皆さんこんにちは! 茨城県でヨガのインストラクターの傍ら、新米猟師をしているNozomiです!私のドタバタ連載は、まだ始ったばかり。ぜひよろしくお願いします!
さて前回は、猟師になるまでのフローや、私が実際に罠師になって初年度にかかった大まかな金額を綴らせて頂きました。
皆さんが“猟師”と聞いて思い浮かぶものはなんでしょうか?
私は真っ先に鉄砲を思い浮かべます。私と同じように、猟師と言えば、世間のイメージでは銃とセットになる方が多いと思います。
ですが、猟師のなかには鉄砲を持たない猟師も存在します。それは主に“網”をメインに使って狩猟を行う網猟と、私のように“罠”をメインに使って狩猟を行う罠猟“罠師”です。
銃猟のように、銃を使って積極的に狩りに行く“動的”な狩猟と違って、私が行っている罠猟は“静的”な、待ちの狩猟です。フィールドに罠を仕掛けて獲物がかかるのを、ただひたすらに待ち続けます。とても簡単な作業に聞こえるかもしれませんが、山の様子をよく観察し、けもの道(獲物がよく通る道)を見つけ出し、その中で的確に獲物が踏む場所に罠を仕掛け、見回りをします。正直、凄く地味なイメージがあるかもしれません。
でも、自分の畑に出る害獣を駆除したい、害獣を寄せ付けなくしたい、畑を守りたい、そんな私にはぴったりの猟法です!
罠猟のメリットですが、なんと言っても、(銃猟と比べると)諸手続きが簡単でコストも安く、初心者の方でも狩猟を始めやすい事だと思います!
つぎに、罠猟を始めるまでの費用と、銃猟を始めるまでの費用をざっくりとですがまとめておきました。お住まいの地域によって、また、作る罠の種類や揃える材料・猟具によって金額はだいぶ前後すると思うのであくまで一つの参考までに確認して頂ければ幸いです。
♦罠猟を始めるまでにかかる費用
①免許取得代、登録料、手数料など 約4万円~5万円
②罠代 《罠を手作りした場合》 罠1個あたり約1500円~
《罠を購入した場合》 罠1個あたり約5000円~
♦銃猟を始めるまでにかかる費用
①免許取得代、登録料、手数料など
《第1種銃猟(散弾銃・ライフル銃)の場合》 約11万円~12万円
《第2種銃猟(空気銃・圧縮ガス銃)の場合》 約7万円~8万円
②銃代 約30万円
上記の罠猟の金額は、私が今期使用した罠【くくり罠】の場合の金額です。
私は罠を安く、大量に作りたかったので自分で作りました。インターネットやホームセンターでなるべく安い材料を揃えて1個あたり約1700円程度で作ることができました。罠の種類や作り方については、また次回に深く掘り下げてお伝えしていきますね。罠をかける個数ですが、法律によってかけられる罠の個数は1人につき30個までと決められています。毎日の見回りの事を考えると上限の30個かけるのはなかなか現実的ではないかも? 先輩や師匠に毎回どれくらいの罠をかけているか調査したところ、実際に稼働させている罠の個数の中央値は10~15個前後でした! 私は仲間3人で免許をとり、罠猟を始めましたがやはり稼働させていた罠の数は30個前後でした! 1つのポイント(罠を仕掛ける場所)ごとに3~5つくらいの罠をしかけ、6つのポイントを3人交代でそれぞれの仕事の合間に見回りをしていました。ポイントは獲物の出没する場所、水浴びする場所、通り道など山奥にしかける事が多いです。
イノシシの通り道にくくり罠をしかけるNozomiの狩仲間・斎藤さん。一方の銃の金額ですが、やはり物によってだいぶ幅がありますね……! なかには引退する方から無料(!?)でお古を頂いたりだとか、格安で譲ってもらったなんて方もいましたよ。今は銃猟を引退する方も多いので、もしかしたらあなたの周りにも行き場のない銃が眠っているかもしれませんね。
ちなみに、私の師匠のお友達のSさん(今年の春に銃猟を引退されました。)の銃は120万円したそうです(驚愕)!! そしてSさんが使っていた猟犬はなんと、200万円近くだったそうです・・・!? ・・・にひゃく・ま・・・?目がポーン!( Д ) ゚ ゚
