【ナイフについて勉強しよう! 古き良き、長年のパートナー】

 皆さんこんにちは! 茨城県でヨガのインストラクターの傍ら、新米猟師をしているNozomiです! さて前回は、去年の振り返りと今年一年の抱負について、この場を借りて述べさせて頂きました。

ナイフや刃物について勉強しよう(2)~ずっと2000円のナイ...の画像はこちら >>

 さぁ、新たな1年の幕開けです。

気持ちを引き締めて頑張っていきます。今回は、ナイフの歴史などの勉強もしながら、私が今実際に使っているカスタムナイフについてお伝えさせて頂こうと思います。猟師1年目の私は、とにかく経費を抑えて、約2,000円のナイフを使っていました。何もかもまったく初めての挑戦だったので、“値段”以外にこだわるところが特になかったんですよね……。2年目は1年目のようにはいきません。1年目の失敗を活かし、私なりのこだわりも出てきました。どんなことに失敗したのか、激安ナイフは何が駄目だったのか……その辺のところも踏まえてお伝えさせて頂きます! 私の拙い文章を通して少しでも“狩猟”に興味のある方、すでに“狩猟”に携わっている方、そして何より“いのち”と向き合っている方のお役に立てれば幸いです。

 

 ナイフの歴史は皆さんが想像するよりはるか古く、石器時代までさかのぼります。我々人類は2足歩行を成し遂げたことによって、両手が使えるようになりました。彼らは他の獣と違って軟弱な己を守る為、知恵を使い石を使って道具を作りました。最初は石をそのまま単なる道具として使っていましたが、そのうち工夫を凝らして石を砕き鋭利に欠けた部分を使用し、最終的に研ぐことによって思い思いの形に削り使いました。元祖ナイフの誕生です。

こうした石で作られた物たちはゆっくりと用途に分かれて進化を遂げていきます。例えば、より敵や獲物を自分から遠ざける為に、元のナイフのブレード(本体)に木の棒をくくりつけて『槍(やり)』が生まれたように。

 さらにもっと効率よく便利に、その材料や形はどんどん工夫を凝らし変化していきました。原始的な石器から、銅、青銅、鉄、そしてより硬い“鋼鉄”へと進化を遂げていきます。現代ではその材質は、ステンレス、特殊合金、セラミックなどなど多岐に渡っています。きっとこれからも進化を遂げていくでしょう!

 

【どこまで知ってる? ナイフの種類はたくさん。】

バタフライナイフ? パラシュートナイフ? フォールディングナイフ? 

 ナニソレ? 今まで都会で生きてきてヒールをコツコツ履きながら、カフェでランチなんぞしてきた私にとって、ナイフの種類や名称、専門用語は異文化で本当に難しいです……。しかも勉強してみるととても細かく、誤認している人もとても多いのだとか。今日はいくつか紹介させて頂きますね('ω')♪

 ナイフと言っても種類はたっくさん。基本構造として分けると、基本形である固定式の〈固定刃〉のものと、刃を折り畳んだりしまったり構造上で収納する機能を持ち合わせている〈折り畳み式〉の2つに分類されます。また、このような収納機能を持ち合わせているナイフの事を〈フォールディングナイフ〉と呼びます。

 まずは〈固定刃〉のものから見ていきましょう!

 

《固定刃》

◆シースナイフ
固定刃のナイフの中で保管時に刃をシース(鞘)に収めるものをシースナイフと呼びます。

ナイフや刃物について勉強しよう(2)~ずっと2000円のナイフを使っていた新米猟師女子が、カスタムナイフを使ってみたら―!?~

◆ペーパーナイフ
文房具の一種。便箋や雑誌の袋とじを開ける為に使われる。基本的に刃つけをしない。強度を求められていないのでガラス製やプラスチック製のものなどもあります。

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◆キッチンナイフ
包丁ですよね! 材質は鋼、ステンレス、セラミックなどが主に使われています。

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◆サバイバルナイフ
ナイフの中で特に、軍事行動中などを想定して作られた堅牢で大型のナイフ。ガラス割りなどのハンマーとしての機能を兼ね揃えていたり、のこぎりがついていたり、生き残る為に必要な設計がされていて、実際にサバイバル時にサバイバルナイフがあると、生存の可能性が格段に上がると言われています。

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◆モーラナイフ
スウェーデンの伝統的な実用ナイフ。最近キャンプやアウトドアなどで使っている方をよく見かけますね!

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◆ブーツナイフ
ブーツに鞘を取り付けて使用するもの。その目的を、護身・暗殺用としている為、基本的に日本ではそのように携帯することができません。

◆ダガー
諸刃の短剣。2008年6月8日に発生した秋葉原通り魔事件を契機として対人殺傷に有効であるとの事から規制が厳しくなっていきます。

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◆ダイバーズナイフ
別名ダイビングナイフ。ダイバーが海の中で作業をする目的で作られたナイフ。2009年の銃刀法改正に伴って、従来までは問題なく所持・携帯できたものでも、刃渡り5.5センチ以上、諸刃で、刃先が鋭く尖ったものは持っているだけで違反になる可能性があるので、まだ所持している方が居たら最寄りの警察署に相談して処分してもらいましょう!

