配信ドラマ「極悪女王」(24年)や上谷沙弥選手(※スターダム所属)のブレイクで注目されている女子プロレス。24年暮れにプロレスデビューを果たし1年が経つグラビアアイドル咲村良子(29)は今フリーとして各団体へ参戦中。
■筋トレしまくっていたら、プロレスの道が見えた
——以前に某紙でインタビューさせてもらった時は23歳くらいでした。まさか女子プロレスラーになるとは!! まずはグラビアアイドルになった経緯から聞かせてください。
咲村 17歳の時、地元の大阪でフリーモデルの仕事をしていた時に、今の事務所の社長にスカウトされたんです。2回も大阪まで会いに来てくれましたし、竹書房さんからDVDが出るお話をすぐいただき、バリ島ロケと言われて「バリ島行きたいな!!」とグラドルになると決めちゃいました(笑)。
——親御さんには反対されずに?
咲村 反対されましたし、私は元々大学に行くつもりでいたんです。でもうちは三姉妹で「たぶん三人共が大学に行けるお金はないだろうな」と思い、長女の私はスカウトされたのをきっかけに東京で一人で生きようと決め、親には頼らず、フリーモデルで貯めていたお金を上京資金にしたんです。でも最初は仕事がなくて、撮影会くらいでしたね。月に10日くらい撮影会をして、他の日はマクドナルドとかでアルバイトをしていました。
——約10年グラビアをやり、突然プロレスを志すきっかけが、同じグループのメンバーのプロレス入りとか。
咲村 それまでもトレーニング、ヨガ、ポールダンスなど身体を動かすのが好きでやっていたんですよ。体操は学生時代に少しやっていたので、東京でもたまにマット運動をしていて。
そんな時期、一緒にアイドルユニットのCLIPCLIPで活動していた南ゆうきがアイスリボンという団体でデビューすると聞き、観戦に行ったんです。プロレスは見たことがなかったので、その日が初観戦。テレビで見た記憶もあまりなく、長州小力さんはよく知っいるけど、長州力さんは見たことないみたいな(笑)。
——それはまずいでしょ。初観戦の感想は。
咲村 「へー!!」と感心しました。その後も南ゆうきが出る試合を見ていて、新団体「マリーゴールド」(※スターダム創業者のロッシー小川が24年4月設立)に移籍すると南から聞かされた時、「じゃ私も行く」とめちゃくちゃ気軽に決めてしまいました。
その頃は百キロのバーベルを上げられる筋力がついていて、「このまま筋トレしていたらグラドルじゃなくなる」と不安になり、ベストボディ・コンテスト(※美ボディを競う日本最大級のコンテスト)を目指すか、プロレスを始めるかで悩んだんです。止まって演じるポージングより動きたいとプロレスに決めました。それでマリーゴールドの生え抜きの練習生になったんです。
——練習にはついていけました? プロレスのマットは触っただけでけっこう硬い。
咲村 基礎体力、受け身はついていけました。マットには薄いクッションが一応入ってますけど、あれは床ですね(笑)。板と鉄骨ですから。足が取られないように硬くなっていますし。体操をやっていたのでマット運動に近いことは出来ましたけど、後ろ受け身は苦戦したかな。
——バックドロップ的な?
咲村 未だに苦手です。プロレスの知識は、映像だけ見ているとわからないことが多かったですけど、一番勉強になったのはセコンドに付くことでした。大会のたびにリングに張り付いて先輩たちの試合を見ることが大きかった。
■「28歳新人」雑用からスタートも、着々と技を磨く
——28歳から一番下で雑用などもやってきた。リング上の紙テープを速攻で片付けたり。
咲村 10代の先輩から「あっちやって」と言われていましたが、一番後輩からスタートすることが新鮮で楽しかった。というのも、芸能界はどちらかというと苦手な社会で。
——5月に入り、12月にデビュー戦。相手が高橋奈七永選手(※96年に全日本女子でデビューのベテラン)でした。
咲村 デビューまではプロレス以外にレスリングの教室にも通い、トレーニング。そこには小学生も通っていたのですが、ハンパない身体能力で。かなりもまれて持久力など鍛えられました。だから試合は体力的には余裕がありました。
でもやられっ放しで。逆エビをかけられた時に背中が反りすぎて自分の踵が自分の後頭部にくっついたんですよ!! セコンドの先輩たちも「大丈夫か?」となったらしいです。
でもギブアップせず、ロープブレイク。最後は投げられて締められて終わったのかな。高橋奈七永さんとはスパーリングもやらせていただいて、まったく何も出来ないまま締められ続けてましたね。
——プロレスが出来るプロレス体力を元々持っていたタイプだったんですね。
咲村 運動能力が高くはないけど、プロレス体力はあったほうなのかな。まだキャリアが浅い私が言うのもなんですけど、プロレスは忍耐力だと思います。痛い、しんどい、暑い、寒い、お腹空いた、全部に耐える(笑)。耐久戦です。令和的な感性ではどうにも出来ない気がしてます。
——女子プロが好きな私は、選手の忍耐力に惹かれて見ていたわけか!! 昨年7月に退団。体調不良という話が出てました。今はフリー?