【毎日の見回りや止め刺し! 罠猟には意外なデメリットも!】
さて、コスト的にはお手軽な罠猟ですが、デメリットがいくつかあります。
毎日の見回りが大変な事と、罠だけでは止め刺し(かかった獲物にとどめを刺す事)ができない事でしょうか。
自分のかけた罠は、基本的に獲物がかかっているかどうかの見回りを“毎日”行わなければなりません。当然ですが、かけた罠の個数が多ければ多いほど大変です。私たちも一回の見回りに2時間ほどかけていました。仲間と協力し合いながら交代で見回りを行っていましたが、最初のころは慣れない山道にバテて動けなくなってしまったり、毎日見回っている山なのに迷子になって1時間以上迷ってしまったり、見回り中は予期せぬ出来事もたくさんです。山の中で、明らかに、自分より大きな4つ足動物の気配と足音にびっくりしてすぐさま引き返したこともあります(;・∀・)

そして罠に獲物がかかっていれば仲間や師匠に報告し、止め刺し、血抜き、獲物の持ち出し作業があります。山の中は携帯電話が繋がらない事も多く、
見回りで獲物確認
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下山して仲間や師匠に応援要請
↓
仲間と共にもう一度山奥のポイントへ
↓
険しい山道の中から100㎏近いイノシシの持ち出し……、
と短時間で山道を2往復した時は、身体がバキバキで足や腕、腰がもげるかと思いました……!
毎日の見回りが必要な理由は、もし非狩猟鳥獣(捕ってはいけない鳥獣)が誤ってかかってしまっていたら速やかに逃がさなければいけないですし、狩猟鳥獣がかかっていた場合も速やかに止め刺しをしなければなりません。動物愛護管理法の第40条1項では「動物を殺さなければならない場合には、できる限りその動物に苦痛を与えない方法によつてしなければならない」とあります。有害鳥獣もたまたま“人間”の社会生活に悪影響を及ばしてしまうだけで彼らに罪はなく一つの命であることに変わりはありません。そしてたまたま“人間”のほうが彼らより賢く、数も多く、強かっただけです。
罠猟免許はあくまで動物を捕獲する為の免許なので、止め刺しがとても大変です。獲物に接近しなければいけないので、噛まれたり、罠が外れて逆襲されたりすることもあります。止め刺しで、大怪我をしてしまったり、時には亡くなってしまう罠師さんもいます。
私たちも初年度は自作の槍や棍棒を用意して止め刺しに挑みました。どこかで、自分たちは大丈夫だと自負していたんです。初めて罠にかかった100キロ級のイノシシと対峙した時に、自分たちの考えの浅はかさにすぐ気が付き、猛省しました。これは命のやり取り。
きっと、初めに小さいウリ坊がかかって、自分たちだけでなんとかできてしまって、変な自信がついてしまっていたら……いつか大怪我、もしくは命を落としてしまっていたかもしれないです。
師匠も『1年目は俺が(熟練ハンター)いない場所で一人で止め刺しはするな、まずは見て勉強した方がいい』と言っていましたが、止め刺しでの事故は免許を取ってから数年目の新人ハンター、もしくは20年、30年の超熟練ハンターに多いらしいです。どうか皆さん、本当に気を付けて下さいね!

【終わりに】
今回は私が罠師を選んだ理由、罠師のメリット・デメリットを私の経験を踏まえて綴らせて頂きました。
猟法によってそれぞれメリット・デメリットがあります。銃猟だけがハンターの道ではないんです。罠猟も網猟も立派なハンター!ご自身の目的、予算、生活スタイルに合わせて自分に合う最適なものを見つけてもらえたら幸いです。
次回は罠の種類や作り方、メーカーさんの罠についてもっと具体的にお伝えしていこうと思います。この連載を通して私の、私たちの想いが、少しでも誰かに繋がり、そして何かのお役に立てれば幸いです。
