術は、この時間を劇的に圧縮する。苗の段階でDNAを解析し、将来どんな実をつけるかをAIが予測することで、開発サイクルは最大70%も短縮されるのだ。



「すべてのブドウがルビーロマン級になったら価値が下がるではないか」と考えるのは素人だ。品質が底上げされれば、価値の源泉は「味」そのものから「物語」や「体験」といった無形資産へとシフトする。誰が、どんな哲学でそのブドウを作ったのか。どんな特別な空間でそれを食べるのか。



 ここには、AIには代替できない膨大な新規雇用が眠っている。バイオIP(知的財産)を管理する弁護士、世界中に最高鮮度で届けるロジスティクスの設計者、そして産地を巡るラグジュアリー観光のコンシェルジュ。AIによる研究開発の加速は、農業という伝統産業を、知財と観光が融合した「高度サービス産業」へと昇華させるのである。





■コンサルタントの「終わり」ではなく「黄金期」の到来



 世間では「AIがあればコンサルタントはいらなくなる」とも囁かれているが、これほど現場を知らない意見はない。実のところ、コンサルティング業界はいま、過去数十年間で最大の「ルネサンス期」にある。



 現在、世界中の大企業がAI導入を叫んでいるが、実際に成果を出せているのはわずか26%に過ぎない。

なぜか。大企業には数十年分の古いシステム、サイロ化されたデータ、そして何より変化を拒む硬直化した組織文化という「巨大な壁」があるからだ。これらを最新AIと統合する作業は、AI自身には絶対に不可能だ。高度な政治力と設計力を持つ「人間」が不可欠なのである。



 コンサルタントの役割は、情報の検索・整理という「時間の切り売り」から、AIエージェント群を指揮して組織を変革する「実装アーキテクト」へと進化した。AIガバナンスや倫理監査といった数兆円規模の新たな相談事が、いまや彼らの前に山積みとなっている。業界は衰退するどころか、かつてない需要の爆発に直面しているのだ。





■日本こそがAI革命の「最大の勝者」になる理由



 最後に、日本という国にとっての真実を述べたい。日本は世界で最も「AIによって救われる国」である。なぜなら、日本には「リストラすべき余剰人員」などそもそも存在しないからだ。



 2030年までに150万人の労働力が不足すると言われるこの国で、AIは人間の敵ではなく、国家存立のための「不可欠な補完財」となる。中小企業において、AIによる自動化はクビ切りのためではなく、人手不足による倒産を回避するために行われる。

AIが事務作業を肩代わりすることで、少人数の社員でも会社を存続でき、地域の雇用が守られるのだ。



 かつて産業革命が肉体労働の限界を突破したように、AI革命は知的労働の限界を突破しようとしている。私たちは今、雇用の終わりに震える時ではなく、人間がより創造的で、感情に寄り添い、真に価値ある活動に専念できる時代の「始まり」に立っているのだ。この「労働のルネサンス」という潮流を読み解ける者だけが、次の時代の富を掴むことができるだろう。





文:林直人

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