絵文字進化論第4回(後半)の記事には、日本の顔文字に使われる外国の文字・記号類が非常に豊かだという話をしました。定番の顔文字だけでも、
ローマ字:m(_ _)m、(T_T)
ギリシア文字:(・∀・)、( ^ω^)
キリル文字 :(*゚Д゚*)、ъ( ゚ー^)」、щ(゚Д゚щ)
などがあります。
さらに最近では、ユニコードに収録されている全ての文字がアプリを使えばスマートフォンで打てるようになりました。その結果、普段はなかなかお目にかからないエキゾチックな文字まで気軽に使えるようになりました。
ლ(◕‿◕。)ლ ٩(๑`ȏ´๑)۶// (。☉౪ ⊙。) (๑ఠ‿ఠ๑) といったちょっと雰囲気の変わった顔文字も見かけるようになりましたね。
これだけ外国の文字が日本の顔文字に使われているわけですが、それとは逆に日本の文字が海外の顔文字に使われたりすることもあるのでしょうか? 実は、たった一つですが、海外で大活躍している日本の文字があります。どの字か分かりますか? 答えは片仮名の「ツ」です!
実は日本のカタカナ「ツ」が、ツイッターやVkontakteというロシアのSNSで頻繁に姿を表しています。この顔文字「ツ」は欧米風に言うと「スマイリー」と呼ばれます。
「ツ」の上の点々は目で、ノの部分は口なのです。
日本の「ツ」が海外で流行った理由は、その形が :) や ;) といった欧米式の顔文字に似ていることにあるでしょう。「ツ」が顔文字として使われ始めたタイミングですが、ツイッターの検索機能を使って調べてみたところ、2007年頃のようです。
■ツイッターを調べたら出てきたゾ!ポルトガルの街角にもあった!例えば、一番最初にあらわれたものを調べてみると、次のようなつぶやきがヒットしました。
上から1番目のつぶやきは、
「誰かのプロフィールページでこれ ( ツ) を見ましたが、どうやって入力できるんですか?」と「ツ」の入力方法を知りたいという問いかけです。
2番目のつぶやきは、
「クールスマイリー ツ」とあって、「ツ」がカッコいいと評価していますね。
2009年頃からさらに広く「ツ」が海外のSNSで広く使われるようになって、様々なバリエーションも生まれました。例えば、「ツツツ」のような連続スマイリーや、括弧で囲った【ツ】、「 ♥ツ」 のようなハートとの組み合わせなどです。さらに丸で囲んだ ㋡ ←これなんかはまさしく定番のスマイリーマークのようですね。

さらに、ポルトガルの街でこんなものも見かけました。お店のロゴマークとして「ツ」らしきのものが使われていたんです。

さらにさらに、¯\_(ツ)_/¯のように「ツ」をスラッシュや括弧で挟んで、上半身を表す顔文字もあります。これは肩をすくめて手のひらを上にするポーズで、「さあ」「知るものか」「どうしようもないな」「どうでもいいわ」など幅広く意味を表現できるものです。英語では「shruggie」(shrug「肩をすくめる」から)と呼ばれていて、ロシア語では「пожималкин」と言いいます。同じく「肩をすくめる」の意味です。
この¯\_(ツ)_/¯は、2010年頃に使われ始めてから、2015年をピークに欧米のSNSで爆発的な人気を得ました。人気のあまり¯\_(ツ)_/¯の歴史を追究する記事まであらわれたほどです。(参考:https://theawl.com/the-life-and-times-of-%E3%83%84-39697541e6ac#.4qm4377re)
さらに¯\_(ツ)_/¯はTシャツのデザインで使われるまでにもなったんです。

(¯\_(ツ)_/¯は「さあ?性別はわからないね/まだ決めていない」 という意味です)
画像の出典: https://www.redbubble.com/
これほど人気者だった¯\_(ツ)_/¯は、2016年にUnicode 9.0のバージョンに追加され、絵文字化を果たしました。

カタカナの「ツ」から絵文字につながるとは…予想だにしない展開でした。
興味深いのは、¯\_(ツ)_/¯はJapanese kaomojiと呼ばれることがあるのですが、日本独自の文字要素は「ツ」だけだということです。しかも、周りの日本人に意見を聞くと、「ツ」は文字として見慣れているため、どうしても「つ」と読んでしまって、形だけで捉えるのはなかなか難しいそうです。
¯\_(ツ)_/¯のお手上げのジェスチャーも欧米では一般的ですが(私の2歳の息子がもうしているくらい)、日本ではあまり使われていませんね。
日本人は、「疑い」や「当惑」を表す時には首を軽くかしげるほどで、肩をすくめたり、手で大げさなジェスチャーしたりすることは滅多にありません。日本では¯\_(ツ)_/¯が人気がないもう一つの理由は、こうしたボディランゲージ習慣の有無にあるのでしょう。