書店の女性向けエッセイが並んだコーナーへ行くと「結婚しろ」か「独身がいい」と、女性の生き方をいずれかに絞った本が鬼のように並ぶ。そんな最中に「もう令和なんだから結婚にこだわらずに、胸張って楽しく酒でも飲んで生きようぜ!」と綴った、人気の独身女性にとって救世主のような一冊がある。
それが『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』。著者の小林久乃さんが、著書の内容をさらに掘り下げて、女性が楽しく生きていくコツを『女子楽也』と題して紹介していく。■自分の世界は職場だけではない、果てしない向こうへ続く

 職場で何かと面倒臭い問題がぼっ発していると、SNSのメッセージで読者さんたちから聞いたことを書いてみようと思う。それは昔から聞く、同僚たちと会話を合わせたり、ランチへ一緒に出かけたりする“同調圧力”のことだ。最近ではここに、新たなメニューが加わったと聞く。

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本音で「いいね!」と思ったら押せばいい、ストーリーズも見たか...の画像はこちら >>

 昨年放送された黒木華さん主演『凪のお暇』(TBS系)を覚えているだろうか? 子ども時代に受けた母親の呪縛から解放されず、いい子の自分を日常生活で演じている凪。でもそんな自分に耐えきれず、仕事も自宅もすべてを捨てて新しい自分になろうと一歩を進み出す話だ。この作品の中で気になったのは、インスタをチェックするシーン。同僚がアップした写真に対して、おそらく凪はなんの興味もないはずなのに、義務のごとく『いいね!』ボタンを押していた。

 

 最近では閲覧した人物をチェックできる、インスタのストーリーズも同僚やママ友同士では必修になっているそう。見たくもない写真をグループ内の誰かがアップしていたら、とりあえずハートマークを送って反応する。それだけではなく、学生間では『ゼンリー』というアプリが流行中。

グループの中に入ると、その人間が地図上で今どこにいて何をしているのか、ひと目でわかるという昭和生まれには驚愕のコミュニケーションアプリだそう。果たしてこれを交流と呼ぶのだろうか?

 

 職場だけではなくて、スマホを持ち歩いている以上、私用時間も全て束縛されるなんておかしい。この文章を読んで思い当たる節があったら、今日からさっそく、本気で『いいね!』と思ったものにだけ、反応すればいい。著書『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』の『SNSは私の意思表示』(P90)にも書かせてもらったけど、自分のタイムラインに流れてくるものが気に触るなら、ミュートかブロック。これは立派な意思表示だ。

 

「そんな身勝手なことをしたら、明日から周囲に嫌われます!」

 

 という声が聞こえてくるけれど、あなたの世界は職場だけなのだろうか?

 職場はやりたい仕事をするために通っているスペースなのであって、支配される理由はない。同調することも仕事のうち、という意見もあるけれどそれは、自分が同調している自覚がある場合に適用されること。

 

 女性は思っている以上にデリケート。何かが壊れる前に避難することを2020年は気にしたい。

■同調して結婚を選ぶのは人生に対する冒涜

 前出の『凪のお暇』で凪が結婚を焦るシーンがあった。同僚に秘密でつきあっている彼氏も、同じ会社のエリートだ。この人と結婚すれば、自分は安泰の生活が送れて、母親にもうるさく言われない。

そして、今までちゃんとした友人扱いをしてこなかった同僚たちに自慢ができる。そういう目論見が、凪の中にうごめいていた。これには私も共感した。

 

 こんな原稿を書いて、まさかの本を出版するまで働いているが30代は婚活に全てを捧げていた。

 

「結婚をして専業主婦になって、家事を楽しむ。PTAも積極的に参加する」

 

 今思うと、黒魔術にかかっていたとしか考えられない発想をしていた。実際、地元の友人たちは片っ端から片付いていたし、年齢も考慮すると焦燥感は増すばかり。

 

「早く子ども産んで、子育てを終えて、みんなで温泉行こうね!」

 

 そんなことをグループ内で言われて、イライラしていることもあった。ただ30代を経て、自分が結婚シンドロームに取り憑かれていたことに気づくと、途端に気持ちが楽になった。結婚はしてもしなくてもどちらでも構わない。もしもマウティングのために結婚をして、旦那に浮気をされて一家離散にでもなったらその時が本当に困る。その時のために稼ごうと決めて、今日のこの原稿がある。

 

 この人生は自分のもの。感情が動かないものに同調しない、苦手なものは避ける。生きていくとどうしても嫌悪感があっても、関わりを持たなければいけない瞬間がある。その時までにエネルギーを溜めておくのなら、私たちは同調している暇なんてないのだ。

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