イノシシを食べよう! ~ジビエって何?

【ジビエを食べる為に知っておきたいこと】
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 皆さんこんにちは! 茨城県でヨガのインストラクターの傍ら、新米猟師をしているNozomiです! 

 さて、前回はイノシシの栄養や食べ方など『ジビエ食』についてお伝えさせて頂きましたね。今回は、ジビエを食べる為に知って頂きたいことや、美味しい食べ方等を私の経験を踏まえてお伝えさせて頂きたいと思います。

私の拙い文章を通して、少しでも“狩猟”に興味のある方、すでに“狩猟”に携わっている方、そして何より“いのち”と向き合っている方のお役に立てれば幸いです。

 

 さて、皆さん。突然ですが“違法ジビエ”という言葉はご存知でしょうか?

 まだ、その言葉自体に明確な定義はないのですが、『保健所が定めるガイドラインを満たさないプロセスで流通しているジビエ』の事を、通称“違法ジビエ”と呼びます。実はごく最近まで野生鳥獣を捕って流通させるための厳格な法律やルールというのは、設けられていなかったんです。ジビエは永らく、表向き一般への販売は認められておらず、猟師の“自己消費”という形で、猟師が自己責任で食べること“だけ”しか、認められていませんでした。なのに、ちょっと前までは『近隣で解体処理施設がないのに、なぜかレストランでジビエ料理が出てくる』事が普通にあったそうです。飲食店のオーナーが独自のルートで猟師から直接ジビエを買い付けていたのでしょう。それはつまり、『そこらの猟師が何日も前に捕って、その辺の未消毒の木板やビニールシートの上で、洗浄していない素手でさばいた、しかも病原菌を持っているかもしれないジビエ』が市場に出回っていた可能性がある、という事です(ぞっ……)。ジビエ肉は一般の家畜とは異なるので、適切な処理をしないとE型肝炎ウィルスや、腸管出血性大腸菌、寄生虫などによる食中毒のリスクがかなり高まります(;´・ω・) おそろしい話です。

 

 しかし近年、害獣被害の拡大、捕獲数の激増、ジビエの一般販売の要請を受けて、厚生労働省が主体となって流通のためのルールが厳格に整えられてきました。

 平成26年11月に「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」を作成。公表したことによって、現在では業として野生鳥獣を捕獲して、食用として提供する目的で解体、処理するには、食品衛生法が定める“食肉処理業”等の営業許可を取得する必要があります。

つまり現在は、捕獲~止め刺し~運搬~処理をしっかりと管理された個体を、厳格な基準を満たした施設において捌かれた物しか市場には出回りません。私の住んでいる地域でも、解体処理に回す個体は取り違いがないように、捕獲場所から処理施設までしっかりと役所の職員が同行し、止め刺しから解体処理までの時間の管理、個体のチェックなどが厳正に行われます。許可を取るのも大変で、そこら辺の猟師がパパッとサクッとお肉を売れないようになっているんですよ。しかし、法が整備されたのはごく最近。まだまだ違法ジビエは蔓延しています。たまにインターネットなどで「ジビエ格安で売ります」などの文言を見かけますが……それは違法ジビエかも!? どうか皆さんしっかりとチェックをしてからちゃんとした解体処理施設からお肉を買いましょうね。

 

【Nozomiのおすすめ部位別イノシシ料理】

 さてさて、それでは新米猟師2年目である私が実際に食べたイノシシ肉の説明と、おすすめの調理法をご紹介していきます(*'▽')♪ 新米猟師の方や、猟師でない皆さんが、もしインターネットでお肉を買う時の参考にしてもらえればと思います。

 イノシシ肉ですが、基本的に豚肉と同じ扱いで問題ないのですが、家畜として育てられた豚よりも部位ごとの特徴が大きく出ると言われています。また、1000頭捕れば1000頭味が違うと言われるくらい、餌や環境、時期によっても肉質がだいぶ変わるので、出来ればその時その時で最も美味しい調理法を選択したいですね。ちなみにお肉についてのよくある質問で、成獣と幼獣の違いですが、成獣のほうがしっかりした肉質でガツンとしていて肉の味が濃くジューシーで、幼獣はクセもなく柔らかく、あっさりとした味わいでした。オスとメスでは、師匠曰く体重20キロ~30キロ前後のまだ子供を産んだことの無いメスのほうが風味豊かで柔らかく、美味しいそうです。あと生食は絶対ダメですよ……!

