「コンプレックスをつけば儲かる」マクドナルド創業者が明かした...の画像はこちら >>



「ラップ・アップ・プリーズ!」初期のマクドナルドの店内では日本人店員同士が英語でやり取りしていたという。これは日本人が持つ“外国コンプレックス”をあえて刺激し、客を呼び込む仕掛けだったと藤田田は豪語する。

新装復刊した『起業家のモノサシ』(KKベストセラーズ)より抜粋して紹介しよう。





■客の〝コンプレックス〟をつけ

 



 ハンバーガーを買いにくるお客さんは全部が全部店頭で立ち食いする人ばかりとは限らない。



 中にはお持ち帰りになる人もいる。そのために、焼き上がったものはその場で包んでお客さんに渡すようにしている。焼き手と包む店員はそれぞれ作業を分担しているが、マクドナルドの従業員は「できたぞ、包んでくれ」と日本語では言わない。



「ラップ・アップ・プリーズ!」と叫ぶ。つまり、英語を使うのだ。



 私は店員同士のやりとりは、すべて英語でやるように、と教育している。



 若い女性客などは、店員同士の英語のやりとりを、うっとりした目で聞いているのだ。それだけで、外国へ来たような気分になるのである。



 こうした効果を考えて、私は、あえて従業員に英語を使うことを要求している。



 というのも、日本人は、元来、英語に弱い。



 語学コンプレックスは、とりもなおさず、外国人コンプレックスにつながる。そうすると、奇妙なことに、外国人の食っているものは、うまそうに思われてくる。



 マクドナルドのハンバーガーは、もともと外国人の食物であるが、それだけに日本人の外国人コンプレックスをつくとよく売れる。従業員に使わせる英語は、日本人の外国人コンプレックスをつく小道具なのだ。



 事実、マクドナルドにやってくる外国人客は多く、それがまたとない宣伝になって、つりこまれて日本人が買うケースも多い。



「英語を使え」



 と私が店員に要求するのは、つまり、日本人のコンプレックスをつけ、ということである。コンプレックスをつけば儲かるのである。



 それも、ただ、私だけが儲かるのではない。私は儲かるが、ハンバーガーに馴れることで、お客さんは外国人の食べものに馴れていく。ハンバーガーという外国人と同じものを食べ続けることで、外国人コンプレックスが薄れていく。



 これは日本にとっても、お客さん自身にとってもたいへんなプラスになる。外国人コンプレックスから抜け出すことで視野も広くなるだろうし、考え方にも柔軟性が出てくる。

発想法も島国的なものから国際的なものヘと飛躍していくだろう。そうした国民全体の大きな利益の前には私の儲けなどは微々たるものである。



 私は冗談でこんなことを言っているのではない。真面目も真面目、大真面目である。私は国民の利益向上を信じて、ハンバーガーを売りまくっているのである。





■第3期文明ショックを直視せよ



 日本の歴史を見ると、日本は過去に3回、文明のショックを受けている。



 第1回目が大化改新である。このときに中国から文字が上陸した。



 第2回目は明治維新である。徳川300年の鎖国が解かれ、西欧文化が入ってきた。



 第3回目が戦後のアメリカ文化の流入である。歴史の上では、日本は連合国に敗れたことになっているが、実際はアメリカに負けたのである。

そして、アメリカ文化が次から次へと日本に上陸してきた。



 ちょっと周囲を見まわせば、よくわかる。IBM、コカ・コーラ、パーカー、ジーパン……あらゆるものは全部アメリカのもので、ヨーロッパのものなんかない。オールアメリカ文化である。そして、そのアメリカ文化の真打ちとして登場したのが、ハンバーガーである。



 ところが、日本人はじつに柔軟な頭脳で、怒濤のごとく押し寄せたアメリカ文明を上手に吸収し、新しい戦後の日本文明を創造した。ハンバーガーの売上げ新記録を日本が出したのも、そのひとつの現われである。



 アメリカ人は日本人の豊かな創造性に、今や驚きと敬意を見せはじめている。そしてアメリカ文化を吸収して新しい文化を作り出した日本から、もう一度、その文化をアメリカへ持ち帰ろうという『ブリング・バック・ツー・U・S・A』の運動が起きつつある。



 アメリカが日本に与えた文明のショックを、今度は再びアメリカヘ持ち帰ろうというのである。



 日米の平和のかけ橋となる文化は、マクドナルドのハンバーガーである。



文:藤田田



《『起業家のモノサシ』より構成》

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