■高橋ひかるの休業でざわつく、スレンダー芸能人のダイエット&健康事情
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高橋ひかる

 18歳の女優・高橋ひかるのドラマ降板と休業が発表された。所属するオスカープロモーションによれば、

「9月後半、本人が体調不良を訴え、病院にて医師の診断を受けた結果、年内の間、全てのお仕事を休養し体調回復に努め静養するように言われました。

本人といたしましては出来る限りご迷惑をかけないよう出演を希望していたのですが、お医者様の診断もあり事務所、本人、お医者様で協議した結果、全てのお仕事を休業することに致しました」

 とのこと。ドラマ「ニッポンノワール-刑事Yの反乱-」は代役を立てて撮り直されることになり、ネットニュースのリプ欄もかなりざわついた。

 病名が「自律神経の乱れ」と報じられたことから「なったことあるけどきついんだよな」「急に動悸が激しくなって呼吸が苦しくなる」「どんなに肉体的に疲れていても寝れない」などの声もあったが、目立ったのはその体型と体調不良とを結びつけるものだ。

「痩せ過ぎです、あんなに細かったら普通の仕事だって務まらない」「とてもほっそりした方なので体力的に辛かったんでしょうか」「もうナイススタイルの範疇じゃないよ、見てると心配しか出来ないよ」

 ちなみに、高橋の身長は167センチで、体重は公表されていないが、病的な細さではない。むしろ、多くの女性が憧れ、多くの男性が好むものである。国民的美少女コンテストでグランプリを受賞し、芸能界入りした12歳の頃から痩せ型で、最近急に痩せたわけでもなかった。ただ、インタビューでは「もともと体も丈夫じゃない私は、体調管理も(お母さんに)任せっぱなし」と語っており、今回の体調不良も「丈夫じゃない」ところが出てしまったのだろう。

 その体型についても、別のインタビューで、

「私は食べることが大好きなので、やっぱり体重とかは気にしますね。体重自体はそれほど変動はないんですけど、顔に肉がつきやすいタイプなんです。だから、顔つきがちょっと変わってきたなと思ったら、さつまいもを食べるというダイエットをします」

 と、明かしている。「さつまいもって腹持ちもいいし、しかもちょっと甘いから、スイーツ感覚で食べられる」ことから、

「朝ゴハンをさつまいもとパンとかにして、お昼はサラダとか、ヘルシーなものを自分で作ったりとか。夜はなるべく炭水化物は避けて、お肉や魚でたんぱく質を摂るようにしたり」

 しているという。

モデル活動もしている彼女にとっては、当然の努力でもある。

 にもかかわらず、スレンダー芸能人はとかく、健康面の不安を指摘されがちだ。彼女の場合は仕事に穴をあけてしまったことでやむをえないところもあるが、そういうことがなくてもいろいろ批判めいたことを言われたりする。記憶に新しいのは、桐谷美玲だろう。

 身長164センチで体重が39キロといわれる体型は羨望や嫉妬とともに、一種の違和感ももたらすようで、2年前には週刊誌がかつての宮沢りえを引き合いに出し「あまりに細く、今にも折れてしまいそうな二の腕を見ると、あの悪夢を思い出してしまう」と書いた。

 しかし、所属事務所は、

「3食きちんと食べていますし、体調不良で仕事を休んだことはありません」

 と、説明。実際、昨年の結婚で仕事をセーブするようになるまでの十数年間、芸能活動をこなしながら、大学も卒業するなど、順調にすごした。ただし、汗をかきにくいとか、肌が荒れやすい体質でもあるようで、何かといろいろ気をつかっていることも間違いない。海外ロケの番組では、現地の料理を食べながら、こんな感想を口にしていた。

「お好み焼きを食べてるみたい。はぁ、食べました。めっちゃ美味しいんですよね。

止まらなくなっちゃって。あと、キャベツだから罪悪感が少ない」

 彼女が食べたのは、キャベツをメインに、塩昆布とパルメジャーノ、ディル、グリーンガッデス(ソース)、バターミルクを合わせて蒸し焼きにし、モリンガパウダーという青海苔みたいなスーパーフードをかけたもの。「罪悪感が少ない」とは、ふだんからヘルシーな食生活を心がけていることの証しだろう。それがスレンダーという「個性」ひいては「価値」につながり、彼女が成功した要因にもなったわけだ。