咲村 身体が大きい大先輩たちとの試合で成長させていただいたんですが、私自身、団体行動が苦手で、同じ顔ぶれでずっといることにいっぱいいっぱいになってしまって…。いろんな環境に行きたくても、団体に所属しているとその団体の練習しかできないですし。
やむを得ず辞めたのですが、結果的にはフリーになって良かったです。
でも、なにわ女子所属と載っていることがありますけど、言ってみれば「なにわ女子専属フリー」みたいな感じ。なにわ女子さんをホームに、いろんな団体の試合に出させてもらっています。
——3月のRose(※ZERO1の姉妹団体の女子プロレス)での試合を観戦しました。技数が増えたようで。
咲村 あのタッグマッチは4人ともが全員違う団体で、私からするとみなさん初めましての方で、新鮮で勉強になりました。試合のたびにステキな先輩と出会えるのもフリーの良さです。組ませてもらった駿河メイさん(※チョコプロレス)にはすごく助けてもらいました。
フリー後は教えてくださる先輩の人数が増えたので、この1、2ヶ月はかなり成長してます。今は柔術に興味があって、絞め技などリニューアルしました(笑)。
■プロレスは最高のエンタメだ!その魅力にどっぷり
——闘う側の女子プロレスの魅力は。歌やダンス、芝居と違い、闘うことを選ぶ理由は。
咲村 いろんなエンタメをやらせていただきましたけど、これだけぶつかり合うエンタメってない気がします。強くて上手い選手と試合するとすごく楽しいんです。自分が翻弄されるのも楽しいし、私ががんばって出す技を受け止めてくれるのも楽しい。お互いが持っている力をぶつけ合って、受け取り合って投げ返し合うなんてプロレスしかないんじゃないかなと。
スポーツの多くは自分をぶつけるだけになることが多いでしょうけど、プロレスはお互いの技を交換し、コミュニケーションがありながら闘う。でも協力するわけじゃない。その絶妙なバランスがリング上にある。それって他には類を見ないのかなと。選手の組み合わせで全然違う中身になるし、ユニークなルールの試合があっても成立する。奥が深くて、どこまでも追求していけるジャンルなのかなと。
——「いい芸人はいいプロレスラーと同じ」と言われる。相手のギャグを受けて受けて、「でもオレのほうがおもしろいだろ」と必殺ギャグで上回るところが。
咲村 ダンスバトルの、対戦相手がこう踊ったから自分はこんな技を見せるとか、ラップバトルも近いものを感じますけど、身体と身体がぶつかり合ってやるのはプロレスしかない気がしますね。
それを0.1秒の動きでやれるレスラーはすごいなと思います。レスリングをはじめ柔道、キックなどプロレスを構成している要素も豊富で、見ていて飽きない。そこにアクロバット的な要素も入りますからね。自分が出来るわけではないですが(笑)。
——短期間で勉強が進んでますね。今、女子プロレスが人気になってきていると思うんですが。
咲村 女子プロの選手が女性誌で取り上げられたりして、人気は実感します。レスラーみなさん、かわいいですしね。
——昔、女の子のあこがれの職業がキャバ嬢だったように、女子プロレスラーがあこがれの職業になる可能性があるかな。
咲村 そうなってほしいですね。私、プロレスほど健全な職業はないなって思うんです。ぶつかり合って闘って、勝って人気が出た選手が上に行く、素直な世界だなと思います。
——上に行くために必要なファイトスタイルについてと、今年の目標は。
咲村 ファイトスタイルは、昔からプロレスを見ていたわけではないからか、まだ模索中です。早く確立させて、今年はベルトに挑戦して、取りたいです。挑戦させてもらえる結果を出していきたい。グラビアやアイドルやそれ以外にも様々な芸能活動と並行してがんばるので、今は体力作りのため食費がかさんで大変です(笑)。
取材・構成:松野大介
松野大介
元芸人の作家。著書に小説『芸人失格』『インフォデミック』や共著『三谷幸喜 創作の謎』等多数。
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