昨年ミス東スポに輝いた、童顔で明るい堀このみさん(29)は今年2月にプロレスラーデビュー。不器用ながらがむしゃらに頑張るオールドルーキーを育てるのは、かつてFMWで邪道姫・アイドルレスラーで名を馳せた工藤めぐみさん。
ーーまずは堀このみさんに、グラドルになった時からのお話を。
堀:21歳の時に事務所と契約いたしまして、大阪から上京。でもコロナ禍に仕事が激減して、バイトしたりするうちに20代後半に。「この先どうしよう」と悩み、ミス東スポを受けて選ばれなかったら芸能界をやめようと決め、どうにか受賞の6人に選ばれました。
「6人の中で一番大きな爪痕を残さないとやっていけない」と思い、東スポさんに関連したことで自分をアピールできることはないかと考えたのが競馬、エロ、プロレスの3つ。競馬は6人の中に一口競馬の馬主の女の子がいたんです。エロは、関係者から「あまりお勧めしない」と言われて。残るのはプロレスしかない。「この6人の中で誰もプロレスはしないだろう!」と思い、授賞式で「プロレスラーになりたいです!」と宣言。そしたら東スポさんの方が、ZERO1に女子部が出来ると教えてくれて、紹介してくれたんです。
ーー元々のプロレス好きではなかったんですね。試合を見て体型には恵まれているとわかりましたが。
堀:でも運動経験は特にないんです。学生時代は帰宅部でしたし。小学生の頃は水泳をやっていましたが、溺れない程度の泳ぎだけで。ただ健康優良児でした。紹介していただいたZERO1さんのイベントに行き、「入れていただけないでしょうか」と直談判。
工藤:パッと見て身長が高くて、見た目も明るいし、何よりやる気が感じられたので、入れました。
ーー28歳から始めることに抵抗はなかった?
堀:まったくないです。人生最後の挑戦と決めましたから。でも現実は甘くなかったです。
工藤:4ヶ月かかってます。
堀:あははは(笑)。
ーー私、やっていけるのかな? と思うことはなかったかな。
堀:それは思ったことないです。出来ないことが出来るようになっていき、日々上達するのが楽しくて。
ーー工藤GM。プロデビュー戦をやってもいいという基準はどういうところですか?
工藤:まずは受け身です。これが出来ないと大ケガしますので。
堀:プロテストは一回目に落ちてしまいました。「次は絶対に受かるぞ」と意気込んで受けた二回目は、仮合格を頂きました。
ーー仮合格でも試合には出られるんですね?
工藤:取り消されることもありえるという前提で、デビュー戦にのぞんでもらいました。
ーー厳しいんですね。観戦しましたが、ドロップキックを連発しても大ベテラン選手(堀田祐美子)には歯が立たないという、昭和にもあったデビュー戦の奮闘ぶりでした。
堀:ある程度は出来るんじゃないかと思っていたら、試合になると自分に出せる技がドロップキックとエルボーしかなくて・・・。堀田さんには練習も見ていただきましたが、試合の堀田選手は全然違って怖かったです。まったく余裕がないまま負けましたが、観に来てくれた友達が「よかったよ」と号泣してくれて。グラビアのファンの方には「がんばってる堀このみを応援する」と言ってくださる人も。
ーー親御さんの反応は?
堀:試合には誘っていないです。
ーーこの一ヶ月余り連戦を積み、6戦目は大先輩で体重が倍くらいの伊藤薫選手。
堀:ドロップキックの二発目で伊藤さんが倒れたんですよ。「あ、成長できたのかな」と思えました。
ーーレスラー生活は楽しいですか。堀さんにとってプロレスをやる魅力は?
堀:私、今まで何をやってもずっと平均点ばかりだったんです。プロレスは、何も出来ない一番下のところから、一つずつ出来るようになって上がっていくので、それが楽しい。人生で初めて自分の成長を感じられて、周りから成長を認めてもらえるのも人生で初めて。それと、勝ち負けだけではないところ。負けてもファンの人の記憶に残れば、それは勝ち。
ーー堀選手を教えている工藤さんは今、団体のGMという立場。経緯と仕事内容は?
工藤:27歳で現役を引退後はプロレス番組のMCをさせていただいていましたが、大仁田厚さん(※FMWのエースとして一斉を風靡)を中心にZERO1が運営していた「超花火」大会にEPとして参加したことがきっかけで、プロレスの世界に戻ったんです。ZERO1のGMは20年から。人手不足なので何役もやっています(笑)。やりがいはあります。引退してもプロレスに関わっていられるんですから。プロレスでいい時代を過ごさせてもらいましたので、恩返ししたい気持ちです。
ーー試合には出なくても会場にはくどめファンが多くいましたね。
工藤:私がデビュー40周年ということもあって、昔からずっとファンの方たちが来てくれて嬉しいです。ZERO1を観に来てくださる方は温かいんですよ。うちでデビューした堀選手を応援してくれて、私を応援してくれている方は私が教えているからと堀選手を応援してくれる。ファンが一つの輪になっています。
ーー堀選手は工藤GMの現役を知らない世代ですが、有刺鉄線電流爆破デスマッチで傷だらけになる試合は動画で観ましたか?