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◆牡蠣剥きナイフ(オイスターナイフ)
カキの貝柱を切断してこじ開ける為のナイフ。こちらも2009年の銃刀法改正に伴って規制対象に。その為刃先を丸くしたものや、刃付けをしていないものが作られるようになりました。作業効率は従来の物と比べて格段に下がったことでしょうね……。

ナイフや刃物について勉強しよう(2)~ずっと2000円のナイフを使っていた新米猟師女子が、カスタムナイフを使ってみたら―!?~

 

 何事もそうですが、ルールは一部の常識のない人たちのせいでどんどん厳しくなっていきます(´;ω;`) そういった人たちのせいでナイフを本来の道具としての正当な使い方をしていた人たちが不利益を被るのはとても悲しいことですね……。日本ではナイフは完全に武器としてではなく、より生活を便利に、豊かにするために道具として使います。どうか、これからもナイフが悪用されないようにと願うばかりです。

 次は〈折り畳み式〉、〈フォールディングナイフ〉についてみていきましょう!

 

《折り畳み式》

◆オートマチックナイフ(飛び出しナイフ)
主にバネにより自動で開刃するナイフ。日本では勿論、銃刀法により細かく規制されていますが、諸外国でも規制対象になっている事が多いです!オートマチックナイフの中にもセミオートのようにいくつか分類があり分別が難しいナイフです。

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◆ツールナイフ
刃以外にドライバーや缶切りなど他の機能を担うツール(ツールブレード)を持っているナイフ。

ソムリエさんが使うソムリエナイフが有名ですね!

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◆ ジャックナイフ
水兵の持つ大型のたたみ込みナイフ。海軍ナイフ。

◆バタフライナイフ
携帯時には刃の部分が織り込まれ、使用するときグリップ部分が左右に開閉されブレードが出てくるナイフ。名前の由来は左右に開閉するさまが蝶々に似ていることから。

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◆パラシュートナイフ
片手でブレードが出せるように工夫して作られたナイフ。
もともとはパラシュート部隊に支給されたナイフであり、緊急時にパラシュートロープを切る際片手でスムーズにブレードが使えるようにと工夫して作られました。

◆スライディングナイフ
 ハンドルのボタンを左右スライドすることによってブレードの出し入れができるタイプのナイフ。カシャッ!

◆カランビットナイフ
鎌状のブレードで鎌や鉤爪のように屈曲した刃体をもち、ハンドルエンドに指を通す輪(フィンガーリング)がついているナイフ。

 ……さまざまなナイフがありますね! ヨコモジ、ニガテ!!( ゚Д゚)

 その他ここに書ききれなかったナイフが山ほどあります。様々なニーズに合わせてたくさんのナイフが開発され、世界中の人々に使われているのでしょう。きっとこれからも増えていくのだと思います。ナイフは沼です……。

私もそうですが、一本持ったら最後、沼にはまり、色々なメーカーやタイプのナイフが欲しくなります。

 え? 複合的になんでも使えるような“自分に合ったナイフ”を一本持てばいいじゃないかって?

 ナイフは使ってみないと自分に合っているかどうかがわかりません……。そんなナイフに出会うまでに、ナイフはどんどん増えてしまうんです!!(笑)

【使い心地最高!!カスタムナイフのすすめ♪】

さてさて、さきほど“自分に合ったナイフ”というワードが出てきましたね♪ 実は自分に合ったナイフを見つける最短の道があります。それが“カスタムナイフ”です。カスタムナイフとは簡単に言うとオーダーメイドの手作りのナイフの事で、メーカーに直接製造依頼を出すことによって、使用者の手の大きさ、体型、使用目的に合わせて、素材からデザインの細部にわたりニーズに応えた世界に一本だけの、自分だけのナイフを作ってもらう事ができるのです!世界に一つだけの自分のナイフ……考えただけでも胸がドキドキします。私も茨城県にある「神原ナイフ工房さん」で作って頂いたので、その時の工程をご紹介していきたいと思います。

 

(1)ヒアリング
 まず最初に、私が“どんな目的でどのように”そのナイフを使いたいのかを工房の方に丁寧に説明します(ヒアリング)。私はもちろん狩猟用にナイフが欲しかったのですが、私の手が小さく非力であったので、今まで使っていたナイフだと私にとって大きすぎて作業しづらく、とても重たかった事が悩みでした。私は特に狩猟の工程の中で「大バラシ」という、獲物の内臓を出し、皮を剥ぎ、それぞれのバラやロース、モモなどのパーツに大まかに分解していく工程をメインで行っています。ナイフが大きいと特に小さな個体のときに本当に大変で、ナイフが思うように動かせず、寒空の下、何時間もかけながらチマチマと作業していました。あまりにも効率が悪すぎて師匠からナイフを借りていたのですが、それでも長すぎて思うようにいきません。そして「大バラシ」はろっ骨を切り離したり、あばら骨を背骨から切り離したり、首を落としたりとなかなかにハードな使い方をします。

