■社会課題の「闇バイト」に産官学で取り組む
「バイトル」などを展開するディップ社が「渋谷闇バイトゼロプロジェクト」を始動、4月2日にメディア向けに発表会を行った。
今回のプロジェクトは渋谷を拠点にした産官学の取り組みで、一般社団法人・渋谷未来デザインと共催し、渋谷区の後援、警視庁 匿名流動型犯罪グループ対策本部の協力を得てすすめていくという。
「若者が危険に気づけないまま人生を大きく狂わされてしまう。こうした現実を私たちは見逃すことはできない」発表会の冒頭でディップ社の冨田英揮CEOはこう問題意識を語った。
同社が高校生を対象に行った調査では、9割の対象者が「闇バイト」という言葉を認知していたものの、7割が闇バイト求人だと見抜けなかったという。渋谷を拠点にすることについては「日本を代表する若者の町であると同時に、最もリスクが顕著な場所」と説明、続けて「スクランブルスクエアには当社のディップビジョンがあり、プロダンスチームのディップバトルズもあります」と会社とのゆかりをアピールした。
その後に行われたパネルディスカッションでは、渋谷区長の長谷部健氏、渋谷未来デザイン理事の大西賢治氏、警視庁 匿名流動型犯罪グループ対策戦略企画官の植田哲也氏らも登場し、マイクを握った。
一番声に熱がこもっていたのは、闇バイトを手駒として扱うトクリュウと日々対峙する植田氏。「闇バイトはトクリュウの指示のもと人からお金を奪って、そのお金を上納したら切り捨てられます。この闇バイトに関わると、民事そして刑事(罰)という大きな代償を背負って一生生きていかなければならなくなる」とし、「若者の皆さんには闇バイトを見抜く能力、そして友人からのあやしい誘いを断る勇気を持ってもらいたい」と語った。
■実際に何が行われるのか?残った突っ込みどころ
今回のプロジェクトで具体的に何が行われるのかと言えば、渋谷からの情報発信や警視庁とのデータ連携のほか、イベントにも登場した伊沢拓司氏の「QuizKnock」とコラボレーションしての啓発動画の作成や、渋谷区にある第一商業高校などをはじめとした教育機関との連携とのこと。
またディップ社はこれに先んじてAIを活用した求人票のチェックや、求人掲載企業への面談に力を入れてきたとのことだ。過去闇バイトと疑われるような求人の掲載はあったのか冨田CEOに聞いてみると、「携帯電話の買取り(購入代行)などの事例はあった」としつつ「企業側に対面でインタビューし、現場に足を運んでいるので基本的に(怪しい求人は)弾けている」と答えた。また求人掲載後に万が一闇バイトだと判断した場合は、ヒアリングの後警視庁への告発も行っていくことを示唆した。
しかし果たして今回のプロジェクトに実効力はどこまであるのだろうか。
まず渋谷は若者の街と言っても、そこに集まるのは都市部の比較的裕福な、教育水準も平均以上の若者ではないか。闇バイトに手を出す動機や背景は薄い層なのではないか。地方の若者にはどうやって波及させるのか。
また今回のプロジェクトでは闇バイトが一番跋扈しているSNSへの具体的施策が見当たらず、突っ込みどころが残った。
官学と連携して「闇バイトゼロ」をブチ上げたディップ社のビジョンや巻き込み力は素晴らしい。しかし渋谷の前に「求人掲載メディア全体での闇バイト撲滅」を目指す道の方が確かではないか。となれば「タイミー」「リクルート」などライバル企業と手を組むのもアリかもしれない。
取材・文:BEST T!MES編集部
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