堀:練習生になる前に「工藤めぐみさんが教えてくれるんだ!」と思い、観ました。リングで爆発してました!!
工藤:(笑)
堀:「私の知ってるプロレスとは違う!!」と思いました。怖い方なのかと思ってお会いしたらとてもやさしい方で。
ーー自分もアレをやらされるのか! と思いませんでした?
堀:「爆発だけはちょっと・・・」とお願いしました。
工藤:正確には「爆破」ですから(笑)
ーー最近の女子プロレスに入ってくる女の子は、80~90年代と比べてどうですか?
工藤:私の時代は女子プロレスラーになりたくて入ってきた子が多かったので、プロレスの知識や業界のことをある程度知っていたんです。今は堀選手のように何かのきっかけでこの世界に入ろうと思ってから観始めたり調べてくる子がいるので、華やかなところしか知らない。だから現実とのギャップを知って驚きますね。
ーーギャップの違いを感じましたか?
堀:人生でこれだけ「おまえは赤点だ!」「プロレスに向いてない」「動きが悪い」「動きがブスだ」と言われたことはないです(笑)
ーー体育会系だから口が悪い。でもレスラーはあまり陰口を叩いたりしない。
堀:陰険さはまったくない世界です。
ーードラマ「極悪女王」や上谷沙弥選手(※スターダム所属)の人気もあり、女子プロが注目されているのは実感しますか?
堀:それは感じます。上谷さんが雑誌の表紙になられてすごいなと。私でもプロレスを始めてフォロワー数が増えましたしまし。
ーーいろんな表現がある中で、プロレスを選ぶ女の子が一定数いるのはなぜでしょう?
工藤:歌やダンスやお芝居などいろんな自己表現があると思うんですけど、リング上での闘いを通して自己表現するのがプロレス。リングで受ける声援や拍手はリングの上でしか味わえないんです。そして男子プロレスにはない華やかさもある。そこが魅力じゃないかと。
ーー堀選手の目標は?
堀:東スポさん主催のプロレス大賞の新人賞をとりたいです! それと、4月に立ち上げる女子団体Roseはまだ3人しかいないので、エースになりたい。
ーー今は小さな団体が増えて、興行での選手の貸し借りが多いみたいですが。
工藤:90年代は、別の団体とはバチバチの関係で、ようやく対抗戦で試合をして、それも殺気が漂っていましたけど、今は横のつながりを大切にして女子プロ全体をみんなで盛り上げようという風潮です。
ーー伝説的な対抗戦の殺伐とした雰囲気は今はない?
工藤:むしろ温かい雰囲気で団体同士が交わっています。
ーーでも各団体に選手が増えていけば緊張感が出るかも。
工藤:私はそれを目指しています。バチバチの空気の中でいい試合が生まれた時代を経験していますから。和気あいあいもいいですけど、闘いの本質は何が起こるかわからない緊張感じゃないですか。でも今はそこまで闘える戦力がないので、希望者がいたら、どんどん新人を入れて選手を増やしたい。
ーーそしたら堀選手は抜かれることも。
堀:絶対負けません。
ーー新人ではなく、他団体からすごい選手が入ってきたら?
工藤:その可能性はあります。
堀:ええー!! 怖いよ。練習がんばるんで、見捨てないでください。
ーー次世代の堀選手に伝授したいことは?
工藤:技術面は、いくらでも教えられるんです。それよりも、プロレスに対する考え方、向き合い方を受け継いでほしい。それは「諦めないこと」と「素直さ」の2つ。私自身、今まで何人もの女子レスラーを見てきて、人の言葉や意見に耳を傾ける素直さがないと、伸びないんです。その素直さを堀選手は持っているので、百回やって出来なくても諦めなければ見放すことはないです。その2つを伝えることが私の一番の仕事だと思っています。
<試合情報>
★新団体Rose旗揚げ大会は4月25日(土)にTOKYO SQUEAR in itabashiにて開催!(プレ旗揚げ大会は4月11日(土)に千葉・2AWスクエアにて開催)
★10月17日(土)には工藤めぐみ40周年記念大会「邪道姫伝説」(代々木国立競技場第二体育館)開催。
取材・構成:松野大介
元芸人の作家。著書に小説『芸人失格』『インフォデミック』等多数。共著に『三谷幸喜 創作の謎』が絶賛発売中。
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