■ぼく、街金やってます
街金業者だから語れる―闇金との違い、お金の魔力、債務者のウソ...の画像はこちら >>
 

 はじめまして。
 池袋北口の風俗ビルに入居する街金ではたらいているテツクルです。

 投資家たちから年利10%でお金を借りて、債務者に15%で貸しています。
 まず、街金を誤解している人が多いので、説明させてください。

 街金と闇金はまったくベツモノです。

 国や都道府県に貸金業者として登録して、強烈な監視の下でお金を貸しているのが街金です。
 街金は、法律で定められた金利の範囲でお金を貸しています。
 範囲といっても、上限いっぱいですが。
 取立ても当然ルールの範囲内でやっています。

 いまは、夜中に取立てしたり「おいこら! 内臓(自粛)」とか脅したり、勤務先に取立てに行ったり、家族から取立てたり、これぜんぶアウトです。

 街金はルールをギリギリ守り、法定金利の上限ギリギリで貸しています。街金はギリギリセーフなんです。

 だから、街金を闇金とごっちゃにされるのは心外です。闇金が「ワシ街金王!」とか言うからややこしくなるんです。

 銀行やノンバンクから借りられない人に貸すのが街金、急な資金需要にも対応するのが街金、債務者との距離感がとても近いのが街金です。

 街金は、債務者の資金繰りに口出ししたりします。
 回収をスムーズにする目的が大半ですが、債務者の再起の可能性を模索しながらアドバイスすることもあります。

 街金にお金を借りに来る人は、前述の通り、どこからもお金が借りられない人なので、街金の顧客は全員債務超過と言っても過言ではありません。
 なのでぼくらは、債務者との距離を近く保ち、関係を築き、ちょっとした変化も察知できるようにしておく必要があります。
 これを徹底しているので、弊社は創業以来貸倒れゼロです。これ自慢です。

 ぼくがはたらいている街金では、年間100~150人の多重債務者に融資をしています。
 いまは不動産を担保に融資をしています。債務者が所有する不動産に抵当権を設定して融資をするんです。

 不動産を担保に取ってるんなら、貸倒れなんかしないだろ? とお思いでしょ?

 街金の場合、抵当権の順位が1番で貸せるケースの方が稀なんです。
 弊社は、先順位に銀行、ノンバンクがいても担保に余力があると判断すれば、順位に関係なく貸すんです。

余力の隙間に抵当権をねじ込んでるんです。
 後方の順位からいかに全額回収するか、ギリギリを綱渡りしている多重債務者に、ルールギリギリで融資するんですから、ギリギリの駆引き、攻防が求められます。

 だから、弊社の貸倒れゼロは誇れるんです。
 お金を貸すことはバカでもできる。回収まで考えて貸せるか。だからといってリスクばかり考えてたら誰にも貸せないわけです。

 街金からお金を借りる人は、90%以上が負の連鎖に陥っています。
 借りたお金が生き金にならない。肩代わり、支払い、一歩も前に進まない借金を積み重ねています。お金を生まない借金の利息を払い続けなきゃいけない。だから一瞬も目が離せないんです。

 利払日じゃなくても電話します。

世間話から資金繰りの状況を窺います。
 実情を探るためにアポなしで訪問したりもします。
 多重債務者は噓つきです。噓のストーリーを構成してお金を借りにきます。

 当然です。

 正直に話したら貸してもらえないんですから。
 そんな多重債務者の人たちは、お金についての発想が根本からズレている傾向があります。債務に追われてズレてしまった人も多いのかもしれません。
 お金に対する理性を失ってしまうんです。
 お金が最優先、お金のためなら、という発想、怖くないですか。

 お金のこと、どれだけ説いても、多重債務者は真摯に受け止めることはないので、ぼくの仕事は安泰なわけです。

 多重債務者との攻防は、澱んだ人間ドラマが垣間見えます。

 テレビの深夜ドラマで、無名役者の人たちが演じている後味の悪さを残す結末のアレ、です。
 そんな深夜ドラマのような日々の中で知ることができた、そんなお金の魔力とそれに取り憑かれた多重債務者の様子をお伝えしようと本を出させていただきました。池袋の雑居ビルにある街金で働くぼくなんかが、街金の日常を語る本です。 

『ぼく、街金やってます』(KKベストセラーズ)

 ぼくがお伝えしたいのは、イメージで言うと、フィンテックの世界じゃなくて、生臭い現金の世界。

 街金の仕事と多重債務者のこと話してます。 仕事やお金でお悩みの方、下には下がいる、自信もって今日も生きて。

 

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