ナイフの堅牢さや耐久性も大切ですよね。

 

(2)職人からブレードの形や大きさ、鋼材の提案
 私の話を聞いた職人さんから私のニーズに合ったブレードの形や大きさ、鋼材の提案がありました。自分のニーズに合ったナイフって意外と自分ではわからないものですよね。カスタムナイフのブレードの形状は非常に専門的に分かれていますし、鋼材についても素人の私はちんぷんかんぷんです。わからない事があればこの時に積極的に職人さんに質問することをお勧めします! だって納得のいくものが欲しいですもんねっ!

 丁寧なヒアリングと職人さんの熟練された経験値のもと、私のナイフは大バラシや皮剥ぎに相性が良く小回りの利く「クラシックハンター」という形状で、大きさは「3.5インチ」、鋼材は硬く、しっかりと長切れする「粉末ステンレス鋼」という鋼材に決まりました!

 

(3)ハンドル材を決める
 次にナイフのハンドル材を決めていきます! 自分がトキメク、イカした色やデザインの物にする事も大切ですが、ハンドル材もニーズによってはしっかりと気を付けていかないといけません。例えば、上で紹介したダイバーズナイフを作りたいときは、塩水による浸食や水圧などにも耐えられなければいけません。

 私は軽量で滑りずらく、頑丈なハンドル材である「リネンマイカルタ」という木綿にフェノール樹脂をしみ込ませ、積層に加熱成型した特殊な材料を選びました。色は赤が好きなので「バーガンディリネンマイカルタ」にしました。名前がかっこいいでしょう?(≧◇≦) ちなみに動物の角や牙、時には貝殻などの天然素材なども、ハンドル材として選ぶ方も居るそうですよ。天然素材のハンドルなんて……本当に世界で一つだけのナイフですねぇ。溜息出ちゃいます。(うっとり)

 

(4)あとは完成を待つのみ!
 決めるべきことを決めたら、後はひたすらに職人さんの腕を信じて待つのみです。デザインや素材などにもよりますが、基本は数か月~半年ほど完成まで時間を要するようなので、期待に胸を膨らませながら待ちましょう♪

ナイフや刃物について勉強しよう(2)~ずっと2000円のナイフを使っていた新米猟師女子が、カスタムナイフを使ってみたら―!?~

 制作工程を分かりやすく見せていただいたもの。左から右にかけてナイフの工程が進んでいき、ヒアリングをもとに自分が選んだブレードの形や大きさ、鋼材、ハンドル材に基づいて仕上げていただく形になります。

 

(5)完成!
 遂に完成です。私はナイフと一緒に革製のシース(鞘)も一緒に作ってもらいました。皮の匂いがほのかに甘く、デザインも美しいの一言に尽きます。実際に初めてこのナイフを使って獲物を捌いた時の動画がありますので、是非見て頂きたいです。

https://www.youtube.com/watch?v=sN0cEm3gbFc&t=472s

(※動画にはイノシシの解体シーンが含まれますので苦手な方はご注意ください)

 

 猟師2年目。師匠なしでの解体はほぼ初めての状態で、とてもスピーディに解体を進めることができました。私の為に設計されたこのナイフは、まるで今まで私の腕の一部だったように動いてくれます。解体の時、ここだと思ったところを撫でるだけでお肉が切れていく。不思議な感覚です。去年はぜぇぜぇ言いながら切れない切れない騒いでいたのにね(;'∀') 従来使っていた2,000円のナイフは、作業中何度も刃が肉に負けてしまってその都度軽く研いでから使っていました。しかし鋼材にこだわって頂いた私のカスタムナイフは、2頭捌いても切れ味は衰えず作業効率が格段に上がりました。しかしこの素晴らしいナイフを活かすも殺すも私次第。これからは研ぎなどのメンテナンス方法もしっかり勉強し大事に使っていきたいと思います。

 

ナイフや刃物について勉強しよう(2)~ずっと2000円のナイフを使っていた新米猟師女子が、カスタムナイフを使ってみたら―!?~

 

【終わりに】

 いかがでしたでしょうか? 今回はナイフについて歴史や種類、そして私のカスタムナイフについて述べさせて頂きました。従来武器や生活雑器として発展してきたナイフですが、使い手の心次第でどのようにも転びます。ナイフは使い手の心を表す鏡です。どうか貴方のナイフが貴方の今後の狩猟生活やアウトドア生活を美しく光り照らし続けますように。

 次回は全国で増加しているイノシシやシカ、クマなどの害獣被害や事故、そしてその対策について、私の住んでいる茨城県の取り組みや全国の取り組みについてお伝えさせて頂こうと思います。この連載を通して私の、私たちの想いが、少しでも誰かに繋がり、そして何かのお役に立てれば幸いです。

 

監修:神原ナイフ工房さん(茨城県笠間市)

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