■普通の「白いかもめ」に乗車
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長崎駅で発車を待つ白いかもめ

 長崎から博多まで移動することになったので、JR九州が誇る「特急かもめ」を久しぶりに利用することにした。途中、諫早で途中下車して立寄るところがあったので、長崎から諫早までは普通車、諫早から博多まではグリーン車を利用して乗り比べる旅となる。

JR九州の「白いかもめ」普通車とグリーン車乗り比べの旅
出入口付近の車体

 JR長崎駅は、規模は大きくないけれど行き止まりの終着駅で独特の雰囲気がある。これで大きなドームで覆われていればヨーロッパ的なターミナルとなるのだが、やはり日本の駅である。ドイツの高速列車ICE3に色も形もそっくりな885系特急電車、通称「白いかもめ」が発着し、異国情緒たっぷりの長崎の玄関だけに国鉄時代の香りを今なお残す古びた駅は、やや残念な気もする。もっとも、九州新幹線長崎ルートが完成すると、長崎駅の雰囲気も一変するようだから、現在の様子も近い将来変わってしまうようだ。

JR九州の「白いかもめ」普通車とグリーン車乗り比べの旅
普通車デッキ 

「白いかもめ」は6両編成。博多行きの場合は6号車が先頭で、グリーン車のある1号車は最後尾だ。諫早までは3号車の普通車を利用する。普通車といえども革張りの黒いシートで心地よい。座席上方の荷棚は航空機のようなハットトラックと呼ばれる収納式タイプ。カラフルなバッグや手提げもすべて収納されて見えなくなるので、車内は落ちついた上質な空間となる。

「白いかもめ」は観光列車ではなくビジネスパーソンの利用も多いけれど、車内のいたるところにフリースペース(JR九州ではコモンスペースと呼んでいるようだ)がある。ちょっと腰かけるのに都合のいい止まり木のようなスペースや車窓を眺めるようになっている立席、書など和のテイストがたっぷりのギャラリー風スペースなど遊び心にあふれている。

座り詰めで退屈したとき、通路側の席で窮屈な思いをした時、超満員で自由席に座れなかったときなど逃げ場があるのは助かる。いずれも水戸岡鋭治氏ならではの遊び心があって楽しい車内だ。

JR九州の「白いかもめ」普通車とグリーン車乗り比べの旅
コモンスペースのギャラリー

 個性的な車両ではあるけれど、885系は登場以来はや20年近く経っている。最近の車両のようにコンセント付きの座席はごく一部だと聞いていたが、幸いにも窓下にコンセントが付いていて助かった。

 長崎駅を出て市街地を走り抜け、浦上に停車すると、地下鉄に乗り入れるかのように高度を下げてトンネルに入る。山の中を進み大村湾沿いにのんびり走る旧線は時間がかかるので、1972年、長崎トンネルによるショートカットの新線が完成してから、優等列車はすべて新線経由なのだ。複線だと思ったら実は単線でトンネル内に信号場がある。以前、快速シーサイドライナーに乗っていたら、トンネル内で停車して特急とすれ違ったことを思いだした。

 長崎トンネルを抜け、短いトンネルをいくつもくぐると、旧線と合流して喜々津駅を通過、ここから諫早までは複線となるが、車内放送で諫早到着が近いことを知る。諫早まで18分とはあっけない。

 諫早で下車し、島原鉄道で島原外港まで往復した後、諫早に戻って、午後、再び「白いかもめ」の客となる。今度はグリーン車を利用する。

■乗り比べ後半。やっぱり快適な旅に
JR九州の「白いかもめ」普通車とグリーン車乗り比べの旅
1号車は運転台寄りの半分がグリーン車

 博多行きの「白いかもめ」のグリーン車は最後尾の1号車の後ろ半分。こぢんまりした車内に12席しかない。有明海の車窓が楽しめる進行方向右側を選んだのだが、こちらはA席で1人席。通路をはさんだ反対側は2人席に見えるけれど、よく観察すると、微妙に離れた1人席が並んでいる。そちらは、C席とD席となっていて、グリーン車にB席はない。

JR九州の「白いかもめ」普通車とグリーン車乗り比べの旅
車内の案内表示

 出入口から入ると一番手前の席だったので、座ると目の前は壁である。といっても、圧迫感はなく、広めのテーブルが目の前にあり、窓と反対側は仕切りがあるので、半個室のような落ちついた配置となっている。コンセントもあり、グリーン料金を払うだけのことはある。

JR九州の「白いかもめ」普通車とグリーン車乗り比べの旅
グリーン車の車内

 列車は右に大きくカーブして大村線と分かれる。元々は大村線が長崎へ向かう本線で、現在の有明海沿いの区間は後からできたので、このような線形になったのである。しばらく走ると、有明海が見えてきて、やがて海岸沿いに走るようになる。

遠浅で干満差の大きな海らしく、波打ち際は干潟のようになっているところが多く、独特の風景だ。

JR九州の「白いかもめ」普通車とグリーン車乗り比べの旅
車窓から眺める有明海
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車窓から眺めた入江

 カーブも多く、885系は振り子構造を活かして、走り抜ける。ただ、グリーン車の座席はふわふわした感じで、宙に浮いたような気分になり、ちょっと不思議な乗り心地だった。肥前鹿島に停車すると、有明海と分かれて平野の中を北上、肥前山口で佐世保線と合流して、ここからは複線となる。

 

 ようやく幹線らしい雰囲気となったが、平野を走る抜ける車窓は、絶景とは言えない。かなりのスピードを出し、唐津線と合流する久保田を通過、嘉瀬川を渡り、臨時駅のバルーンさがを過ぎ、貨物用のコンテナが並ぶ鍋島を通り、高架になると佐賀に停車する。

 佐賀からは利用者も多く、グリーン車もほぼ満席になってしまった。以前、佐賀から自由席を利用したら、席が見つからず車内をウロウロした経験もある。かもめは常時混雑しているようだ。

JR九州の「白いかもめ」普通車とグリーン車乗り比べの旅
新鳥栖を発車

 気分転換に席を離れる。グリーン車室のドアとデッキの間には個室のようなフリースペースがある。サービスカウンターとの表記があるので、かつて客室乗務員によるサービスがあった時代に準備室として使われていた時代の名残であろう。

携帯電話使用やひとりで車窓を眺めるなど、文字通りのフリースペースと言える。車内広報誌が置いてあったので1冊いただいて席に持ち帰った。
九州新幹線との乗換駅新鳥栖に停車し、すぐに左にカーブして鹿児島本線と合流すると鳥栖である。このさき、二日市に停車するかもめもあるけれど、乗車した列車は博多までノンストップ。21分で駆け抜けていった。

JR九州の「白いかもめ」普通車とグリーン車乗り比べの旅
鹿児島本線を快走する白いかもめ

 基山では、甘木鉄道の車両が一瞬見え、原田では筑豊本線と分かれる。博多に近づくとすれ違う列車も増え、西鉄の線路が高架線でオーバークロスし、JRの車両基地の脇を過ぎると、スピードを落とし、ゆっくりと博多駅に滑り込んでいった。

 ソニック、みどり、ゆふいんの森やカラフルな通勤電車など個性的な車両が発着し、目を楽しませてくれる博多駅。改札口を出ると、構内は大勢の観光客やビジネスパーソンでごった返していた。

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