(『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』より引用)
例えば借金がある、DV癖がある、浮気をする、実は前科があるなどの訳あり物件の男性を『クズ男』と総称するとしよう。でも中には表面的に分かりづらいけれど、そのクズに到達していないけれど、人間としての危険性をはらんでいる男がいる。その本性がほんのちょっとした言動や風貌で「(……この男、なんかおかしくないか?)」と、第六感を刺激してくる男を何人か見てきた。
そういった男を総称して個人的に『あかん男』と呼んでいる。中でも、その言動が分かりやすかった数名のエピソードをランダムに紹介していきたい。
未然に男性災害を防ぐための、防御策をどうぞ。
“あかん男”たち③
【友達が多いかもしれない男】▼胡散臭い▼
女性は未来のことを、男性は過去の栄光ばかりを話す。これは男女でくっきりと分かれる特徴のひとつだと思う。昔はそれが気になっていたけれど、35歳を超えたくらいから許容できるようになった。
「(……まあそのくらいはねえ……ご本人も話をしたいでしょうし……)」
その場だけ流しておけばいいし、これは私ひとりごときで食い止めようがない。そんな大人の対応ができるようになった私でも、どうしても引っかかってしまう男性が発するフレーズがある。
「俺、友達が多いんだよね」
これを聞いたら、一瞬だけでもその男性を疑ったほうがいいかもしれない。このフレーズに違和感を覚えたのは、30歳頃のこと。芸能事務所でマネジャーをしていた男性だった。いわゆるノリが良く、饒舌で仕事もできると評判の人物。業界人を集めた飲み会を何度も開催していて、私も若気の至りでその会に参加していた。
彼はいつも会場内を忙しそうに回って、招待客と楽しそうに話していた。そして彼の会話から度々聞こえてきたのが、
「友達が多いんだよね」
である。相手に合わせて『多くて』『多いから』『多いもん』とまるで三段活用であるかのように、語尾が変わっていた。なぜかこれが耳に残ったのである。
自分と照らし合わせてみてほしい。
むしろ人数なんて少なくてもいい、友情とは濃度の問題なのだから。
その後、彼は独立開業をしていたけれど、すぐに倒産したという噂を聞いた。窮地に追い込まれた状況を、友達は助けてくれなかったのだろうか。

飲み屋で会った男性と隣席になった時のこと。自分の職業のことを話すと、途端にまくし立てるように話してくる。自分で会社を立ちあげていて、不動産からイベント企画までしている。それから、昔はファッション雑誌で引っ張りだこのモデルで、テレビでも人気だったタレントだったこと。初対面の私と、できればいつか一緒に仕事をしたいとも言われた。ふーん。
特にこちらからは質問していない。
男性の言動は、好意を持っているアピールにも見えるけれど、今回はそこに当てはまらない。明らかに仕事を欲しているようだった。少しでも自分を装おうと栄光を並べているように聞こえる。見ず知らずの人に自分の栄光をいきなり話していいのは、インタビューを受ける芸能人くらいだ。むしろ彼らは読者が大して喜ばない自慢話よりも、今まで味わってきた苦労や挫折のことを話してくれる。
そしてまくし立てるように話すラストには、満を持してあのフレーズの出番がきた。
「俺さ、友達が多いわけ」
私はさり気なく席を立って、店を後にした。これ以上この人物と話すことはない。後々に店で彼の評判を聞いたところ、彼は男女問わず自分語りが好きらしい。そのせいか男性客からも避けられているとか。くっちゃべってる前に『友達』という言葉の意味を広辞苑で一度調べ直したほうがいいと思う。
「友達が多い」
そう豪語する人物に限って、上澄みのような友情しか育んでいないパターンの話。ご本人は友達と思っていても、相手は知人にしか思っていないかもしれない。そんな男性に魅力があるだろうか ? 少なくとも今回の両名は、同性からも嫌われていた。そんなわけで戦慄フレーズが聞こえてきたら、女性には避難勧告を発令したい。