
2019年3月28日、相模鉄道(以下、相鉄と略す)とJR線の直通運転開始が11月30日と発表され、同時にその直通運転で使用される相鉄の新型車両12000系が報道陣にお披露目された。
12000系は、相鉄が車両の塗色として2016年以降導入しているヨコハマネイビーブルー(YOKOHAMA NAVYBLUE)という濃紺の車体だ。

車内は、オールロングシートの通勤型車両なので華やかさ、豪華さはないけれど、現代的で居心地のよい雰囲気を醸し出している。車内照明が昼白色と暖色系の2種類あって時間帯によって変えられたり、楕円形のつかみやすい吊り手、相鉄ならではの車内にある鏡、ユニバーサルデザインで誰にも使いやすい車端部の座席など、よく工夫されている。これなら、直通運転では1時間を超える乗車時間となっても車内で過すのが苦にならないであろう。

相鉄本線の終点海老名駅のひとつ横浜寄りにあるかしわ台駅に隣接した車両基地内でピカピカの12000系に乗り込む。ホームがないので航空機のタラップのような仮設の階段を上って車内に入る。参加者数に比べて格段に余裕がある10両編成というキャパシティなので、7人掛けシートをひとりで独占できるほどだ。ゆったりくつろいでいると、電車は静かに動き出した。

暗い車庫の中から外へ出ると、車両基地の人たちが手を振って見送ってくれる。
かしわ台駅で10分程停車。ホームに降りて最後尾の車両を撮影したり、駅の様子を見た後、車内へ戻る。いよいよ発車時間だ。

なめらかにスタートして、12000系は相鉄本線を快適に走りだす。周囲は一戸建てやマンションが目につく郊外の住宅地である。しばらくすると畑も目につき、春らしく菜の花で黄色に染まっている。6車線もある幅の広い東名高速道路を一気に渡り、緑あふれるふれあいの森公園の近くを通り過ぎると、地下にもぐって小田急江ノ島線との乗換駅大和に到着する。

再び地上に出ると、相変わらず住宅地が続く。気分を変えて先頭車両の運転台後ろに行ってみた。


二俣川の2つ先の西谷(にしや)が近づくと線路際は工事に余念がない。西谷から相鉄・JR直通線が分岐するからである。駅の手前では引き上げ線を整備中だ。都心からやってくる電車の一部はここで折り返すものと思われる。西谷駅のホームの真上を東海道新幹線が斜めに横切っていて、折しも東京行きの列車が矢のように猛スピードで通過していった。西谷駅は2面4線という待避線のある駅で、両側の待避線が横浜方面に延びて地下へもぐってJR直通線へと進むようになっている。直通線が開業すれば、12000系は、ここで本線と分かれて新線に乗り入れるのだ。試乗会では素直に横浜駅方面へ向かうが、今から直通運転が楽しみである。

上星川駅あたりで帷子(かたびら)川が寄り添ってくる。河畔の桜は満開だった。


やっとのことで出発し、次の天王町を通過すると、右側にはJR東海道本線と横須賀線の線路が現われる。ここでJR線と直通してもよさそうだが、様々な事情から簡単にはいかず、西谷から分岐することになったのだ。JRの15両もの長大編成の電車が行きかっているのを見ながら、12000系は減速して西横浜駅のホームに横付けとなる。予定では西横浜駅下車となっているのだが、単純にこのホームで降りるのではなかった。
一旦停車の後、12000系は動き出し、ホームの横浜駅寄りで本線からはずれて側線に入る。しばし停車して、本線を走る電車をやり過ごし、やっとのことで西横浜駅脇にある留置線に進入すると、ここが終点だった。乗ったとき同様、ホームのない線路なので、タラップのような仮設の階段を恐る恐る下って地上に降り立った。

何本かの線路が並ぶ留置線の脇で待機していた貸切バスに乗り換え、JR直通線開業と同時に誕生する羽沢横浜国大駅へ向かい、レール締結式と駅構内を見学した。
着々と開業準備に追われる相鉄・JR直通線。
取材協力=相模鉄道