 そう、芸能人とはそんな「個性」や「価値」を「魅力」として愛でてもらう存在である。その振れ幅はかなり大きくていい。そんじょそこらにはいないからこそ、魅力的なのだ。そして、芸能史においては桐谷のような成功をおさめたスレンダー芸能人が少なくない。

 古いところではまず、浅丘ルリ子だろう。その35キロ前後(身長は156センチ)という軽量は、メディアが力士などの巨体を表現する際「浅丘ルリ子●人分」などという表現で活用されてきた。若い頃から食も細く「丼ものを完食するのが夢」だと言っていたが、おそらく今もその夢はかなえられていないのだろう。

 映画黄金時代の日活に勤めていた女性の知人からは「指が細すぎて、電話のダイヤルを回すのも大変そうだった」という話を聞かされたものだ。

その口調は皮肉を含んでいたが、79歳の現在も精力的に女優活動を続けているところを見ると、柳に雪折れなしというタイプに思える。

 やや時代を下れば、松本伊代がいる。デビュー当時は38キロ(身長156センチ)で、72センチというバストサイズが衝撃的だった。バックで踊る女子二人組のほうが太く見えるという遠近感を超えた構図も話題になったものだ。

 浅丘ほど少食ではないものの、好物は豆腐。今も食卓に出すことが多く、夫のヒロミがそれを愚痴ったりしている。アイドル時代、細すぎて子供も産めないのではといわれたりしたが、立派な二児の母である。

 その一方で、松本の同期の中森明菜や堀ちえみはデビュー後、ダイエットによって標準体型から痩せ型になった。このふたりはともに、ここ数年、体調不良に悩まされている。また、松本とは事務所の後輩にあたる本田美奈子は天然の痩せ型に思えたが、38歳で病死した。若い頃はかなりの偏食家だったようで、それが災いしたのだろうか。

 偏食とはちょっと違うが、桐谷の前にスレンダー芸能人の代表格だった中島美嘉は、時期や時間帯による食べる食べないのムラが激しいことを告白している。

それがよくなかったのか、痩せることでなりやすくなる耳管開放症を患ったりした。

 とはいえ、人間は本来、飢餓には強くできている。激痩せを経験した芸能人の大多数が、何事もなかったように復調しているのはそういうことだ。前出の宮沢りえしかり、榎本加奈子しかり。ともに、出産もしている。

 榎本ほどではないが、同時代のアイドルシーンを彩った広末涼子もかなり細かった。一昨年、出演したテレビ番組で当時の体重が判明。じつは彼女、ハタチくらいのときに芸能界がイヤになり「誰かを傷つけたり、誰かに嫌な思いをさせないで仕事がなくなる方法」として激太りを敢行したのだという。暴飲暴食により、15キロ太って52キロに。つまり、37キロ(身長161センチ)だったわけだ。

 そこまで痩せているようには見えなかったのは、中学時代、陸上の走り高跳びで県2位になったほどのスポーツ少女だったからだろうか。その後も「奇行」で騒がれることはあったが、体調は崩すことなく、今は三児の母だ。

 なお、このエピソードはネットで大いに話題になった。「広末の激太りは私の激やせ」「太った体重が52キロってその体重になりたい」そして、なかにはこんな声も。

「わたしの生きてる世界と軸が違うのかなって」

 そう、芸能界はある意味、別世界なのだ。にもかかわらず、最近は世間の常識を芸能人にも当てはめようとしすぎるきらいがあり、こうした体型をめぐる問題にもその傾向が見受けられる。スレンダー芸能人に対する、批判めいた指摘もそのあらわれだろう。

 そこには世間でしばらくのあいだ「痩せは正義」「ぽっちゃりはイヤ」という感覚が優勢だったおかげで、その反動というべき「ぽっちゃりは善」「痩せは悪」という感覚が勢いを増しつつあることが影響している。しかし、体型に善も悪もあるだろうか。医学上の確率として、病気になりにくい体型は存在するとしても、それは必ずしも個人個人には当てはまらない。芸能人に限らず、体型はあくまで「個性」としてとらえられていいはずである。

 そんなわけで、それぞれの体型が尊重されるような、スレンダー芸能人が叩かれないような風潮がもっと浸透してほしいものだ。そして、高橋ひかるには今回の件を糧にして、芸能人さらにはひとりの人間として役立ててくれることを願う。

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