「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯)」(金融広報中央委員会・2016年)によると、年収750万円以上1000万円未満でも金融資産ゼロという世帯が15.7%、1000万円以上1200万円未満だと、金融資産ゼロの世帯が20.3%にもなります。そして世代別に見ると、40代の約35%、50代の約29%が金融資産ゼロと回答しています。
なぜ、彼らは高収入でもお金が貯まらないのでしょうか? 新刊『安倍政権は消費税を上げられない』を上梓した、経済ジャーナリストの荻原博子さんはこう語ります。■40代と50代は高収入でも貯金ができない!?

「2020年以降、日本には厳しい不況が訪れる」

 第2回の記事では、このような話を述べました。消費税が先送りになったとしても、今の生活が決して楽になるわけではありません。

 そうなると、最も大変な世代は今の40代・50代だと考えられます。

 60代以降は、すでにリタイアして年金生活をしている方も多いので、今までの経済常識のまま一生を終えることができるかもしれません。いわゆる“逃げ切り組”ですね。

 いっぽう、20代・30代は、インターネット社会という、これまでとまったく価値観の違う時代に生きています。彼らがあと20年後に社会の中枢に来た時には、いまとはまったく違った社会が出現していることでしょう。

 問題は、その狭間にいる40代と50代です。この世代が社会人になった20年前は、終身雇用が崩れ、年功序列が崩れ、それまでの経済常識が大きく変わった時代でした。

●金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」[二人以上世帯調査](2016年) 金融資産非保有世帯比率(年間収入別)

50代“女性”が一番ヤバイ!「家計破綻予備軍」にならないため...の画像はこちら >>
階層Ⅰ:収入はない/階層Ⅱ:300万円未満/階層Ⅲ:300~500万円未満/階層Ⅳ:500~750万円未満/階層Ⅴ:750~1000万円未満/階層Ⅵ:1000~1200万円未満/階層Ⅶ:1200万円以上/


「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯)」(金融広報中央委員会・2016年)によると、年収750万円以上1000万円未満でも金融資産ゼロという世帯が15.7%ですが、1000万円以上1200万円未満だと、なんと金融資産ゼロの世帯が20.3%にもなります。

 しかも世代別に見ると、40代の約35%、50代の約29%が金融資産ゼロと回答しているのです。

 

 なぜ、彼らは高収入でもお金が貯まらないのでしょうか。そこで今回は、40代と50代、この2つの世代の特徴と、これからの生き方について説明したいと思います。

■バブルを引きずり、堅実さが欠如している50代。とくに問題なのは…

 人生におけるお金の貯め時は、50代から60代。子どもが自立し、家計の負担が減るこの期間に、どれだけしっかりお金を貯められるかで、老後の生活に雲泥の差が出てきます。

 ところが、その肝心の50代の多くが「お金を貯められない」という悩みを持っています。

 なぜ、貯められないのかというと、今の生活のランクを落としたくないという人が多いからです。しかも、今の50代はバブル景気の頃に青春真っただ中だったので、お金を使う楽しさを知っている世代でもあります。

 また、バブルが弾けても10年くらいは民間の給料は下がっていなかったので、収入が減ることに対する切実さを感じていない人もいます。加えて、今の若い世代と異なり、両親がお金を貯め込んでいる人も多く、心のどこかで「いざとなったら親の財産を頼ればいい」と楽観的に考えているケースもしばしば見受けられます。

 それでも、今の50代の男性は、社会がグローバル化した波をモロにかぶり、給料カットやリストラなどの憂き目に遭う人も多かったため、それなりに金銭感覚が鍛えられてきています。

 

 問題なのは、今の50代の女性です。

彼女たちは20代半ばで結婚し、専業主婦として育児に一生懸命だった人が多く、そのため社会が激変したことに気づかず、バブル期の感覚を引きずっているケースがあります。若い頃に海外有名ブランドに憧れた感覚のまま、ワンランク上の生活を求め、切り詰める生活にいまだに順応できないのです。

 50代にはこうした感覚の女性が少なくないため、子どもの手が離れて友達同士で遊ぶ際、見栄を張ってお金を使う傾向があります。その結果、収入に見合った生活ができない「家計破綻予備軍」ともいえる人たちが増えているのです。

 彼らのようにバブルを引きずったままの人たちは、老後のためにも早急に金銭感覚を変える必要があります。今までよりも生活のランクを下げることに抵抗はあるでしょうが、生活を下げるための工夫を通じ、いろいろな発見をすることは楽しいことです。そして、「他の生活だってできるのだ」と思えたら、自信にもつながります。今までできなかったことができれば、もっともっと自分が生きていく世界が広がるはずです。

 それが本当の、「ワンランク上」の自分なのです。

■堅実なのに「こうあらねば」という思いで自分を縛る40代

 40代にはバブルを知らない人も多いですが、バブルが崩壊したツケだけはしっかりと払わされていて堅実なのになぜかお金が貯まらないケースが多々あります。

 この世代は1990年代半ばから2005年頃にかけての就職氷河期に社会人になった人が多く、非正規労働者として働いている人も少なくありません。その上、親から「こうあらねば」と教えられて育ったのに、世の中に出てみたら事情がまったく変わっていたという世代です。

 彼らの親の世代は、多くが人生の勝者となっています。その背景には、完全な終身雇用、年功序列がありました。いったん会社に就職すれば、あとはよほどのことがない限りエスカレーター式に上に登っていった世代です。

 ところが、今の40代が社会に出てみると、様相は一変していました。冷戦が終わり、世界がグローバル化し、能力主義といわれて理不尽に給与をカットされたりリストラされたりする時代。努力しても報われるとは限らない時代になっていたのです。
 しかも、「自分の家を持ってこそ一人前」と親にいわれ、家を買って住宅ローンの支払いに追われる。さらに、40代は受験戦争で苦労した世代のため、自分たちの子どもには苦労させまいと教育資金を注ぎ込んだ結果、貯金が出来ない状況に陥っている家庭が少なくありません。

 家を買い、車も買い、子どもは大学まで行かせる。そんな生活を維持したいと思っている最後の世代が40代でしょう。

 

 けれど、そのために無理をしているのもこの世代。もっと生きていくことをシンプルに考えて、なにが大切か、なにを切り捨てていくのか、人生の取捨選択をもう一度やり直したほうがいいでしょう。

 40代は、他のどの世代よりも「夫婦で荷物を分かち合う」と考えて進まなくてはいけない世代です。2人で働き、2人で家計を切り盛りしていけば、給料が上がらない中でもなんとかやっていけるはずです。そのためには、2人で頑張るための目標を、なるべく早い時期に立てたほうがいいでしょう。

『安倍政権は消費税を上げられない』より構成)

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