イノシシを食べよう!② ~ジビエを食べる為に

【首肉】
 首回りの肉。

豚での名称は豚トロ。癖がなく、煮込むとほろほろとしていて絶品……!ジューシーで口の中でふわふわと解けていきます。絶対食べて欲しい。私は師匠のイノシシ料理で首肉の醤油煮込みが一番好きです。

【背ロース】
 胴体の背中側の肉。脂が乗っていて柔らかく、血が残りにくいため、くさみはほぼ無い。牛や豚と同じで高級部位。どの調理にも使えるが、私はスライスして焼肉、厚めに切ってステーキにして食べました。串焼き等の単純で肉そのものの旨味を味わえる調理が向く。また、形が均一でスライスしやすいので、ぼたん鍋にもおすすめですね。

【肩ロース】
 背ロースよりも頭側。肩から背中にかけての肉。

背ロースに比べて脂が少ない(春先に捕れたオスの場合、この部位の脂がヨロイになるのでほぼ取り除く場合もある)。前足に近いため、背ロースより肉質は固めで、味が濃い傾向にある。肉の味が濃い=クセが強いので、すき焼きやタレに漬け込む等の濃いめの味付けに向いています。ガツンとしたジビエ肉が好きな方にはお勧めです。

【ランプ】
 背ロースの後ろ側。腰から尻にかけての肉。モモ肉に近いため少し歯ごたえがあるが、脂が乗りやすく、背ロースよりも脂が多い事も。くさみもほぼ無いので、脂の乗り具合でどんな料理にもおすすめ!

【ヒレ肉】
 背ロースの内側にある部位。牛や豚と同じくわずかしか取れない希少部位で、脂はほぼ無く、ロースよりも柔らかくクセもない。ヘルシーで柔らかいので、ヒレステーキやヒレカツ等がおすすめ。また大きな個体が捕れたらローストポークなんかも……いやぁ、ローストポーク美味しかったなぁ……。

【バラ肉】
 アバラ周りの肉。

とにかく脂。脂の旨味を食べたければコレしか無い。豚バラのように角煮やチャーシュー等の煮込み料理がもう本当に絶品で……! だけど、せっかくバラ肉を1枚丸々手に入れたのなら、まるごとベーコンにしてしまうという手も……! 今年は丸ごとベーコンに挑戦しようと思います!

【モモ肉】
 後ろ足の肉。モモ肉の中でも部位によって細かく分ける場合もあるが、全体的に赤みが多めで、味が濃く歯ごたえも強い。足の肉なので形が均一でなく、太めの筋が通っている事もあるので、細かい調理が面倒なら煮込み料理にしてしまっても良いかも。脂が少ない部分はジャーキーなどにすると冬の間中楽しめますね! 愛犬にもいかがでしょうか?

 

※臭みを消すためには※

 どうしてもジビエの臭みが気になる、だけど食べたい! そんな方の為に臭みを和らげる方法があります。イノシシ肉を酒に1日漬けこんでおきましょう。臭みがなくなるだけではなく、肉質が柔かくなります。水1に対して酒1の中にひと晩漬けて、よく洗いキッチンペーパーでふき取ってからから調理をしましょう。レシピによって、ワインやビール、ヨーグルト、味噌、塩麴などを使い、同じく漬け込み臭み抜きをする方法があります。

 

【その他まとめ】

 これらの他にも細かい肉は沢山取れるし、モツや猪足(豚足のイノシシバージョン)、骨からは出汁が取れます。湯剥きや毛焼きで処理したイノシシなら、顔の皮を剥けば沖縄ではチラガーと言う一般的な食材にもなります。

小さめのイノシシなら肉を取った後の肋骨を焼肉のタレにつけて、炭火で焼いて食べるとパリパリのせんべいの様に食べられておすすめですよ。ビールが進んじゃいます。ちなみに睾丸も珍味として食べられます。もっちりとしていて、濃厚な味わいでしたね。

 そう、命は丸ごと頂けるのです。

 

【終わりに】

 今回は、ジビエを食べる為に知って頂きたいことや、美味しい食べ方、各部位調理法や伝統レシピについてお伝えさせて頂きました。私たちの都合で駆除した命、私はしっかりと頂食し、自分の命に繋げていきたいと思って取り組んでいます。その為にも学び続けて行きたい。次回は狩猟活動には欠かせないナイフについて、銃刀法など、法律に絡めてお伝えしていきたいと思います。この連載を通して私の、私たちの想いが、少しでも誰かに繋がり、そして何かのお役に立てれば幸いです。

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